そんなわけで、俺は最初の３戦を窒素を用いて相手を窒息させるという同じ方法を用いて連勝することに功した。

その間に、俺の噂がすっかり験生たちに広まってしまったらしい。

曰く、出校も使用する魔もなにもかもが正不明の験生がいる。

しかも、そいつの魔力はゼロらしい。

という噂が。

俺の魔力がゼロってのはなんでバレてしまったんだ。

そうか、あのが俺の魔力がゼロって大きい聲でんでいたからな。

それで広まってしまったんだろう。

◆

魔とはなんなのか？

俺はここのところずっと、そのことばかりを考えていた。

魔とは単に火を出したり水を出したりすることではないことが、今ならわかる。

俺は魔の研究を進めていくうちに、一つの仮説を立てた。

魔とは理法則を幹から書き換えることなんじゃないだろうか。

だから四大元素という間違った原理をベースに魔を構築することも可能だった。

しかし、あまりにも現実の理法則とかけ離れているため、魔力消費が膨大になってしまう。

俺は現実の理法則をベースに魔を構築することで、従來の1億分の1まで魔力の消費を抑えることに功していた。

そうなってしまえば、魔力ゼロの俺でも魔の行使ができてしまう。

「まさか、あなたがここまで勝ち殘るとはね」

次の対戦相手が目の前にいた。

確か、魔力測定するときにつっかかってきただ。

「どういう小細工をしたのかしら？」

「別に小細工なんて使ってはいないが……」

「ふんっ、よくそんな口叩けるわね。あなたの試合はすでにさっき見たから全部わかっているわ。なんらかの毒を撒いているんでしょ。そうでないと魔力ゼロのあなたがここまで勝ち殘れた理由に説明がつかないもの」

「はぁ」

無明の毒なんて、俺は聞いたことはないけどな。

「では、これより私立クリスト學院出、アウニャ・エーデッシュ験生と中等部に通っていないアベル・ギルバート験生による試合を行います」

この失禮なはアウニャという名前らしい。

「今までの雑魚どもみたいに私を簡単に倒せると思わないことね」

アウニャがそう宣言すると同時、試合が開始した。

「〈気流作(プレイション・エア)〉」

俺は例のごとく、開幕から相手を窒息させるべく気流を作する。

「どうせ、毒でも撒いているんでしょ」

そう言って、彼は右手を前に出す。

「〈突風(ラファガ)〉！」

瞬間、彼の周囲に突風が巻き起こった。

「あんたの毒を防ぐぐらい余裕よ！」

だから毒ではないんだが……。

確かに、巻き起こった突風のせいで窒素を彼の周囲に運べない。

「それで、もう終わりかしら？」

挑発するように彼はあざ笑う。

勝った気でいるのだろう。

確かに、俺の窒素攻撃は防がれたわけだが……。

「〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉」

と、俺は氷の槍を生しては放つ。

〈火の弾(ファイア・ボール)〉と〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉。この二つの魔は二大攻撃魔と呼ばれている。

というのもこの二つの魔は、攻撃を與えやすい魔の中でも簡単だとされているからだ。

だから、多くの魔師が〈火の弾(ファイア・ボール)〉と〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉を駆使して戦う。

俺の場合、科學的にあり得ない〈火の弾(ファイア・ボール)〉を扱うことはできないため、必然的に〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉を多用することになる。

「ふん、普通の魔も一応できるみたいね」

俺の〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉を見たアウニャはそう言葉を吐いた。

「けど、そんな魔で私を倒せると思わないことね」

そう言って、アウニャは右手を前に出す。

「〈火の弾(ファイア・ボール)〉」

〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉に〈火の弾(ファイア・ボール)〉を當てて相殺する。〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉の対処方として最も確実なものだ。

まぁ、俺自〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉で倒せるとは微塵も思っていないけどな。

「〈発しろ《エクスプロシオン》〉」

「――え？」

瞬間、氷の槍が弾へと変わった。

発が〈火の弾(ファイア・ボール)〉を巻き込むようにして、アウニャを襲う。

「な、なんで……？」

と、彼は苦悶に満ちた表で倒れる。

彼がなぜそんな顔をするのか手にとるように理解できる。

発というのは火の元素が原因となって起こるものだ。〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉は水の元素と水を固定化させる質を持つ土の元素の組み合わせによって生み出されている。

ゆえに〈氷の槍(フィエロ・ランザ)〉に熱は含まれておらず、発なんて起こりようがない。

けど、俺は知っている。

火の元素がこの世にないことを。

熱の正は質の運だということを。

そして発は急激な溫度上昇に伴う衝撃に過ぎない。

氷は熱することで水、そして水蒸気へと変わる。

急激に高溫となった水蒸気が彼を襲ったのだ。

「なぁ、ギブアップしたらどうだ？」

と、俺は提案した。

見るからに彼は満創痍だし、俺は全く傷を負っていない。

どちらが勝ったかなんて、一目瞭然だ。

「ゆ、る、さ、な、い……」

だけどアウニャは立ち上がり、俺を睨みつける。

なぜか激怒していた。

「決めた。徹底的にあなたを叩きのめす」

「はぁ」

「〈降霊(インバケーション)――フェネクス〉」

瞬間、彼の背中から炎の翼が生えた。

闇屬魔、悪魔降霊。

悪魔をに降霊させたのか。

「あなた如きに悪魔降霊を使うと思わなかったわ」

彼は炎の翼で宙を舞い、見下ろすようにして俺にそう言った。

「おい、あの生徒、悪魔を降霊させたのか！」

「あんな規模の大きい魔力見たことねぇぞ」

「流石クリスト學院首席のアウニャだ。とんでもない隠し玉を持っていやがった」

観客たちがざわめきだす。

俺も魔導書の読み込みに関しては他人に引けを取らないと自負している。

だからこそ、悪魔降霊がどれだけ上級の魔か理解しているつもりだ。

フェネクスは確か不死の炎を纏う悪魔だったか。

恐らく、今のアウニャは傷を負ってもすぐに回復するだけの力を持っているはず。

「これで、死になさい！　〈巨大な火炎弾(フラマ・デ・フエゴ)〉！」

見上げると彼は巨大な火炎の塊を作り出していた。

それを落下されるように俺へと放つ。

まともにけたらマジで死ぬやつだな。