《【書籍化】雑草聖の逃亡~出自を馬鹿にされ殺されかけたので隣國に亡命します~【コミカライズ】》マスカレイド・パーティー 03
表記の修正を二箇所行っています。
ストリートチルドレン→浮浪児
ルカの使う通信魔の鳥をコマドリ→鳩
マイアが眠ったのを確認したルカは、こっそりとベッドから起き上がると羽筆(クイル)を取り出した。
自分も人の事は言えないが、マイアはかなり眠りが深い。だから々ルカがごそごそといても目覚めないはずだ。
使うのは通信用の鳥を出す魔だ。夜に飛ばすので怪しまれないよう鳩ではなくて梟(ふくろう)を出す。飛ばす先はゲイルだ。あの男は神経質だからすぐに魔の気配を察知して起きるはずだ。
後で苦が來るだろうな、と想像しながら腕に留まった梟に伝言を囁く。
「ゲイル。夜遅くにすまない。もしかして既にそちらでも把握はしているかもしれないが、キリクで子供が失蹤する事件が発生している。失蹤者は貧民窟を中心に下町にも出ている模様。ブラン・レシェにおける事案と似ていると思わないか? 調査を頼む」
ブラン・レシェはアストラの東の國境、水晶連峰(クリスタルム・アルプ)の山岳地帯に存在する小さな街だ。
イルダーナ側から見ると、トリンガム侯爵領の國境の関所をアストラへと抜けた先にある街で、これからルカとマイアが目指す目的地でもある。
ルカ達アストラの國家諜報局に所屬する諜報員には、國からいくつかの指令が與えられている。
そのうちの一つに六年前、ブラン・レシェにて発生した子供の失蹤事件の調査があった。
失蹤者のほとんどは貧民窟の浮浪児だが、その中に浮浪児の徒黨(チーム)と関わりがあった下町の不良年が混ざっており、親が騒ぎ立てて発覚したという事件だ。
背後にはイルダーナの闇に蠢く人売買組織の関與があることまではわかったものの、子供たちの売卻先は現在も判明していない。
一味は貧民窟の子供をある程度攫うか騒ぎになると標的とする街を変える。
ブラン・レシェにおける失蹤事件の調査の為にアストラの《貴種(ステルラ)》がき出したのを察知したのか、連中は現在は標的をイルダーナ國に絞ったようだ。
ルカが知る限りでも、ブラン・レシェ以外にも、イルダーナ國で四ヶ所標的となった街が存在している。
だからもう既に組織の標的は移しているかもしれないが、報告はしておくべきだと思った。
こんな時間になったのはゲイルには申し訳ないが、マイアに聞かれてはいけない容なのだから仕方がない。
ルカはほんのしだけ開けた窓から梟をローウェルの方向に向かって放つと、小さく息をつき、ソファで眠るマイアに視線を向けた。
よく眠っている。今ならこっそりベッドに移しても気付かれないだろう。
しかしすぐに思い直した。ベッドで眠ったことに明日マイアが気付いたら怒るだろうなと思ったからだ。いや、それだけではなく、きっと彼の矜持を傷付けてしまう。
羽筆(クイル)だけを手に逃げてきたマイアは、全面的にルカに依存しているのを気にしている。
聖の亡命がアストラにもたらす利益を考えれば、そんな事を気にする必要はないのだが、何かできる事を探して前向きに取り組もうとする姿には好が持てる。
だから必要以上に自分に近付いてしくなかった。
指一本たりともれずにアストラに連れて行くと決めたのだ。心に刻んだ決意が揺れてしまう。
警告のつもりで押し倒して脅したら、思わぬ自己評価の低さを見せつけられて唖然とした。
聖たる《貴種(ステルラ)》のは、そんなに簡単に男に許していいものではないし、好意を向ける相手も慎重に選ぶべきだ。
マイアが自分に特別なを持っている事には気付いていた。
だけどそれは死にかけていた所を助けられたという極限狀態がもたらした、一過の熱病のようなものに違いない。
そう思ったから突き放した。
そのおかげか、マイアがこちらを見る眼差しからは熱のようなものが消えたように見える。
その結果をんで拒絶したはずなのに――寂しさをじる己の深さにルカは苦笑いした。
◆ ◆ ◆
夜が明けて、テルースの祭禮の日が訪れた。
朝食を済ませたマイアとルカは、早速ライウス商會から贈られた仮裝裝をに著けて街に繰り出した。
マイアは神テルースの、ルカは主神エアが変した狼になぞらえた人狼の裝である。
大地をあらわす神の裝はこそダークブラウンで地味なように思えるが、金糸の刺繍や硝子のビーズがい付けられていて華やかだ。
髪には葉っぱをモチーフにした髪飾りと、宿の主人が好意でくれた生花を挿した。
そこに目元だけを隠す仮面を付ける。仮面を付け素顔を隠すのは、祝祭を分の差なく平等に楽しめるようにとの意図がある。
マイアはちらりと隣のルカを確認した。
今は仮面で隠れているが、い……いや、若々しい顔立ちのルカに金の狼の耳と尾は良く似合っていた。
宿で思わず可いとつぶやいたらムッとされた事を思い出す。顔を気にしているルカには『可い』は句だった。
ルカによると男に対する『可い』は褒め言葉ではないし、言われると腹が立つ言葉らしい。今後は心の中で思ってもうっかり口に出さないように気を付けなければ。
祝祭の當日の大通りは昨日とは比較にならないくらい人で溢れていた。
道行く人々だけでなく、屋臺や通りに面した店舗の従業員まで皆仮裝にを包んでいる。夫婦や人同士に人気があるのは神話になぞらえた神と人狼の仮裝だが、それ以外にも、魔やら騎士やら妖やら、様々な仮裝が溢れていて目に痛かった。
人混みは好きではないからマイアは自分から進んでこの手の祭に參加する格ではない。
でも、機會があってこんな風に出掛けてみると結構楽しい。
「リズ、はぐれる」
ルカが手を差しべてきた。
誰かと手を繋ぐなんて両親が生きていた時以來だ。
その手はマイアの手より一回り以上大きくて、心の殘滓がまだ殘っているのか、わずかにがざわめいた。
今が手袋をはめる季節で良かった。直接がれていたら、きっともっと揺している。
大通りでは、歌や踴り、軽業など、旅蕓人たちが今が稼ぎ時とばかりに様々な蕓を披し、観衆を集めていた。
屋臺からはが焼ける匂いや甘いお菓子の匂いなど、味しそうな香りが漂ってくる。
マイアとルカはそれらを順番に冷やかしながら見て回った。
「暴れ馬だ!」
「逃げろ! 轢かれるぞ!」
唐突に悲鳴と怒號、そして馬の嘶(いなな)きがどこからか聞こえてきた。そして群衆が一気にこちらに向かって押し寄せてくる。
「リズ!」
ルカの聲が聞こえた時にはもう手遅れだった。
人の波に押し流され、繋いだ手が離れる。
まずい、と思った時にはもう遅く、マイアはあっという間に逃げう人の群れに押し流されてルカと離れ離れになってしまった。
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