《【書籍化】雑草聖の逃亡~出自を馬鹿にされ殺されかけたので隣國に亡命します~【コミカライズ】》檻の中 03
「マ……じゃなくてリズ様、先にどちらを開けますか?」
「小さい方は元気そうなので大きい方から開けましょう」
もぞもぞと活発にく小さい方に対して、大きい方はほとんどかない。マイアが大きい方を選んだのは、カーヤのように怪我をしていないかが心配だったからだ。
袋の口を縛る紐に手をかけた時だった。唐突に馬車がき出した。
「それなりの數が揃ったから依頼主の所に連れて行く、という事でしょうか」
発言したのはネリーだ。マイアは気持ちが重くなるのをじた。屠殺場に連れていかれる家畜になったみたいだ。
ひとつ大きく息をつき、気を取り直してから麻袋に向き直る。
大きい方の麻袋の紐を解くと、中から出てきたのは猿轡と縄で拘束された大人のだった。
年齢はしマイアより上に見えた。マイアとよく似たテルース神に扮した裝をにつけている。漆黒の艶やかな髪には生花が飾られていたが、袋に詰め込まれたせいかぐしゃぐしゃにれていた。
「……ありがとうございます。あの、私、ローウェルからお祭の見の為に出てきて……」
拘束を解くとの人は優しげな顔を青ざめさせ、震える聲で話しかけてきた。
「あの、私、夫とはぐれて……そうしたら変な人に取り囲まれたんです! 婚姻腕も奪われて……ここは一……私たち、どうなってしまうんでしょうか」
「どこぞの魔師貴族に売られるみたいですよ。人実験の材料としてね」
ネリーの直接的な言いにマイアはギョッとした。
「ネリー様、もうし婉曲的に……」
「遠回しにお伝えしようが売り飛ばされる先は変わりませんよね」
それはそうなのだが。
は目を大きく見開いたかと思うとさめざめと泣き出した。
著ているものの質や見た目からして良家の奧様風のだ。穏やかでおっとりとしており、見るからに打たれ弱そうである。
そんなの様子にネリーは軽く肩をすくめると、もぞもぞとき続けている小さな麻袋の方へと移した。そして救出の作業を始める。マイアも慌てて手伝いに向かった。
小さい麻袋の中にっていたのは、見るからに元気そうな年だった。
年齢はネリーよりし下だろうか。マイアが苦手としている年代の子供である。
オレンジがかった金髪に黃緑の瞳、そして意思の強そうな眉が特徴的な年だ。
に付けているのは騎士の仮裝でなかなか良くできている。
「むー、むむーっ!」
猿轡を噛まされ、縄で雁字搦めに縛られながらもうめき聲で何事かを訴えてくる。
マイアは年の後ろ側に回り、口を縛める布を外してやった。
すると、
「お前ら! よくも僕を後回しにしたな!」
これが年の第一聲だった。
「僕はブレイディ男爵家の嫡男だぞ! 家の者が助けに來たら覚えとけよ!」
「リズお姉様、袋に戻しても構いませんか?」
開口一番の高飛車な発言に、ネリーはいたく気分を害した様子だった。
ネリーの気持ちはちょっとわかる。ネリー以上に気の強そうなクソガ……いや、お坊ちゃまだ。
「ま、待てよ。僕が悪かった! 袋を戻すな! 僕を開放してくれ。解放してくれたら金貨をやるぞ!」
袋に戻そうとしたネリーに向かって年は慌てて聲を掛けてきた。
その発言容は完全に金のドラ息子である。
「あなた……プライドはないの?」
マイアが思わず突っ込むと年は顔を真っ赤にして黙りこくった。
「たかが男爵家風が偉そうに……」
「何だと!?」
「あんたが男爵家ならこっちは伯爵家よ。私の方が偉いんだから! 『お願いします、馬鹿な僕を助けてください、ネリー様』って言うなら解いてあげてもいいわ」
年も酷いがネリーもなかなかである。
「誰がそんな事言うか! お前が伯爵家の関係者だって証拠なんてないんだからな!」
「それを言うならあんただってそうでしょ! 何とか男爵の嫡男っていう証拠なんてどこにもないじゃない」
「何とかじゃない。ブレイディ男爵家だ!」
ぎゃあぎゃあと言い合いを始めた年の姿に、マイアは孤児院時代に戻ったような錯覚を覚えた。
「お、お二人ともやめてください! 仲良くしましょう! 同じ攫われた者同士なんですから!」
二人の間に割り込んだのは、さっきまで泣いていたおっとり系の人妻のだった。
「私、ローウェルから來たファリカ・コーエンといいます。まずは皆さん、落ち著いて自己紹介でもしませんか……?」
人妻――ファリカが名乗ったことによって、ひとまずネリーと年の言い合いは収まった。
「……アイク・ブレイディだ」
どこか憮然とした様子で年は名乗った。
「私はネリー・セネットよ」
「セネットって……まさか領主様の……?」
驚きの聲を上げたのはファリカだった。
「本かどうかなんてわかるもんか」
「何ですって!? 新興貴族のブレイディに馬鹿にされる謂れはないわ!」
アイクが余計な事を言うからネリーが噛み付いた。
ネリーの言葉で思い出した。ブレイディ男爵家は、確か海運業で財をして爵位を得た新興貴族だ。
歴史ある名門、セネット伯爵家の娘であるネリーから見ると、お金で爵位を買った家柄ということになる。
「私はリズ・クラインです」
険悪な空気を和らげるため、慌ててマイアは割り込んだ。
するとアイクから馬鹿にしたような視線を向けられた。
「なんで捕まってんだよ。あんた魔師だろ?」
「……不意討ちされたので」
「間抜けすぎ」
「リズお姉様になんて事を!」
ネリーはアイクに食ってかかった。
「お姉様を馬鹿にすることはネリー・セネットの名にかけて許しません!」
「なんでお前がその魔師を庇うんだよ」
「當家はお姉様には大きな恩義があるからです」
またも睨み合う二人の姿にマイアはこっそりため息をついた。
どうもネリーとアイクは相が悪いようだ。
ただでさえ拉致監されて不安なのに、檻の中の空気も悪くなりそうで気が重くなった。
反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇女様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼女を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】
【書籍化&コミカライズ決定!】 引き続きよろしくお願い致します! 発売時期、出版社様、レーベル、イラストレーター様に関しては情報解禁されるまで暫くお待ちください。 「アルディア=グレーツ、反逆罪を認める……ということで良いのだな?」 選択肢なんてものは最初からなかった……。 王國に盡くしてきた騎士の一人、アルディア=グレーツは敵國と通じていたという罪をかけられ、処刑されてしまう。 彼が最後に頭に思い浮かべたのは敵國の優しき皇女の姿であった。 『──私は貴方のことが欲しい』 かつて投げかけられた、あの言葉。 それは敵同士という相容れぬ関係性が邪魔をして、成就することのなかった彼女の願いだった。 ヴァルカン帝國の皇女、 ヴァルトルーネ=フォン=フェルシュドルフ。 生まれ変わったら、また皇女様に會いたい。 そして、もしまた出會えることが出來たら……今度はきっと──あの人の味方であり続けたい。王國のために盡くした一人の騎士はそう力強く願いながら、斷頭臺の上で空を見上げた。 死の間際に唱えた淡く、非現実的な願い。 葉うはずもない願いを唱えた彼は、苦しみながらその生涯に幕を下ろす。 ……はずだった。 しかし、その強い願いはアルディアの消えかけた未來を再び照らす──。 彼の波亂に満ちた人生が再び動き出した。 【2022.4.22-24】 ハイファンタジー日間ランキング1位を獲得致しました。 (日間総合も4日にランクイン!) 総合50000pt達成。 ブックマーク10000達成。 本當にありがとうございます! このまま頑張って參りますので、今後ともよろしくお願い致します。 【ハイファンタジー】 日間1位 週間2位 月間4位 四半期10位 年間64位 【総合】 日間4位 週間6位 月間15位 四半期38位 【4,500,000pv達成!】 【500,000ua達成!】 ※短時間で読みやすいように1話ごとは短め(1000字〜2000字程度)で作っております。ご了承願います。
8 149指風鈴連続殺人事件 ~戀するカナリアと血獄の日記帳~
青燈舎様より書籍版発売中! ある日、無名の作家が運営しているブログに1通のメールが屆いた。 19年前――、福岡県の某所で起きた未解決の連続殺人事件を、被害者が殘した日記から解明してほしいという依頼內容だ。 興味をそそられた作家は、殺人事件の被害者が殺される直前まで書いていた日記とは、いったいどういうものだろう? 見てみたい、読んでみたいと好奇心が湧き、いくたびかのメールの往復を経てメールの送信者と対面した。 2020年1月上旬、場所は福岡市営地下鉄中洲川端駅の近くにある、昭和の風情を色濃く殘す喫茶店にて……。
8 91スカイリア〜七つの迷宮と記憶を巡る旅〜
空に浮かぶ世界《スカイフォール》に暮らす少年ナトリは生まれながらに「飛ぶ」ことができないという致命的な欠陥を抱えていた。 王都で配達をこなす変わり映えのしない日常から、ある事件をきっかけに知り合った記憶喪失の少女と共に、少年は彼女の家族を探し出す旅に出る。 偶然に手にしたどんなものでも貫く特別な杖をきっかけに、彼は少女と自らをのみ込まんとする抗いようのない運命への叛逆を決意する。 やがて彼等の道行きは、世界に散らばる七つの迷宮に巣食う《影の軍勢》との世界の存亡を懸けた熾烈な戦いへと拡大していくのであった。 チートあり魔法ありダンジョンありたまにグロありの王道冒険ファンタジー、の予定です。 ※三部構成第一部完結済み
8 183継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》
☆TOブックス様にて書籍版が発売されてます☆ ☆ニコニコ靜畫にて漫畫版が公開されています☆ ☆四巻12/10発売☆ 「この世界には魔法がある。しかし、魔法を使うためには何かしらの適性魔法と魔法が使えるだけの魔力が必要だ」 これを俺は、転生して數ヶ月で知った。しかし、まだ赤ん坊の俺は適性魔法を知ることは出來ない.... 「なら、知ることが出來るまで魔力を鍛えればいいじゃん」 それから毎日、魔力を黙々と鍛え続けた。そして時が経ち、適性魔法が『創造魔法』である事を知る。俺は、創造魔法と知ると「これは當たりだ」と思い、喜んだ。しかし、周りの大人は創造魔法と知ると喜ぶどころか悲しんでいた...「創造魔法は珍しいが、簡単な物も作ることの出來ない無能魔法なんだよ」これが、悲しむ理由だった。その後、実際に創造魔法を使ってみるが、本當に何も造ることは出來なかった。「これは無能魔法と言われても仕方ないか...」しかし、俺はある創造魔法の秘密を見つけた。そして、今まで鍛えてきた魔力のおかげで無能魔法が便利魔法に変わっていく.... ※小説家になろうで投稿してから修正が終わった話を載せています。
8 88異世界戦國記
主人公は赤子になっていた。死んだ記憶もなければ生前の記憶すら曖昧であったが働きづめだったということは覚えておりこの世界では好きに生きようと決める。しかし、彼の立場がそうはさせてはくれなかった。父は織田信定、母はいぬゐの方。その間に生まれた主人公、戦國時代を終焉に導く織田信長の父織田信秀となった彼はは自身の思惑とは外れて下剋上の亂世を駆け抜ける。歴史の知識なし、鬼才なし、武力なしの主人公が全く別世界の日本で奮闘する話です。不定期になります。一部知識が偏っている場合があります。
8 197異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
學校の帰り道、主人公の桐崎東がサッカーボールを追いかけて橫斷歩道に飛び出してきた子供がダンプカーに引かれそうになったところを助けたら死んでしまい神様に會って転生させてもらった。 転生した異世界でギルドがあることを知り、特にやることもなかったので神様からもらった力で最高ランクを目指す。
8 187