《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》18 ヒュージスパイダー退治
スキルは【】呪文は『』という表記に変更・統一しました。
「とりあえず、明かり(ライト)呪文がかかった矢を、巣にしている林一帯に撃ち込めばいいんだな?」
「そうね。きちんと當てなくても、そのあたりに撃ってくれたらそれでいいよ。ジュディ様の話だと、明かり呪文の効果範囲は20mぐらいあるみたいだからさ、それを考えて付近が明るくなるようにしてほしいんだよ。そうすりゃみんな普通に戦える。でもさ、ホントにちゃんと撃てるようになったのかい?その弓矢って盜賊たちから巻きあげた戦利品だよね?それに、矢じりがるのにちゃんと狙えるのかい?」
「姐さんは心配だなぁ、大丈夫さ。あれから毎日クインシーに習ったんだ。俺は暗くても明るくてもちゃんと見えてる。遠くもよく見えてるからかなり筋が良い、手としても通用するって言われたんだ。まぁ、いいよ、どっちにしても、試せばわかるだろ。じゃぁ お嬢頼まぁ」
ジュディは、マートが構える矢の矢じりに明かり(ライト)呪文を唱えた。あたりがぱっと明るくなる。その狀態のまま、マートはひゅっと矢をる。その矢は真っすぐ飛んで、200mほど先の木に刺さった。彼がヒュージスパイダーの巣だといった小さな森の真ん中に立っている木だ。そのうっそうと茂った枝の下に、白い繭がいくつもぶらさがっているのがの中に浮かび上がった。
「うわっ……」
そのの中でわさわさと細い腳をもつ何かが蠢いた。救出組の面々から気持ち悪いものを見たというじの聲が上がる。
「お嬢、次」
マートは次の矢をすでに構えていた。
「うまく行きそうだから、9本同時にかけるわね」
ジュディはマートがつがえている矢と、矢筒にある矢に一度に明かりの呪文をかけた。
「疑ってたのかよ。まぁ、いい。ほらいくぜ」
マートが撃つ矢は、ヒュージスパイダーが巣にしている林の回りの地面に次々と突き立った。あたり一帯が明るく浮かび上がる。
「じゃぁ、シェリー様、そして戦士連中は一緒に行くわよ。蜘蛛の毒にはくれぐれも気を付けて。もし、掠ったりしたら、聲を出すこと。呪文で解毒するからね。ジュディ様と貓(キャット)は援護よろしく」
「様は要らないわ。アニス、あなたが今回のリーダーよ」
ジュディはそう言った。
「あいよ、じゃぁ行くよ。『防護(プロテクション)』」
アニスは剣を抜きつつ、防力を高める防護呪文を自分も含めシェリー、ジェシー、グランヴィルにも使った。
『盾(シールド)』
ジュディも一定量ダメージを防ぐ呪文を4人に使う。
援護魔法をうけた4人は、明るく照らされた蜘蛛の住処に近づいていった。
そして、その前に立ちふさがったのは、腳の幅でいうと5mを超える巨大なヒュージスパイダー1匹と、數え切れないほどの2m程の小ぶりなヒュージスパイダーだった。
「大きいのは、私が行く」
シェリーは盾を構えつつ、巨大なヒュージスパイダーに相対する。
「わかった。じゃぁ、私達は小さいのを片付ける」
アニス、ジェシー、グランヴィルの3人は、シェリーの周りを固めながら、小ぶりのヒュージスパイダーたちにむかってそれぞれの武を構えた。
ヒュージスパイダーは1匹だが、子供のヒュージスパイダーはそれこそ數え切れないほどの數が居た。しかし、周囲が明るく照らされた戦いは、マート達が優勢だった。巨大なヒュージスパイダーの速度に致命傷こそ與えられないものの、シェリーの剣の腕は確かだったし、途中何度か前線で戦うアニスたちの背後に回る蜘蛛も居たが、それらはジュディの魔法の矢と、マートの矢によって牽制されるため、不意をつくことはできなかった。
“後ろじゃ”
戦っているマートの頭の中にそういう聲が響いたのは、子供のヒュージスパイダーの數がかなり減り、もうそろそろ決著がつくんじゃないかと皆が思ったときだった。咄嗟にマートは後ろを振り返ると、目の前にもう一匹の巨大なヒュージスパイダーが居り、マートとジュディに襲いかかろうとしているところだった。
「お嬢、後ろに蜘蛛だ」
マートは弓をその場に放り出して剣を抜くと、ヒュージスパイダーに向かって突き出す。そのきに牽制されて、相手はきを止めた。マートはそのまま、蜘蛛をにらみつけるようにしながら、ジュディを後ろに庇う。
「お嬢様!」
正面の巨大なヒュージスパイダーを相手にしながら、シェリーがぶ。
「貓(キャット)時間稼いで。シェリー、大丈夫だからそっちを焦らずに片付けて頂戴。ジェシーは子蜘蛛をさっさと片付けてからシェリーの援護。グランヴィルは貓(キャット)のサポート、タイミングをみてスイッチして。ジュディ様はゆっくりと下がってください」
すかさず、アニスが指示をした。
「あいよ」「はい、おねがいします」「了解」「OK」「わかったわ」
【強化(ボディブースト)】【毒針(ポイズンニードル)】
マートは口の中で小さく呟く。
目の前のヒュージスパイダーのきが止まった。そのタイミングを見逃さず、ジュディは攻撃魔法を唱えた。
『魔法の矢(マジックミサイル)』
4本の魔法の矢が叩き込まれると、マートの前のヒュージスパイダーは、腳をめ、くるんと仰向けになってかなくなった。それとほぼ同時に、シェリーも、元から相手していた目の前の巨大なヒュージスパイダーに止めを刺した。
「やったっ」
皆の歓聲が上がった。
読んで頂いてありがとうございます。
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