「貓(キャット)、彼と契約したってことは、霊魔法をつかえるようになったのかい？」

マートから泉の水で満たされた水筒をけ取り、皆で回し飲みをしながら、アニスが彼に聞いた。

「まだ実はないが、ウェイヴィそういう事なのか？」

「そうね、あなたの左腕の文様が契約のしるし。その文様にれて願えば、あなたたち人族が霊魔法と呼ぶ魔法のうち、私が得意とする水に関わる力が発揮されるでしょう。例えば、水を作ったり、水の上を歩く、水の中で呼吸するといったことね。あとは、寒さに耐えたり、氷を作ったりもできるけれど、それ以上は、あなたがどんな事を願うか次第ね」

「ふぅん、やってみても良いか？」

「もちろん」

『水生(クリエイトウォーター)』

マートがそう口にすると、彼が付きだした右手の前に丸い形でおおよそバケツ一杯分ぐらいのが現れ、２，３秒は宙に浮いていただろうか。その後、ばしゃばしゃと音を立てて地面にこぼれた。

「へぇ、すげぇな」

「でしょう？」

ウェイヴィは得意そうだ。

「量を増やしたり減らしたりはできるのか？」

「増やすのは々２倍ぐらいまでね。減らすのは自由にどうぞ」

「じゃぁ……」

『水生(クリエイトウォーター)』

マートがそう口にすると、彼が付きだした右手の前に丸い形でおおよそコップ一杯分ぐらいのが３つ並んで現れた。しすると同じようにばしゃばしゃと音を立てて地面にこぼれる。

「うんうん、分割するというのもイメージね」

『水生(クリエイトウォーター)』

マートはさらに続けて唱えたが、今度は水は現れなかった。

「魔法は連続しては使えない」

ウェイヴィがそう言ったが、ジュディがその様子を見て付け足した。

「再詠唱時間(リキャストタイム)の事ね。貓(キャット)、同じ呪文は１０秒、違う呪文でも３秒は空けないと使えないの」

「へぇ、魔法の矢とかもそういう制約があるのか」

「その通りよ。なので、複數の魔法系統や複數の攻撃呪文が使えるというのは、圧倒的に強いのよ」

「なるほどな。１つだけなら１０秒おきだけど、２つあれば互に唱えれるから２倍攻撃できるってわけか」

「そういうことね」

「ウェイヴィ、氷を作るのはどうするんだ？」

「バケツにれた水を凍らせるか、そのまま言うかどちらかね」

「そのまま言う？…『氷生(クリエイトアイス)？』

マートの目の前に、丸い氷の塊ができ、しの間空中に浮かんでいたが、水と同様數秒経って、ごろんと地面に転がった。

「霊魔法というのは、私たち霊に、どういう事をしてしいか呪文(コマンド)という形でお願いをして、それを私たちが実現することになるの。真理魔法のように決まった形があるわけじゃなく、私にイメージが伝わることが大事。だから、霊魔法の呪文(コマンド)は、やりたいことをそのまま言うのよ。あと、さっき、あなたの人のの子が言ってたように霊魔法の呪文にも再詠唱時間(リキャストタイム)はあるけれど、呪文単位ではないので気を付けてね」

人と言われてジュディは真っ赤になった。

「人って、ああ　ジュディの事か」

「ジュディというのね」

「そういえば、紹介してなかったな。彼がジュディ、その橫がアニス、シェリーだ」

「泉の霊(ナイアド)のウェイヴィよ。新しい人仲間としてよろしくね」

そう聞いて、アニスが苦笑した。

「人というわけじゃないけど、まぁ仲間なのは確かさ。よろしく頼むよ」

「よろしくね」「よろしく」

ジュディとシェリーもそう応えた。

「ありがとうウェイヴィ。あとは爺さんに詳しいことは聞いてみよう」

「爺さんって？」

ウェイヴィは首をかしげた。

「グレタと一緒に居る爺さんさ」

「ああ、彼ね。彼は霊との関わりは深いし、グレタとの契約も長いわ。彼といろいろ話をすることは、あなたにとっても有益でしょう」

「霊魔法か、使い手がないからよく知らないけど、冒険者としてはいろいろ使いでがありそうな魔法だね。弓も使えるようになったし、貓(キャット)、あんたも冒険者としてかなりいいじに長してきたよ。うちのギルドとしてもいい戦力になりそうだ」

アニスはそこまで言って、ふと気付いたように言い足した。

「なぁ、貓(キャット)、彼に服を著るように言いなよ。ジュディたちが話しにくそうにしてるし、街の中であのまま姿を現したら大騒ぎになるよ」

「ああ、そうだな。いくら霊とは言え、だとな。ウェイヴィ、服を著ることは出來るか？」

「できるけれど、人族の男はのほうが魅力をじるのではないの？」

「そうかもしれないが、でいるというのは、人族にとってきわめて個人的な事なんだ。普段は服を著ていないと落ち著かない。できれば、服を著ていてしい」

「わかったわ。私たち霊の姿は、今みたいにわざと姿を現す時を除いて霊魔法の心得がない者には見えないのだけれど、貓(キャット)がそういうのなら、あなたと２人きりじゃないときは、服を著るようにするわ」

「ああ、それがいいな。ずっと、ウェイヴィは俺と一緒に居れるのか？」

「ううん、わたしは泉の霊だから、あまり長く泉から離れていることは出來ないわ。でも大丈夫よ。その契約のしるしにれてくれたらいつでも話をすることは出來るし、呼んでくれたら、あなたのすぐ近くに現れることができるわ」

「そうなんだな。よかった。じゃぁ、俺達は一度、爺さんやグレタの居るところに戻ることにしよう。ウェイヴィ、そこでまた連絡するよ」

「今晩は、ここに泊まって行ってくれないの？せっかく契約をわしたのに」

マートはそう言われて、頭を掻いた。

「悪いけど、俺は今仕事中だ。彼たちを案しないといけない。また時間のあるときにゆっくりと泉は訪れることにしよう」

「わかったわ、貓(キャット)」

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「なるほど、貓(キャット)よ、泉の霊(ナイアド)はけ深く、その分、嫉妬深い。注意せよ」

「名前をつけてあげたのね。ウェイヴィ。いい名前。ちゃんと仲良くしないとだめよ。命令できると勘違いしちゃダメだからね。私たち霊と、あなたたち人族とは友人よ」

彼らがドルイドの老人の家に戻ると、老人と木の霊(ドライアド)のグレタは彼にそう注意した。

「ああ、わかった」

「ヤドリギは無事もらえたようじゃの」

「ああ、問題なくな。ジュディたちは一度、あれを持って、王都にある魔學院に戻るらしい。報酬は結構もらえたから、しばらくはのんびり暮らせそうだ。また、遊びに來るよ」

「そうじゃの。詳しい霊との付き合い方については、その時にな」

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