《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》406 夜襲の裏側
「マート様、予想があたりました。巨人の里に霜の巨人(フロストジャイアント)が現れました」
アレクシアからの連絡がってきたのはそれからすぐの事だった。
「やったぜっ、ほかの戦況は?」
マートは長距離通話用の魔道で話を聞きながら橫に居るジュディ、ライラ姫に親指を上げてにっこりと笑って見せた。彼たちもマートの雰囲気を見て察したのか嬉しそうだ。元々この作戦ではうまく行ったとしても霜の巨人(フロストジャイアント)は転移して逃げるだろうというのは予想していた。そしてその考えられる転移先にはあらかじめ調査のための部隊を潛させていたのだ。
1番の予想は巨人の里で、2番は奧の里だった。それぞれコリーンとモーゼルがそれぞれ何人か仲間たちと一緒に潛んでおり、この2箇所は転移門の転移先も登録してあるし、魔法のドアノブにも転移先として登録してあった。
海辺の里はリザードマンの勢力が強いし、山辺の里はラミアが本拠地にしている。巨大集落は様々な蠻族が暮らしているがたびたび蠻族討伐隊が襲撃しているので、その3つは使わないだろうと考えられたし、鱗(スネーク)とネストルがおこなった魔空での調査でもパーカー騎士団の島は見つけていたものの、他に蠻族が占拠しているような島はなさそうだったのだ。
もちろん人手なり手間なりを考えてもせいぜい2箇所が一杯だったのだが、霜の巨人(フロストジャイアント)はその場所にまんまと移してきたという訳だった。
「蠻族の拠點のうち、北、真ん中の突地點は共にすでにほぼ制圧を完了。マート様がいらっしゃるところは激戦中だと聞いています。転移門が使用可能なのはおよそ10分後で転移者の配置は予定どおりです。コリーンの話では霜の巨人(フロストジャイアント)は半分以上をそちらに連れていったので巨人の里には200ほどしか巨人は殘っていないとのことです。參考までに霜の巨人(フロストジャイアント)が転移したのは5分前、再使用可能は25分後で我々とはおよそ15分の差があります」
北、真ん中の突地點というのはそれぞれウィードからローレライ騎士団第2大隊が転移した一番北側の地點、そしてミュリエル島から蠻族討伐隊が転移した地點のことだ。アズワルト、ワイアットは手早く制圧をほぼ終えつつあるということらしい。転移者の位置が予定どおりということはウィードに居たパーカー家の魔法使いは殘る1千の騎士団とともにまだウィードに、ミュリエル島で蠻族討伐隊と共にいたエリオットはすでに真ん中の突地點にワイアットと共にいるということになる。おおよそ思い通りの狀況になっている。あとは転移呪文の再使用時間(クールタイム)との競爭だが、充分に可能はある、マートはそう考えて思わずにやりとした。
「わかった。じゃぁ先に俺は一足先に移する。お嬢、ここはお嬢に任せる。ライラ、シェリー、アマンダ、オズワルト、リディアの意見を聞いてどうするかはお嬢が決めてくれ。決して無理はするな。安全が第1、島の占拠と跡の確保が第2、霜の巨人(フロストジャイアント)の止めを刺すってのは優先順位は低いから間違うなよ。アズワルト率いる第2大隊は引き続きこのオーラフ島および跡の制圧、ワイアットはエリオットと共に巨人の里への突するかもしれねぇと伝えてくれ。ただし、最終決斷はお嬢に従うように」
「わかりました。そう伝えます」
アレクシアはそう応え、橫でジュディとライラも頷いた。
マートはそれにこたえて頷くと、すばやくに移した。魔法のドアノブをダイヤル4に合わせて壁に挿しこむ。ニーナや霊たちはすでに顕現解除や往還を済ませていて今は一人だ。慎重に扉を開け、彼は巨人の里に移した。
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「お疲れ様です、マート様」
巨人の里、誰も居らず薄暗くて広い部屋にマートを導してくれたのはコリーン、そして彼と同じチームで軽戦士のアンソニー、霊使いのブレンダの3人だった。他にもそこそこの人數がこの巨人の里には送り込まれているが、ここでの作戦は極だったのでここまで侵してきているのは3人だけらしい。
「ありがとよ、霜の巨人(フロストジャイアント)はどこだ?」
「ここの隣の部屋です。數人の丘巨人(ヒルジャイアント)が居て、何か話し合っています。ですが、私たちには言葉はわからなくて」
「それはいい。早ければ10分後だが、撤退の可能もある。慎重にだ」
マートがそう言っていると、霜の巨人(フロストジャイアント)がいるはずの部屋でガタリと音がした。マートは何が起こったのかと壁をかし見ようとした。
ガグシャッ
いきなり壁が壊れて、飛び込んできたのは霜の巨人(フロストジャイアント)だった。力任せに壁を蹴り壊したらしい。勢いで5m程の幅で壁が崩れ落ちた。マートを指さして何かをぶ。
「ギャヒヒヒッ、ギャヒ!!」
霜の巨人(フロストジャイアント)の背後には丘巨人(ヒルジャイアント)が5いた。それぞれ構えている。
「ちっ、何を言ってるかわからねぇが、見つかっちまったみたいだな」
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