《貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】》407 巨人の里での激闘
マートは腰に挿した2本の剣を抜いて構えた。その後ろでアンソニーも剣を抜く。
「おのれ、おのれ、この里にまで來おったのか。許せんっ!」
霜の巨人(フロストジャイアント)は人間の言葉でそうわめき散らした。手に持った巨大な槍を振り回して、マートに襲いかかってくる。マートはアンソニーやコリーンに下がるように合図をしつつその槍を2本の剣で逸らし、さらに呪文を唱えた。
『霧(ミスト)』
室が真っ白な霧に覆われて視界が悪くなる。本來であればお互い視界が悪くなるのだが、マートとコリーンは通常の視覚以外の知覚能力があるので大きな影響はないのだ。案の定、霜の巨人(フロストジャイアント)も含めた巨人たちやアンソニー、ブレンダは戸ったものの、コリーンが意を汲んでくれたのかアンソニーとブレンダの手を摑んで後ろに下がろうとし始めた。狀況をジュディたちに伝え、どうするのか判斷してもらう必要があるのだ。場合によってはこのまま逃げることになるだろう。
「ギャヒッ!」
霜の巨人(フロストジャイアント)が何かをび、闇雲に槍を振り回し始めた。マートはそれを躱し、コリーンがいった方向とは違う方向に霜の巨人(フロストジャイアント)を導する。
「ふふんっ こっちだぜ」
マートの聲を聴いたのか、霜の巨人(フロストジャイアント)は立ち止まった。罠を疑っているのだろうか。だが、配下の丘巨人(ヒルジャイアント)たちがそれを気にせずにマートのほうに向かって歩き出した。
「ヴレイズ、フラター頼むぜ」
『炎の嵐(ファイヤストーム)』
マートはコリーンたちが離れていったのを見計らい、魔法で巨人たちを攻撃した。一気に霧も晴れてしまうが、丘巨人(ヒルジャイアント)はかなりのダメージをけたようで、4は倒れ、1は膝をついた。だが、霜の巨人(フロストジャイアント)は傷一つついていない。
『魔法無効化《アンチマジックフィールド》』
霜の巨人(フロストジャイアント)は高らかにそう呪文を唱えて突っ込んできた。これをやられると魔法はつかえなくなってスキルだけが使えるという狀況となる。相手の龍鱗でろくにダメージが出せない上に、ニーナは顕現できず、聖剣も力が発揮できない。
【強化(ボディブースト)】
【爪牙(クロウファング)】
マートは剣を納めて爪をとがらせると無言で迎え撃つ構えを取った。
「力勝負か。良いだろう。決著をつけてやるぞ」
霜の巨人(フロストジャイアント)は人間の言葉でそう言って、槍を振り回してきた。下からすくいあげるような一打。マートは後ろにくるりと回転して避ける。次は上から振り下ろしてくる、マートは爪と同時に強化されている腕でそれを払う。カキンと金屬同士がぶつかるような音がした。さらに巨人は橫に薙ぎ払った。マートは地に伏せるようにしてそれを避ける。
戦いはしばらく一方的に霜の巨人(フロストジャイアント)が攻撃するのをマートが躱すという形が続いた。
「ちっ、ちょこまかと。時間稼ぎか。そうはさせぬ」
<五連突> 槍闘技 --- 5回攻撃
霜の巨人(フロストジャイアント)はマートの足を狙って、続けざまに突いてきた。相手を大きく回避させ疲れさせることを狙ったのだろう。だが、マートは飛行スキルも使える。跳ねた先でさらに空中で機を変えて相手の視界から逃れて當させた。
【毒針(ポイズンニードル)】-劇毒
マートは巨人の目を狙って毒針を放つ。數多く放った小さな針の1本が霜の巨人(フロストジャイアント)の右目に刺さった。ヒュドラから採取した劇毒。巨人は片目を押さえて大きなび聲をあげた。
「ギャヒー!!!」
著地したマートはこの隙にとカギ爪を巨人の足に突き立てようとした。だが、それは龍鱗に阻まれ表面をかすかに掻いただけで弾かれてしまう。彼は舌打ちをして一旦巨人から離れた。魔法無効化の範囲を確かめるためだ。やはり距離は15mだ。
“貓(キャット)、無事?”
そのときジュディの念話が屆いた。戦っているうちに10分が経っていたようだ。マートの狀況を聞いた彼たちはオーラフ島の制圧をアマンダ、リディアに任せ、オズワルト率いる500の騎士たちと共にこちらに転移してきたらしい。ワイアット率いる蠻族討伐隊500も一緒だという。
“たすかった。霜の巨人(フロストジャイアント)は魔法無効化を使って戦ってやがったからダメージが通らなかったんだ。効果範囲は例によって15mだ”
マートがそういったことを念話で伝えていると、霜の巨人(フロストジャイアント)はゆっくりと立ち上がった。右目は腫れていて見えていないようだが、槍を握りなおして片目で睨みつけた。
「ギャヒー!!!!」
雄たけびを上げて突っ込んでくる。マートは構えた。
“すぐそっちに行くから、それまで持ちこたえて”
“わかった。待ってるぞ”
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