國王陛下から贈られてきたのは、『錬金教本』の上・中・下巻。それに加えて、『錬金で味しい食卓』の計四冊。

長期の六歳子がまず興味を持つのはどれでしょう。

……やっぱり味しいもの！

『ふんわりパン』兄様も姉様もきっと喜ぶだろうなあ。名前を聞くだけでも味しそう。ふんわりパンの応用で『デニッシュ』なんてものもある。バターがじわりとするパンってどんなんなんだろう！

私たちの食べているパンって、小麥からパン種を練って、自然に放置して発酵したパンが普通のものなんだけれど、あんまりふんわりとはしていない。というよりほぼぺたんこで、実はあんまり味しくない。もし名前の通り『ふんわり』だったらきっと家族みんなが喜ぶはず！

まずは、先日妖さんに教えてもらったブラックベリーの自生地に新鮮な実を取りに行った。

【ブラックベリー】

分類：食材・食べ

品質：高品質

詳細：まさに食べ頃。ジューシーで甘い。

妖さんの教えてくれた果はさすがに品質がいい！

そして、廚房からはちみつを貰ってくる。

【はちみつ】

分類：食材・食べ

品質：良質＋

詳細：様々な野の花のを集めて作った蜂さんの努力の結晶。優しい味わい。

ブラックベリーと同じ重さのお水を、煮沸消毒した瓶にれて、蜂はスプーンに二杯くらい。

瓶に蓋をして、錬金発酵を促しながら、瓶を優しく振る。

【酵母？？？】

分類：食材？

品質：低品質

詳細：ブラックベリーの浮かんだ蜂水。ただそれだけ。

……ま、まだそうよね。

さらに錬金発酵を促していると、だんだんと泡が浮かんでくる。

【酵母】

分類：食材

品質：低品質＋

詳細：ブラックベリーの浮かんだ酵母になろうとしている。

もっと発酵を促すと、しゅわしゅわなができた。

【酵母】

分類：食材

品質：良質

詳細：ブラックベリーの酵母。完全に発酵が終わっている。

これを綺麗な布で濾してだけにする。

そして、種つぎをする事でもっと強い酵母に仕上げていく。

今作った酵母を瓶にれ、し水を加える。蜂はさっきより若干ないくらい。そして、最初と同じ量のブラックベリーをれる。そして蓋をする。

あとの要領は一緒だ。

【酵母】

分類：食材

品質：良質＋

詳細：ブラックベリーの酵母。また発酵が始まった。

……ふりふり。

【酵母】

分類：食材

品質：良質＋＋＋

詳細：ブラックベリーの酵母。あともうしってじ。

……ふりふり。

【酵母】

分類：食材

品質：高品質

詳細：ブラックベリーの酵母。種つぎによって高い発酵力を誇る。

ここで止めて、綺麗な布で濾してだけにする。

できた！あとは、これを元にパンにするだけだ！

私は酵母のった瓶を持って、廚房へ向かった。

「こんにちは、ボブ」

廚房へりながら、中にいた料理長のボブに挨拶をする。

「おや、お嬢様こんにちは。今度は廚房に何の用ですかい？」

気さくに用事を尋ねてきてくれる。

「今度はこの魔法ので、『ふんわりパン』を作ろうと思うの。し廚房を貸してくれるかしら？」

私は、酵母のった瓶をボブに掲げて見せてお願いする。

「……パンが、『ふんわり』ですか？せっかくなので私も見せて頂いていいでしょうか？」

「私も見たいですわ！」

ボブに加えて廚房擔當のマリアも見たいと言ってきた。

廚房の勝手はわからないし、むしろ居てくれた方がありがたい。

「うん、勿論いいわ！じゃあ場所を借りるわね。後でパンを焼けるようにオーブンを溫めておいてくれるかしら」

「はい、勿論です！」

ボブとマリアは快く手伝いを引きけてくれた。

ボウルに、小麥、蜂、塩々をれてよく混ぜる。

そして、酵母とお湯をれて、と水分をまとめていく。

この辺の分量は、『錬金で味しい食卓』の記載通りにきっちり。

「臺が高くて大変でしょう」

気づいたら、マリアが背びしている私のためにそっと足臺を差し出してくれた。嬉しい。

「ありがとう、マリア」

私はにっこり笑って、マリアにお禮を言った。

頑張ってパン生地をね、臺にたたきつけてさらにねると、生地がツルリとしてくる。

ここでバターを加えてね、馴染ませる。

丸くまとめた生地をしばらく暖かいところで自然発酵させる。

（本當は錬金発酵で急ぎたいけど、ボブとマリアのために我慢）

【パン生地】

分類：食材

品質：高品質

詳細：発酵は十分。次にガス抜きしよう。

あれ。【鑑定】が手順のガイドをしてくれている……。

ボブとマリアは、生地の今まで見た事の無い膨らみ方を見て、びっくりしている。

鑑定さんの言う通りに、ガス抜きして、八個に切り分けて丸めた。濡れ布巾を被せてし休ませて……。

「さあ、これを焼くわ！」

オーブンにれるのはボブにお願いした。オーブンの使い方はさすがによく分からない。

「焼いたらもっと膨らむから、間をあけて置いてね」

そうお願いすると、まだ膨らむのかと二人はびっくりしていた。

……そして、生地は二倍に膨らみ、綺麗なキツネに仕上がったところで、ボブがオーブンから取り出してくれた。

「試食しましょう！」

二人は恐していたが、私から一個ずつ渡して、三人で一個ずつ、焼きたてのパンを手に取った。

パリッとパンを半分に割る。すると、ふんわりフルーティーなアルコールの香りが漂った。

「ふんわりだけじゃなく、とてもいい香りです」

マリアがうっとりしている。

一口パンにかぶりつくと、その香りが口いっぱいに広がった。

「これは味い！こんなの食べたら今までのパンなんて食べられなくなりますよ！」

ボブは大興だ。

『ふんわりパン』は大功！

殘りの五個のパンは、溫め直して今夜の我が家の食卓に上がることになった。

◆

「今日のこれは……パンなのかい？」

まずお父様が丸いパンを手に取って首を捻った。

「はい、錬金を使って作った『ふんわりパン』です。とっても味しいので食べてみてください」

私の言葉に、家族みんながパンを口にする。

「「味しい！ふわふわだ！」」

まずんだのは、子供の兄様と姉様だ。

「まあ、香りもとってもいいわ。何かのフルーツの香りのような気がするけれど……」

お母様が首をかしげている。

「ふっくらさせるの材料に、ブラックベリーを使ったので、その香りだと思います」

私がその疑問に答えた。

「うん、これは味しいね。このパン以外食べたくなくなるな」

お父様も満足気だ。

「僕も（私も）このパンじゃなきゃヤダ！」

兄様と姉様が合唱する。

やっぱり、「もうこれ以外食べられないね」ってことになって、私は酵母作り、パンは私がボブとマリアに教えて、あとの工程はやってもらうことにした。

我が家のパンは、ふんわりパンが定番になった。

天然酵母は時間をかければできるんですけどね。錬金で作ってみました。

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