《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》271.王都の外れの錬金師
こうしてゲルズズの野も潰え、戦爭が回避され、大陸に平和がもたらされた。
私達がウーウェンに乗って帰ると、ザルテンブルグの方角の空になぜか大きな花が咲いていた。
「戦爭回避ばんざーい! デイジーお姉様おかえりなさーい!」
なんとリリーはホーエンハイム家のアルのところにり浸っていると思ったら、『祝砲』という、大砲から打ち出して空に花を咲かせる火薬を発明したのだそうだ。
それを盛大に何個も空に打ち上げて、私達の帰還を祝った、とのことだった。
シュヴァルツブルグ帝國では、當然あの場にいた皇帝も灰になってしまった。けれど、跡継ぎとされていた人はその皇帝のやり方に懐疑的だったそうだ。
だから、私達の行為を責めるでもなく、すぐにザルテンブルグ王國に連絡をれたらしい。
そして、國と國、新しい皇帝が治めるシュヴァルツブルグ帝國とザルテンブルグ王國との國の間の會談が持たれ、和平條約を結ぶ結果になったらしい。
……らしい、というのは、私がそのことに興味がないからだ。
だって、私は王都の外れの錬金師。
みんなを笑顔で出迎えてポーションを売り、そして笑顔で冒険に出発してもらう。
もしくは、パンを頬張って笑顔になってもらう。
それが仕事だからだ。
まあもちろん功労者やら、貴族やらとしての立場もあるから、勲章の授與式だのなんだのとしばらくは引っ張りだこになっていたけれど、今はもう、自分のアトリエでいつもどおりの生活をしている。
「あーっ! ウーウェンさん、火加減ちょっと強いですぅ!」
「じゃあ、水魔法の氷で相殺してみますか?」
パン工房ではちょっとミィナが困っているようだけれど、アリエルのフォローでなんとかなっているのかな?
あ。どうしてまだアリエルがアトリエにいるのかって?
アリエルはもともと、エルフの王様であるお母様に、「世界樹を救う手伝いをすること」を條件に人間の世界に出ることを許されたの。
だけど、今回見事その目標を私たちみんなで達したことを認めてもらえて、「もうし人間について學んでくることを認めます」ってお許しを得たのよ!
だから、まだまだ一緒にいられるの!
「ピーター君、パンおいしかったよ」
「ありがとうございました!」
魔道人形のピーターとアリスは、イートインでパンを食べていったお客さんにご挨拶とお見送りをしてから、片付けにるようだ。
「マーカスさん、初級ポーション、このあたりで加熱を止め……」
「そうそう、いいじ」
ルックは學校でのおさらいも兼ねて、マーカスのポーション作りのお手伝いをしているらしい。
私は畑の様子も見ようと、臺所によって、ジャムを皿に載せてから裏手に回る。
「あら、デイジー!」
リコこと『おねえちゃん』が真っ先に迎えれてくれて。
「あっ、ジャムだ!」
「ふふ、いつものお禮のジャムよ、食べてね」
コトリ、と戸棚のうえに皿を置くと、わらわらと妖達も集まってくる。
「素材達の様子はどうかしら?」
「そりゃあ、私達が毎日面倒を見ているんだからバッチリよ!」
リコがを張って手でぐるりと畑全面を指し示す。
畑は、お日様のを一にけて、みんな青々としてつやつやと輝いている。
「いいお天気ね」
「本當ね」
私は一つ大きくのびをする。
「……平和っていいわね。みんなが、笑顔だわ」
「そうね、頑張ったわね」
リコが私の頭をでてくれた。
「お姉ちゃんがいたから」「デイジーがいたから」
二人の言葉が同時に発せられて被る。それをおかしげに私達はクスクスと笑い合った。
そんなとき、アトリエの方から聲が聞こえた。
「おーい、デイジー! 特別に依頼したい品があるんだけど、今相談できないか~?」
マルクの聲だ。ということは、きっとレティアも一緒だろう。
「呼ばれちゃった」
「ご指名よ、錬(・)金(・)(・)師(・)さ(・)ん(・)」
リコに、鼻先をツンとつつかれ、向かうようにと促される。
「はーい、今そっちに向かいまーす!」
「じゃあね、デイジー」
「じゃあね、お姉ちゃん」
私は走ってアトリエへと向かっていった。
青空の下、差し込む木れ日がまぶしい。
私は王都の外れの錬金師。
いままでも、これからも。
ずっとこのアトリエで生きていく。
この青い空の下で。
~了~
最後までお読みくださりありがとうございました。
ここまで書けたのも、ひとえに読み続けて支えてくださった皆様のおかげです。
重ね重ねありがとうございます。
一旦お話は完結としましたが、まだ未著手の素材やら、サブキャラのサイドストーリー、デイジーのその後など、いろいろまだ書きたいこともありますので、今後は不定期に更新していくと思います。
(後日一度完結設定にしますが、開けます)
また、書籍も無事5巻続刊が決まりました。
書籍、コミックでも語は続いていきます。
引き続きよろしくお願いします。
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