《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》共にいられることが
またイタズラされているな、と思う。
髪のが引っ張られる覚に目を覚ましたけど、これは咲月さんが何かしているようだ。
俺はこのウトウトとした狀態が大好きだ。
ぼんやりした狀態で、薄く目を開いて見たら、咲月さんが俺の髪のを三つ編みしていた。
俺は男としては、全的に髪のが長い。
ライブに行くときやカメラで撮影するときに邪魔にならないように帽子にねじ込むためだ。
耳よりし下まである髪のを咲月さんはあみあみしている。
飽きたのか、それを解いて耳の上あたりに鼻先をうずめてモコモコいている。
俺は學んだ。
咲月さんはこのまま寢るのだ。
逃げられてたまるか。
スッとを引いて起きたアピールをしたが、時すでに遅し。
二秒以にいたと思ったのに、完全に咲月さんは二度寢している。
この能力があるから、仕事を抱えてオタ活が立するのだろう。
しかし、俺は完全に起きてしまった。
仕方ない、イタズラし返そう。
うつ伏せで眠っている咲月さんの髪のをまとめる。
俺は本當にこの髪のが好きだ。染める事に興味もないようで、真っ黒でしい髪の。
絹のようにしなやかで強い。そして首筋。
俺が服を買うようになってから、咲月さんの首元は完全に守られている。
ほとんどシャツに切り替えたのだ。
前はまあ……しなら許すけど、この後ろは俺だけの場所だ。
優しくを落として、確かめるように舌を這わす。
たまに今も驚くんだ、ずっと好きだった咲月さんにれている事に。
そしてどうしよもなく嬉しくなって抱きしめてキスをしてしまう。
そのたびに咲月さんは「どうしたんですか?」ってほほ笑むんだ。
俺がどれほど嬉しくて、幸せなのか、分かってないんだ。
舌を首筋から肩に這わせる。
ピクリといた左手を上から優しく抑えつけて、指の間に俺の指をり込ませて握る。
俺と咲月さんの左手にしている指が重なって軽い音を立てる。
指に対する咲月さんの執著心の無さには、驚いた。
はこだわるものだと勝手に思っていたが、しがらない時點で気が付くべきだった。
「シンプルなら何でもいいです」と目についた店で購した。
でも、ゲーセンで推しキャラの人形を見つけた時は、目の変えて取ろうとしていた。
つまり執著する所が違うだけだと思うけど。
俺はなんでもいい。
咲月さんと同じ指を付けられる人になった事実だけで、何でもいい。
俺が重ねた手を引き寄せながら、背中に舌を這わせると、さすがに咲月さんは起きたようだ。
「ん……隆太さん、おはようございま、す……?」
「おはようございます」
俺は軽く答えて、背中に顔を押し付けて軽く噛む。
「な……」
咲月さんが吐息を吐いて、背を反らせる。
そして俺の顔を見てキスを……と思ったら、キョト……と目を丸くした。
ん? なんだろう。
咲月さんは口元を抑えて俺の頭を見ている。
そして我慢できずに表をクシャクシャにして噴き出した。
「隆太さん、すいません、三つ編みほどくの忘れてました。ちょんまげみたいになってます」
咲月さんが三つ編みをしてるのには気が付いていたが、ほどいていると思っていた。
でも反対側にも三つ編みがしてあって、それはゴムで止めてあった。
「つい出來心で、すいません、手首にゴムがあったんです」
「……キスしましょう? 咲月さん」
「すいませんでした、ほどいてください。お殿様みたいですから!」
「誕生日おめでとうございます、咲月さん」
「ほどいて言ってくださいー」
笑いながら俺の腕の中から逃げ出そうとする咲月さんを捕まえる。
今日は初めて一緒に祝える、咲月さんの誕生日だ。
俺は挽きたてのコーヒーを咲月さんに渡した。
今日のためにんなお店でコーヒーを買い、試飲して決めた。
咲月さんは酸っぱいコーヒーではなく、苦いものが好きだと知り、買ってきた。
「改めて、誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。わあ、すごく良い匂い。なんだかガー……と音がしていましたが……」
「電ミルを買いました。味が全然違って楽しいです」
俺は毎朝コーヒーを飲むけど、直前に挽くとこんなに違うのかと驚いた。
咲月さんは布団橫のちゃぶ臺の橫にちょこんと座った。
俺が使わせてもらっている二階には、ちゃんとした椅子とテーブルを置いていない。
二階で一緒に食事をとることも増えたし、もうし何か買った方が良いかもしれない。
咲月さんはコーヒーに口を付けた。
「……ん、味しいです、すごい。深い、味が全然違いますね」
「いつでも淹れますからね」
「飲みたい時お借りしますから、私にも使い方教えてください。おおー、何かかっこいいマシンですね」
咲月さんは部屋著にしているユニクロのタオル地ワンピースに、緩めのズボンを履いて布団から出てきた。
そして俺が好きで買いそろえてしまう調理グッズを見ている。
料理はかなり好きな部類にると思う。
自分一人だと何でも良いが、食べてくれる人がいると楽しくて仕方がない。
「パンを々買って試したんですよ」
「ほへ?」
咲月さんは出してあった生ハムを勝手に食べながら振り向いた。
俺は棚からパンを取り出した。
「咲月さんが味しいパンを食べたいと言ったので、ネットや本、それに営業先にも聞いて味しいパン屋のパンをかなり食べました」
「前から思ってたんですけど、隆太さんって、めっちゃ事しらべましゅよね」
咲月さんは俺の熱いパントークを聞きながら、次の生ハムに手をばした。
手元にあると、とりあえず食べてしまうようだ。
「見て下さい、パンを買いすぎて、冷凍庫がパンパンになりました」
「前から思ってたんですけど、かなり凝りですよね」
俺は「そうですね」と答えた。
むしろ調べることが好きなのだ。
報があればあるほど安心する。
「面倒な朝ごはんをご所ということで、16種類の野菜を買ってきました」
「ええー、誰ですか、誕生日に面倒な朝ごはん一緒に作りたいって言った人はー。もうパンにレタス生で食べればいいですよーお腹すきましたー」
「ささ、咲月さんはこのエンダイブ・ロマネスカを小さくちぎってください」
「ロマンス小説に出てきそうな名前なのに普通の葉っぱだー」
咲月さんと俺は二人で臺所に立ち、たくさんの野菜と豆とトマトをあえてサラダを作った。
その間に煮ていたカボチャでポタージュを作り、ちゃぶ臺に並べて、一番味しかった店のパンも置いた。
俺は冷蔵庫から咲月さんの大好を出した。
「注文しておいたんですよ、花田屋さんのローストビーフ」
「いやぁぁぁ! これが噂の二週間前に注文しないと食べられないという伝説のの塊!」
「切りますね」
「厚めに……いいえ、やっぱり薄めに沢山お願いします!!」
花田屋さんは咲月さんと俺の母さんが會った小料理屋だ。
あれから一年くらいしか経ってないのに、ものすごく昔にじる。
だってあの頃は、こんな風に一緒に朝を迎えられると思っていなかったんだ。
「もういいですよね? もうここから卵茹でるとか言いませんよね? もう食べて良いですよね?」
「卵はもう潰して準備してあります」
「いただきまーーす!」
咲月さんはパンにローストビーフとサラダと玉ねぎ、それに俺がつくった特製ドレッシングをかけて味しそうに頬張った。
「ああ……めっちゃ味しいです……最高に幸せ……」
「チーズも買ってきたんですよ、切りましょうか」
「あー、絶対間違いないじゃないですか!」
俺たちは起きてから二時間もかけて朝ごはんをゆっくり食べ、満腹になって転がった。
5月の軽い風が吹き抜けていく。
咲月さんは、はあ~~とコロコロと転がり俺の方を見た。
「……このまま寢たいです」
「ささ、茶碗を片付けてお掃除を開始しますか」
「誰ですかもう、誕生日に掃除したいとか言った人はーー。隆太さん、抱っこ」
そう言って咲月さんは腕を広げた。
俺はその魅力には抗えない。
引き寄せられるように元に収まると、頬にを押し付けられた。俺と同じコーヒーの匂いがして、たまらず頭を引き寄せて深く口づけた。
「……同じ味がしますね」
「同じものを食べましたからね」
「ごちそうさまでした、本當に味しかったです」
ほほ笑む咲月さんのオデコにトン……と自分のオデコをぶつけた。
どうしようもなくしい。
一緒にいられる誕生日が嬉しくて仕方がない。
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