《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》オタクとして強すぎる
「ローズ艦隊ラリマー艦長、おはようございます」
「結軍軍務省第三管區軍事研究所主席分析滝本、おはようございます」
滝本さんはラリマー艦長と呼んだ人に向かってピシッと敬禮した。
軍ネタは銀河英雄伝説止まりで、よく分からない。
でもなんだかカッコいいので、私は靜かに見守ることにした。
今日私はデザロズとの和平渉にお邪魔している。
なぜこんなことになったかと言うと、私が書いたデザロズの絵がバズってしまったからだ。
話は隆太さんの誕生日まで戻る。
隆太さんが私の誕生日に「何がほしい?」と聞いてくれたので私も隆太さんに聞いたのだ。
すると答えは「結婚寫真を撮りたい」だった。
完全に忘れていたのだが、撮りたいというなら良いですよ~と隆太さんが選びに選んだホテルで撮影した。
これがまた完全に「私を100點にして撮りたい!!」だけのスペシャルプログラム狀態で驚いた。
全エステありマッサージあり容院ありメイクあり。
ただの私の天國タイムだった。
隆太さんは盛りに盛った私にして、沢山寫真を購した。
「ありがとうございます、最高の誕生日プレゼントになりました!」
隆太さんはとても嬉しそうだったけど、どう考えても私が気持ちよかっただけなのが気になっていた。
何か隆太さんが喜ぶことを一つくらい出來ないものか。
そう考えた私が思いついたのが、デザロズの絵を書くことだったのだ。
調べてみるとデザロズはもう似顔絵的な絵は作ってあった。
でもあまり可くないというかし古いのだ。
もうし今どきの絵に出來ないかな……。
そして基本は今までの流れを汲むこと。
歴史や設定今までのキャラをガン無視で書いても仕方ないのだ。
素質を見出して書く! 楽しくなってきた!
私の絵柄はわりとあっさりしてるから、もっと可い路線にしよう。
一度書いて見たかったんだよね。
私は真面目に分析して絵を仕上げた。
「隆太さん、じゃじゃーん、これ見て下さい! めっちゃ頑張りましたよー!」
ある朝、一緒に會社にいく通勤電車の中でやっと完した絵を見せた。
私は基本的に同人誌のカラー表紙でも2日かければ頑張ったほうだ。
でも今回のデザロズの絵は4日くらいかかってしまった。ふう、力作!
喜んでくれるかな! と思ったら、橫で隆太さんが石のようになっている。
あれ? 駄目だった?
絵を全で3分ほど見つめて、キュッ……と拡大。
ひとりずつしっかり眺めて、こだわってデザインした裝もちゃんと見て、たっぷり10分ほど沈黙を続けた隆太さんは真顔で言った。
「頑張りました……? ええ、まさか咲月さんが書いたわけじゃないですよね……? 絵柄が全然違いますよ……?」
「書き分けくらい出來ますよ。一応職業デザイナーなんですけど。ていうか同じ會社ですよね?」
「見た事がない非常に斬新な裝……しかしこのイヤリングはファーストシングルの時象徴として付けた通信機で、そこだけが共通しているのに、新裝がここまで斬新だと逆に興味を引きますね。それにこの集合絵として立ち位置が曲を表している。アユがセンターにいるということは、ダンス的にハードな曲ということを示しています……デザロズには今まで無かった斬新な仕掛け……それに深い理解……これは一……」
隆太さんは私たち腐子がネットにUPされた雑誌の小さい新規絵見て興してるみたいになってる。
「ライブとか考察とか設定とか読んで書いてみました」
「この腕のリングは……?」
「デビュー前は6人だったと読みました。でもケガで諦めたんですよね? だから意思を継ぐ的な意味で……」
「……尊いです」
「隆太さん、通勤列車で言う言葉では無いのでは……」
「背景の舞臺はどこなんですか?」
「ミイちゃんの出星の設定が面白いなと思ったんですよ。たった一人しかいない最後の生き殘り」
「そうなんです、生かされてない設定なんです!」
「……聲大きくないですか?」
「……尊すぎて無理なんです」
隆太さんは驚きながらも、それをTwitterにUPしていた。
直後から凄い勢いでびて、最後には萬のRTを超えて私の腐子アカまで飛んできて、速攻ワラビちゃんに「黒井さん、あの絵、気合りすぎじゃないですか」とDMで突っ込まれた。
さすがワラビちゃん、隆太さんのアカウント見てて私の絵も知ってれば當然気が付くか。
その三日後。
私は帰宅した隆太さんに呼び出された。
曰く「デザロズの社長が、私に會いたがっている」と。
そして今、私は「和平渉」という名の會議にチョコンと出席している。
隆太さんに「最初だけ変な名前で呼び合うけど、それは儀式だから」と聞かされていたが、本當だったようだ。
ラリマー艦長さんは普通に私に話しかけてきた。
「滝本咲月さん、初めまして。デザロズの社長をしているラリマー艦長と申します」
「初めまして、滝本さんの奧様してます、咲月です」
「奧様している……殺傷能力が高いぞ……滝本の兵は強すぎるぞ!! おい、みんな生きてるか、戦場で死ぬな!!」
突然ラリマー艦長がんで後ろを振り向くと、會議室にいた人の10割が機に倒れていた。
可いと褒めてくれているのだろうが、今この部屋にはは私一人だ。
そりゃなんでも可い気がするが……とりあえず軽くお禮を言う以外に道がない。
「イラスト拝見しました。素晴らしい能力ですね、デザロズの5人もとても気にってまして、この書いてある裝や小のコンセプトをお聞きしたくてお呼びしました」
「そうですね、宇宙人アイドルという設定が裝にあまり生きていないというのを隆太さんからうかがっていたので、これは裝ではなくて、そのものという設定で書いてみました。から服のに徐々に変化してるんです。だから遠目でみるとすごくエッチかなと思いまして。本當に作るならフィギュアスケートのの部分ありますよね、あんなじの素材を使うと良いと思います」
最近仕事で説明することが増えてきたので、話を組み立てるのが上手くなってきた気がする。
ラリマー艦長と名乗っている男は、たぶん年齢は長谷川さんくらいだろう。
溫和で丁寧に私の話を聞いてくれて、裝デザイナーさんを呼び、更に話し合った。
「ありがとうございます。次の新曲で必ず市場を制圧しますので」
制圧……? 売れるってことかな??
二時間近い會議……じゃないや、和平渉になったけど、私は個人的には楽しかった。
歩きながら駅に向かう。
橫を見ると隆太さんがとても優しい瞳で私を見ていた。
そして手を握ってくれた。
「……ありがとうございました。デザロズに関わって頂くことになるなんて……考えてもいませんでした」
「これで私も結軍の一員ですかね。やはり一兵卒からでしょうか? あれ言葉合ってるのかな?」
と言ったら、滝本さんは私を優しく抱き寄せて頭をでてくれた。
私は抱きしめられた狀態で、し「むー」とする。
その表に気が付いた隆太さんが慌てる。
「どうかしましたか?」
「私、絵を書いた理由は、ただ隆太さんに喜んでしかったんですよね……。ライブ全部みて考察も読んで、わりとちゃんと頑張ったから、隆太さん喜んでくれるかなーと思ったら、盛り込んだ設定ばかり興して語って、オタクとしては合格したかもしれないんですけど、プレゼントなのに……」
隆太さんはサーッ……と青ざめる。
「すいません……まず初でミスをしました。咲月さんが書かれた絵だと本気で理解出來なかったのです。絵柄が全然違うし。それに俺たちデザロズを応援している人間がこういう風にプレゼンしてくれる人がいたら最高なのにと思っていた絵が目の前にあって、そして仕上がりが完璧すぎたのです。盛り込まれた設定と、そこに含まれるプレゼンに夢中になってしまって……言い訳です……」
「なるほど、オタク心をくすぐりすぎましたね。一生懸命書いた絵が1000RTで止まって石油王の義勇さんが1萬RTのと同じでしょうか……」
絵書きあるある、本気で書いた絵の方が評価されない。
絵書きあるある、適當で書いた絵&焼の寫真の方がファボられる……。
「咲月さん、あの本當に嬉しかったです。何より咲月さんが俺が喜ぶことを考えてくれたのが嬉しかったです」
「良いんですよ……えっと……結軍軍務省第三管區軍事研究所主席分析滝本さん……分析がお仕事なんですよね……?」
「あっ、どこで名刺を手したんですか!」
隆太さんは私を捕まえるように抱き寄せた。
そして私のオデコにトン……と自分のオデコをぶつけて言う。
「咲月さん……オタクとして強すぎませんか……」
「それ褒めてますか?」
「とても褒めてます。そしてとても嬉しいです……ありがとうございます……」
「えへへ。喜んで貰えたなら、もうそれでいいです。いやあ、ちょっと頑張っちゃいましたね」
「本當ですよ、頑張りすぎですよ、分かりませんでしたよ」
「デザロズ売れるといいですね、私好きですよ」
「頑張ります!」
私と隆太さんは手を繋いで電車に乗って帰った。
「仲間」に認定された私は後日、結軍軍務省第三管區軍事研究所主席分析補佐・滝本咲月という素敵な名刺を貰った。
名前が長くてカッコイイ―!
今度のイベントのアフターで配ろうっと。
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