《【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可すぎる彼たちにグイグイ來られてバレバレです。》12 人生徒會長の〝お著替え〟
私立・帝開(ていかい)學園。
日本に名だたる大企業グループ「帝開」が設立した中高一貫校である。創立してまだ十年と歴史は淺く、そのため、各種スポーツや進學、そして蕓能の分野にも力をれている。
どのくらい力をれているか?
運部についての環境を説明するのが、一番わかりやすいだろう。
まず、野球部・サッカー部・ラグビー部・ソフトボール部に関しては、それぞれ専用のグラウンドを持っている。総合グラウンドもあわせて、この學校には五つもグラウンドがあるのだ。これだけでもう、規格外。対校試合に訪れた他校の生徒が圧倒され無言になるのは「帝開あるある」の一つだ。
育館は4つ。バレー部、バスケ部、ダンス部がそれぞれ専用で使うのと、さらに総合育館がある。
3階建ての格技場は、1階が道部、2階がレスリング部、3階が剣道部が使用する。
それとは別にトレーニング施設があり、プールがあり、運部専用の食堂ではプロテインが飲み放題だったり……ああもう、俺も説明してて疲れてきた。ともかく、それだけの施設が用意されてるってわけだ。力のれ方がハンパじゃないのは、わかってもらえただろうか。もちろん、文化部や験制についても似たようなものだと、付け加えておく。
さて――。
この帝開學園高等部の生徒數はおよそ1200名。
1學年のクラスは10。
特待生の割合は、だいたい1クラス5名から10名。
全校生徒1200名のうち、およそ1割強の150名前後が、なんらかの「特待生」として學しているわけだ。
この1割強の特待生が、この學園のリーダーとして君臨している。教職員も彼らをチヤホヤするし、そもそも學校のカリキュラムそのものが、彼らを中心として設計されていた。
殘り9割の生徒たちは、特待生のご機嫌を窺いつつ、こそこそと學園生活を送ることになる。
まぁ、それはそれで、「わきまえて」過ごしていればそれほど困ることはない。強い者に逆らわず、長いものには巻かれて、穏やかに過ごしていければ良い。
大半の生徒は、そう楽観的に考えていたはずなのだが――。
◆
六月某日。
そろそろ梅雨りかという曇天のもと、全校生徒が講堂に集められた。月に一度、第一月曜日に行われる全校集會である。
壇上に立つのは、スーツ姿の老紳士である。
白髪頭をオールバックにしたハンサム。いわゆる「ロマンスグレー」ってやつだ。白い口髭に威厳を漂わせて、鋭い眼を全校生徒に投げ下ろしている。獲を狙う、鷹のような目つきだ。
この男が、帝開グループのドン・高屋敷泰造(たかやしき・たいぞう)。
高屋敷瑠亜の祖父である。
「この世界は――――平等ではない」
厳かな聲で、やつはそう言った。
いつもの口上である。
このジジイは、何か演説をする時、必ずこの口上からるのだ。
「力ある者が報われ、そうでない者は報われぬ。當たり前のことだ。弱強食。優勝劣敗。この社會では言ってはいけないとされている〝真実〟である。私は諸君らに、敗者になってしくない。この日本のため、勝者を育てる。それが、私の使命。この學園の使命。そう信じるものである」
確かにね。
心の中で、俺は頷いた
勝者を育てる學園。同だ。あんたの孫娘からして、そうだからな。傲慢さを日々すくすくと育てている。そもそもあんたのアレ、負けようがないよな。下っ端だと侮っていた新人聲優に負けたことなんかコロっと忘れて、今もぬくぬくしているんだから。勝ったことだけ覚えてれば、そりゃ、勝者だな。
「特待生の自覚と、全生徒へさらなる発を促すため『特待生バッチ』を配ることにする」
帝王の〝託宣〟が、靜かな講堂の空気を震わせた。
周りの生徒たちから、大した反応は見られない。「ふーん」みたいなじ。バッチくらいで騒ぐやつはいない。まぁ、校で付けてたらちょっとカッコイイな、くらいに思っているやつが大半のように見えた。
しかし――。
(まずいんじゃないか、それ)
あくまで直でしかないが、俺のセンサーに「何か」がひっかかっていた。
今までだって、特待生とそれ以外の「格差」はあったのだから、何も変わらないと言えばそれまでかもしれない。しかし、何かがひっかかる。的な言葉にできないのがもどかしいが……。
理事長の話は続いている。
「詳しい説明は、今回の発案者である生徒會役員・高屋敷瑠亜くんに発表してもらう」
ブタの名前が呼ばれた。
ブッヒンブヒヒンと、意気揚々と壇上にあがってくる。その自信満々の顔を見て、俺の不安はさらに加速した。
何故こいつが、生徒會の代表ヅラして出てきた?
三年生の生徒會長はどうしたんだ――。
理事長がブタにマイクを手渡した。鷹のようだった鋭い目が和やかなものに変わる。鬼と言われる理事長が孫娘の前では仏になるという噂は本當だ。元・なじみだから、このジジイが孫バカなのはよく知ってる。
マイクを持つ手の小指をピンと立てて、ブタは鳴き始めた。
「コホン。生徒會役員・高屋敷瑠亜でっす。今、お祖父(じい)さま、じゃなくて、理事長からお話があったように、特待生には校章を模した金のバッチを配ります。校では、必ずそのバッチをつけてくださいねっ。そうすることで、特待生としての誇りと責任をよりじ、より頑張れるんじゃないカナ~? アタシはそう思ってまーす!」
さすがは聲優アイドル。聲も綺麗でよく通るし、トークも(場に相応しいかはともかく)軽妙だ。俺の周りにいる生徒たちは、みんな聞き惚れている。教職員がいなければ、「るあ姫」コールくらい起きたかもしれない。まったく、先月イベントであれだけ醜態をさらしたというのに、人気は衰えていないようだ。
「それからそれからっ、一般生徒には銀のバッチを配ります。この銀にこめられた意味は、『金になれるよう、頑張って!』というものです。この帝開學園には、途中からでも特待生になれる制度があります。學業に部活に課外活に、特待生に負けないよう頑張ってください!」
ふむ、と頷く気配が周りからした。ブタの言葉に納得してしまったらしい。「これを機に、特待生目指しちゃおうかな」。そんな風に考えたやつもいるのかもしれない。
一見して、何も悪いことはないように思う。
だが……。
やっぱり、まずい。
ま(・)ず(・)い(・)だ(・)ろ(・)、(・)こ(・)れ(・)は(・)。(・)
「最後にアタシから――じゃなくて、生徒會からお願いです。金バッチをつけている特待生には、みなさん敬意を払うようにしてくださいねっ。彼ら彼らは、この學校に貢獻してくれる大切な人材です。校の至るところで優先、尊重してあげるよーにっ」
――もちろん、「強制」じゃないけどね?
最後にそう付け加えて、ブタはマイクを理事長に返した。
颯爽と壇上から下りる時、俺のほうを見た。俺の隣にいる男子が「うわっ、瑠亜ちゃんと目が合った!」とか喜んでる。俺はもちろん無表。そんな俺を見て、ブタは意味ありげにの端を吊り上げて――それから「ばっちーん☆」とウインクをかましていった。えっ? 何今の。やめて。目が腐る。
「る、るあひめにウインクされたぁぁ……」
隣の男子がよろめき、膝から崩れ落ちるのを橫目に、俺は気分が悪くなった。
吐きそう。
この集會が終わったら、保健室行ってくるか……。
◆
集會が終わり、講堂から生徒の退出が始まる。
俺は1年1組の列を抜けだし、ハゲオヤジ擔任に斷って保健室に行った。特に何も言われなかった。俺に興味がないらしい。
まだ全生徒のほとんどが講堂にいるから、校舎の中は靜かだった。
履きが床をぺたぺた叩く音だけが聞こえる。落ち著く音だ。気分が悪いのもし収まってきた。
軽くノックして、保健室のドアを開ける。
すると――。
「キャッ」
小さな悲鳴と、刺激的な景とが、出迎えてきた。
黒。
黒の、下著。
勢いよく突きだしたロケットのような房を包み込む、黒のレース。複雑な刺繍が施されている。カーテンから差し込むしに浮かび上がるのは、蝶の模様。黒い蝶が、真っ白なを舞う。そんな現実離れした景が、消毒の匂いがする室に現れていた。
そこにいたのは、著替え中の――。
いや、「子」だ。
下著もその中も高校生離れしているけれど、保健の先生ではない。だって制服を著ている。スカートとタイツは著用している。ちょうど、ブラウスを著ようとしていたところに出くわしたようだ。
彼は、魅のを差させた腕で隠し、鋭いまなざしで闖者である俺を抜いた。
「向こうを、向きなさい」
毅然とした聲だった。著替えを見られたショックをじさせない。だけど、語尾がほんのし震えている。まなざしにかすかな弱さがある。強がっているのは明白だった。
「すみません」
謝罪して、背中を向けた。れの音を聞きながら、今からでも出て行くべきか迷った。だが、それでは逃げることになってしまう。その方があとあと問題になるんじゃないか? それもあって、彼は「出て行け」とは言わなかったんじゃないか。
迷ってるうちに、れの音が止んだ。
「もういいわ。こちらを向きなさい」
楚々としてブレザーを著込んだ彼が、俺に命令する。
リボンのからして、三年生と分かる――が、そもそも彼のことを俺は知っている。というより、この學校で知らない者はいない。おそらくあのブタの次くらいには有名なはずだ。
銀の長い髪と蒼い瞳を持つ、北歐ハーフの帰國子。
試績トップで學し、今も首席の座をキープし続けている學業特待生。
高校生だてらに起業して、ビジネスの分野でも功を収めている。
そして――この帝開學園の現・生徒會長。
胡蝶涼華(こちょう・すずか)。
この學園を代表する天才の一人である。
「退學」
名前と同じクールな口調で、胡蝶會長は言い放った。
「退學よ、貴方。私のを見て、ただですむと思わないことね」
「……」
おいおい。
バッチどころか、俺氏、學籍を失う危機である――。
2章開幕です!
新ヒロインです!
ブタさんがさらにあぶらみ……いや、荒ぶります!
「2章も付き合ってやんよ!」という心優しき方、ブックマークと、広告下側にある欄【☆☆☆☆☆】で応援いただけると幸いです。何よりのモチベーション、燃料になります!
【書籍化決定】婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
アメリアには、婚約者がいた。 彼は、侯爵家の次男で、貴重な「土魔法」の遣い手だった。 婚約者とは良好な関係を築けていたと思っていたのに、一歳年上の彼が王立魔法學園に入學してから、連絡が途絶える。 不安に思うが、來年には自分も入學する。そのときに話し合えばいい。 そう思っていたのに、一年遅れて入學したアメリアを待っていたのは、周囲からの冷たい視線。 婚約者も理由をつけて、アメリアと會おうとしない。 孤立し、不安に思うアメリアに手を差し伸べてくれたのは、第四王子のサルジュだった。 【書籍化決定しました!】 アルファポリスで連載していた短編「婚約者が浮気相手と駆け落ちしたそうです。戻りたいようですが、今更無理ですよ?」(現在非公開)を長編用に改稿しました。 ※タイトル変更しました。カクヨム、アルファポリスにも掲載中。
8 50【書籍化・コミカライズ】実家、捨てさせていただきます!〜ド田舎の虐げられ令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される〜
【DREノベルス様から12/10頃発売予定!】 辺境伯令嬢のクロエは、背中に痣がある事と生まれてから家族や親戚が相次いで不幸に見舞われた事から『災いをもたらす忌み子』として虐げられていた。 日常的に暴力を振るってくる母に、何かと鬱憤を晴らしてくる意地悪な姉。 (私が悪いんだ……忌み子だから仕方がない)とクロエは耐え忍んでいたが、ある日ついに我慢の限界を迎える。 「もうこんな狂った家にいたくない……!!」 クロエは逃げ出した。 野を越え山を越え、ついには王都に辿り著く。 しかしそこでクロエの體力が盡き、弱っていたところを柄の悪い男たちに襲われてしまう。 覚悟を決めたクロエだったが、たまたま通りかかった青年によって助けられた。 「行くところがないなら、しばらく家に來るか? ちょうど家政婦を探していたんだ」 青年──ロイドは王都の平和を守る第一騎士団の若きエリート騎士。 「恩人の役に立ちたい」とクロエは、ロイドの家の家政婦として住み込み始める。 今まで実家の家事を全て引き受けこき使われていたクロエが、ロイドの家でもその能力を発揮するのに時間はかからなかった。 「部屋がこんなに綺麗に……」「こんな美味いもの、今まで食べたことがない」「本當に凄いな、君は」 「こんなに褒められたの……はじめて……」 ロイドは騎士団內で「漆黒の死神」なんて呼ばれる冷酷無慈悲な剣士らしいが、クロエの前では違う一面も見せてくれ、いつのまにか溺愛されるようになる。 一方、クロエが居なくなった実家では、これまでクロエに様々な部分で依存していたため少しずつ崩壊の兆しを見せていて……。 これは、忌み子として虐げらてきた令嬢が、剣一筋で生きてきた真面目で優しい騎士と一緒に、ささやかな幸せを手に入れていく物語。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※書籍化・コミカライズ進行中です!
8 173【電子書籍化】神託のせいで修道女やめて嫁ぐことになりました〜聡明なる王子様は実のところ超溺愛してくるお方です〜
父親に疎まれ、修道女にされて人里離れた修道院に押し込まれていたエレーニ。 しかしある日、神託によりステュクス王國王子アサナシオスの妻に選ばれた。 とはいえやる気はなく、強制されて嫌々嫁ぐ——が、エレーニの慘狀を見てアサナシオスは溺愛しはじめた。 そのころ、神託を降した張本人が動き出す。 ※エンジェライト文庫での電子書籍化が決定しました。詳細は活動報告で告知します。 ※この作品は他サイトにも掲載しています。 ※1話だけR15相當の話があります。その旨サブタイトルで告知します。苦手な方は飛ばしても読めるようになっているので安心してください。
8 55Relay:Monsters Evolve ~ポンコツ初心者が始める初見プレイ配信録~
何の根拠もなく「これだ!」と、とあるオフラインのVRゲームの初見プレイを配信する事を決めた能天気な無自覚ドジっ子なサクラ。 いざ人任せにしつつ配信を始めたら、なんでそんな事になるのかと視聴者にツッコまれ、読めない行動を見守られ、時にはアドバイスをもらいつつ、ポンコツ初心者は初見プレイでの珍妙なゲーム実況を進めていく! そんなサクラが選んだゲームは、現実に存在する動植物を元にして、モンスターへと進化を繰り返し、最終的に強大な力を持つ人類種へと至る事を目的としたゲーム『Monsters Evolve』。 そのオンライン対応版のVRMMO『Monsters Evolve Online』がサービスを開始して少し経った頃に、VR機器そのものに大幅アップデートが行われ、タイトルに制限はあるがリアルタイムでの配信が解禁されたものである。 これはオフライン版の『Monsters Evolve』を描く、もう1つの進化の物語。 カクヨムでも連載中! pixivFANBOXで先行公開も実施中です! また、本作は『Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜』の関連作となります。 関連作ではありますがオンライン版とオフライン版という事で話としては獨立はしていますので、未読でも問題はありません。 もしよろしければオンライン版の話もどうぞ。 https://ncode.syosetu.com/n7423er/
8 116VRMMOで妖精さん
姉に誘われて新作VRMMORPGを遊ぶことになった一宮 沙雪。 ランダムでレア種族「妖精」を引き當てて喜んだのもつかの間、絶望に叩き落される。 更にモフモフにつられて召喚士を選ぶも、そちらもお決まりの不遇(PT拒否られ)職。 発狂してしまいそうな恐怖を持ち前の根性と 「不遇だってやれば出來るって所を見せつけてやらないと気が済まない!」という反骨精神で抑え込んで地道に頑張って行くお話。
8 129スキルイータ
俺は、どうやら死んでしまうようだ。 ”ようだ”と言ったのは、狀況がよくわからないからだ、時間が止まっている? 會社のメンバーと、打ち上げをやった、その後、數名と俺が行きつけにしているバーに顔をだした。デスマ進行を知っているマスターは、何も言わないで、俺が好きな”ギムレット”を出してくれる。 2杯目は、”ハンター”にした、いつものメンバーできているので、話すこともなく、自分たちが飲みたい物をオーダした。 30分程度で店を出る。支払いは、デポジットで足りるというサインが出ている。少なくなってきているのだろう事を想定して、3枚ほど財布から取り出して、店を出る。雑踏を嫌って、裏路地を歩いて、一駅前の駅に向かった。 電車を待つ間、仲間と他愛もない話をする。 異世界に転生したら、どんなスキルをもらうか?そんな話をしながら、電車が來るのを待っていた。 ”ドン!” この音を最後に、俺の生活は一変する。 |異世界《レヴィラン》に転移した。転生でなかったのには理由があるが、もはやどうでもいい。 現在、途方にくれている。 ”神!見て笑っているのだろう?ここはどこだ!” 異世界の、草原に放り出されている。かろうじて服は著ているが、現地に合わせた服なのだろう。スキルも約束通りになっている。だが、それだけだ。世界の説明は簡単に受けた。 いきなりハードプレイか?いい度胸しているよな? 俺の|異世界《レヴィラン》生活がスタートした。
8 127