《【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】》14話 「勇太が、カミマツ様だった(確信)」
その後、僕らはショッピングモールを見て回った。
特に買いたいはないけど、服を見たり、本を見たりする。
本屋にて。
「わっ、デジマスのコミック最新刊を売ってるよ! ちょっと買ってくるねー!」
駒ヶ(こまがね) 由梨恵(ゆりえ)は凄い速さでマンガを手に持って、レジの方へ行ってしまった。
「どうしよ……」
僕は暇だったので雑誌コーナーを見て回る。
聲優を特集した雑誌があった。
「わっ。すごい表紙に由梨恵の寫真が……」
今一番人気のあるアイドル聲優! とうたい文句が書いてある。
凄い人気があるんだなぁ……。
「でも、ほんと、なんというか……普通の子ってじするよね」
由梨恵は別に自分の容姿を自慢してこない。
過剰に自分の実績をひけらかさない。
なんというか……良い意味で普通の子ってじ。
まあコミュ力は最強だし、見た目も抜群だけど……。
「というか、なんか遅いな……どうしたんだろう?」
由梨恵がなかなか帰ってこない。
どうしたのだろうか、と思って捜していると、彼をすぐに見つけた。
「うぇーん……! おかーさーん! どこー!」
泣きじゃくる子供の前で、由梨恵がしゃがみ込んでいる。
「おかーさーん! おかーさーん!」
「迷子……だよね。どう見ても」
僕が聲をかけようとする、その前に。
「【大丈夫! お母さんは、すぐに見つかるさ!】」
……それは、とても聞き覚えのある聲だった。
「……リョウ?」
そう、駒ヶ 由梨恵が演じる、【デジマス】の主人公【リョウ】の聲だ。
「【泣いてちゃダメだ! 幸せの神様は泣き蟲が大嫌いなんだぜ!】」
彼はお忍びだというのに、仕事でもないのに、リョウの聲を演じている。
それは泣いている子供を勵ますため。
ただそれだけに、演技している。
事実、リョウの聲を聞いた迷子の子は、笑顔になるとうなずく。
「わかった、なかない!」
「【おう! じゃ、一緒にお母さん捜そうか!】」
由梨恵が迷子の手を引いて、立ち上がる。。
「あ、ごめんね勇太くん! ちょっと待っててくれない? この子のお母さん捜してあげないと」
「いや……一緒に捜そうよ!」
由梨恵は目を丸くする。
だけど、フッ……と笑ってうなずく。
その後、本屋の中を捜して回ると、すぐに母親を発見できた。
「ありがとうございます! なんとお禮を言って良いやら……」
「おかーさん! あのお姉ちゃん……リョウだったよー!」
迷子の年が笑顔で、由梨恵を指さす。
彼はウインクして言う。
「【もう泣いちゃダメだぜ? おれとの約束だ】」
またもリョウの聲でそう言うと、年は嬉しそうにうなずく。
と、そのときだった。
「今の聲……やっぱり……ゆりたんじゃね?」
周りに居た人たちが、由梨恵を指さして言う。
「そ、そうだよ! ゆりたんだ!」「うそっ! デジマス聲優のっ?」
ざわざわ……と周囲がざわついてくる。
「あちゃー……さすがに気づいちゃったか~」
由梨恵が困ったように頭をかく。
人の多い場所で、リョウの聲を演じれば、変裝していても気づかれちゃうよね。
「こうなったら……勇太くん!」
「う、うん。なに?」
「逃げろー!」
由梨恵が僕の手を引いて走って行く。
僕は彼とともにその場から離する。
「ばいばーい! おねーちゃーん!」
ひたすら走って、僕らはショッピングモールから離する。
ややあって。
夕暮れの駅前、バスロータリーにて。
「いやぁ~……あちあち。走ったね~」
「ぜえ……はぁ……う、うん……」
汗だくになっている由梨恵は、夕日に照らされてキラキラしていた。
「ん? どうしたの?」
「あ、いや……その、き、綺麗だなって」
「あははっ。ありがとうっ!」
僕らはバス停の前の椅子に座る。
彼はバスに乗って帰るらしい。
「今日は楽しかったぁ! ありがとね! 付き合ってくれて!」
「こちらこそ。僕も普通に楽しかったよ」
なんだか、一日がとても早くじた。
そう、普通に楽しかったのだ。
「あのね……勇太くん。怒ってない?」
「え、怒ってる? なにに?」
「強引にデートにったこと。ごめんね……なんだか、アリッサさんと君が仲良くしてるって聞いたら……いてもたってもいられなくて……」
ああ、この子は、優しい子なんだなぁ。
さっきの迷子の年に対してもそうだ。
仕事じゃないのに、聲優としての技能を使って、迷子の子をはげましていた。
そう言う気遣いのできる、普通のの子なんだ。
「怒ってないよ。すっごい楽しかった! また一緒にいこうよ!」
自然に、僕の口からそんな言葉が出た。
もっと彼と一緒に遊びたい。
普通の友達として。
ぱぁ……! と由梨恵が笑顔になる。
「うんっ!」
こうして、僕らはまた會う約束をして、その日は別れたのだった。
★
上松(あげまつ) 勇太(ゆうた)が駒ヶ(こまがね) 由梨恵(ゆりえ)とデートした。
……その姿を、馴染みの大桑(おおくわ)みちるはずっと監視していた。
「…………」
バス停に座ってニヤニヤと笑う勇太。
彼を注視しだしたのは、勇太=カミマツ説を否定する材料を捜すため。
彼はずっと彼の行を監視し続けた。
今日も朝からずっと、勇太と由梨恵のデートを見続けた。
「よし、帰ろっと」
勇太がスマホを作し終えて、椅子から立ち上がる。
ぴこん、とみちるのスマホに通知がる。
フォローしているカミマツが、ツイートをしたのだ。
『今日は友達と川崎のショッピングモールで遊んできました! すっごく楽しかったー!』
「は、はは……」
みちるはその場にへたり込む。
勇太たちがデートしたのは、川崎のショッピングモール。
そして、勇太がツイートした(と思われる)と同時に、通知が來た。
……もはや、疑う余地もない。
「……勇太が、カミマツ様だ」
彼の向を探ると決めてから1週間。
今週ずっと、彼を見続けた。
すると見えてくるがある。
たとえば勇太はたまに遅刻する。
だが遅刻してくる日と、デジマスの更新日は不思議と一致することに気づいた。
今まであまり気にもとめてなかった。
だが今週は毎日、勇太は遅刻してきた。
その後も多くの、カミマツ=勇太説を裏付ける証拠が出てきた。
家族との會話、ツイート容と彼の行の一致……etc……
そして……極めつけは、由梨恵の発言。
彼は、ハッキリと、勇太をカミマツだと言った。
「そんな……あんな……あんなキャが……カミマツ……様……だなんて……」
聲が震える。
思い出されるのは、先週の始め。
馴染みを、勇太を振ってしまったこと。
「ああ……! なんてバカなことを! なんて、もったいないことをッ!」
……かくして、大桑みちるは馴染みの真実を知ってしまった。
勇太を馬鹿にしていた彼は、もう居ない。
今はもう、勇太のことを、ただの馴染みとしてではなく、神作家カミマツとしてしか見れなくなっていた。
……だが、もう遅い。
彼はすでに、みちるのことなんて、文字通り眼中にない狀態にあったのだから。
……みちるの迷走が、今、始まる。
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