《【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】》20話 投稿前からアニメ化決定
僕が新作【僕の心臓を君に捧げよ】の、連載版の投稿を決意した、翌朝。
僕の家に、來客が會った。
「や、先生。おつかれ~」
「芽依(めい)さん。お疲れ様です」
編集の【佐久平(さくだいら) 芽依(めい)】さんが、我が家にやってきたのだ。
「どうしたんです?」
「會社に寄る前に、書籍版の軽い打ち合わせしたいなって思って。あれ、メール送っておいたんだけど?」
昨晩、芽依さん宛には、書籍化のオファーをける話はしておいたのだ。
スマホを開いてジーメールのアプリを確認すると、確かに芽依さんから連絡があった。
「すみません、確認不足で」
「いえいえ。あれ、副編集長にもメール送ってたんだけど……ま、見てないか」
玄関で話していると、母さんがやってくる。
「あら芽依さん。打ち合わせですか?」
「おはようございます! はい、軽く……って、あれ? 靴が多いですね」
芽依さんが玄関に置いてある、靴の多さに気づく。
「あ、えっとそれは……」
まずい。
今、うちには超人気歌手のアリッサ・洗馬(せば)と、人気聲優の駒ヶ(こまがね) 由梨恵(ゆりえ)がいる。
もしここに泊まっているってバレたら……。
すると母さんが素早く、言う。
「古い靴を洗濯しようと思って出してるんですよ」
「ああ、なるほど」
「リビングへどうぞ。お茶を出しますので」
「あ、すみません! ありがとございますー!」
芽依さんが廊下を渡って、奧のリビングへと向かう。
「……ゆーちゃん。上の二人には部屋を出ないように言っておきますね。バレると面倒ですし」
「母さん……ありがとう!」
いえいえ、と母さんが笑って臺所へ行く。
ややあって。
リビングにある、食卓にて。
「では、先生。今回は【僕の心臓を君に捧げよ】の書籍化……打診けてくださり、本當にありがとうございますっ!」
芽依さんが深々と頭を下げる。
「ほんとありがと、マジでたすかるっ! このご恩は忘れないよ!」
「あ、いや……そこまでですか?」
「もっちろん! 見てこれ先生!」
芽依さんがスマホを僕に向ける。
なろうのランキングページだ。
……って、ええ!?
「げ、月間ランキング……ご、5位ぃ!?」
ソンなバカな!
僕は驚いてスマホを何度も見やる。
「あらあら、どうしたの、ゆーちゃん」
母さんが僕らの前にお茶を置く。
「いやその……昨日の晝に投稿した短編が、もう月間総合ランキングで5位とってて……」
「あらあら何か凄いことなの?」
すると芽依さんが興気味に言う。
「ええ。月間ランキングは、文字通り1ヶ月のポイント合計値でランキングが割り振られます。現在ですとだいたい6萬ポイント取れれば月間5位になれます。ですが、どんなに人気な作品でも、総合5位になるためには、頑張っても2、3週間はかかるんです」
「あらまぁ。じゃあゆーちゃんは、それをたった半日くらいでランキングに乗ったの?」
「そうです! もはや怪……化け作品ですよこれは! もうすごい! さっすがカミマツ先生!」
「すごいわぁゆーちゃん♡」
僕も……普通に驚いた。
いや、昨日の夜のランキングで、3萬點とって日間総合ランキング1位だったから……
月間ランキングも、もしかしたら早く乗るかなって思ってたけど……。
まさか、1日もたたずに乗るとは……。
「先生、今日中に連載版、投稿していただけないかな?」
「はぁ……まあ大丈夫ですけど……早すぎません?」
「善は急げ! っていうでしょう?」
まあ確かに……。
「ねえゆーちゃん、連載版とは?」
母さんがに尋ねてくる。
「なろうでは、2パターンの投稿方法があるんだ。1話だけしか乗せられない短編と、何話でも乗っけられる長編連載。で、連載版っていうのは、短編版を分割して、長編の形にした小説のこと」
「あらぁ……母さん、難しいことはわからないけど、無理だけは……しちゃだめですよ?」
母さんが心配そうに言う。
そうだよね、學業もあるし、デジマスの連載もあるし……。
作品を二つ同時並行で走らせて、僕に負擔が掛からないか、心配してくれてるんだろう。
「ありがと母さん。大丈夫、無理はしないよ」
「ええ、あたしも先生には絶対無理させませんので!」
母さんが安心したように吐息をつく。
「大事な息子をどうか、よろしくお願いしますね♡」
母さんは丁寧に頭を下げると、僕らの邪魔しないように、リビングを出て行った。
「で、この後の話なんだけど……先生。ひとつご提案が」
「提案? なんですか?」
「連載版に、【書籍化決定】って明記して投稿してもらえません?」
「は、へ、えええええええ!?」
あまりに突然のことで、僕は驚き聲を張り上げてしまった。
「いやあの……聞いたことないですよ。書籍化を最初から掲げて投稿するウェブ小説なんて……!」
短編版の人気が出て、長編化するってパターンはよく見る。
小説投稿して數日で、書籍化決定しました! って事例も、なくはない。
けどまさか連載版投稿と同時に書籍化決定しました! なんてなってる小説……今まで見たことなかった。
「でももう書籍化は決まってることだし、それやらないと書籍化の打診のメッセージがこのあともウジャウジャくると思うんだ」
「それは……まあたぶん」
今朝もなろうのページ開いたら、新たに打診のメッセージがいくつも來ていた。
「なろう読者だって、短編のこのポイント見れば書籍化も納得してくれると思うよ。話題にもなるだろうし」
芽依さんはいろいろ考えてくれてるんだなぁ。
「もちろんすぐに書籍作業して、とはお願いしないよ。安心して」
「そ、それなら……わかりました」
しかし大変なことになってきたなぁ。
僕は昨日のうちに用意しておいた、連載版の小説を、なろうで投稿する準備をする。
「えっと……【連載版】僕の心臓を君に捧げよ【書籍化決定】……タイトルこんなじですかね」
僕は芽依さんにスマホ畫面を見せる。
「うん、おっけー。まだ出版社名は伏せておこっか。あ、コミカライズ決定も書いて良いよ」
「は、はぁ!?」
噓でしょ!? まだ連載版投稿すらしてないのに……!
「もう編集長には了解得てるから大丈夫だよ」
「ま、まじっすか……」
昨日の夜、打診をけますと芽依さんにメールした。
結構夜遅くだった気がする。
そこから編集長と説得して、コミカライズまで決めてるなんて……。
や、やりおる……!
ちなみに父さんはぐーすか寢てました。
「早くないです……?」
「そうかな? うちほら、自社のマンガアプリあるから、コミカライズの話って通りやすいからね」
そういえばそうだった。
最近ではなろう原作のマンガが増えている。
しかも紙での連載ではなく、スマホアプリでの連載が多い。
書籍化打診の際に、コミカライズとセットで來る場合は、自社でこのマンガアプリを持っている會社のケースが多い。
「あ、それと來週どっかのタイミングで、編集部きてもらえないかな?」
「書籍版の打ち合わせですか?」
「んー。まあ遠からずってところ。ちょっと重要なお話」
「デジマス関連?」
「ううん、僕心」
僕心とは、新作の【僕の心臓を君に捧げよ】の略稱だ。
重要な話ってなんだろう……?
「まさかアニメ化の話じゃあないですよね、さすがに」
「え?」
「え?」
「「…………」」
「「……え?」」
僕らはお互いに首をかしげる。
「芽依さん? 冗談ですよね?」
「いや……ううん。冗談じゃないけど」
う、うそーん……。
え、だって……短編しか投稿してないんだよ!? アニメ化までって……ええー!?
「うちの出版社グループって、アニメ化にも強いからさ、話通しやすかったよ」
「いやまあ……知ってますけど! でも……デジマスだって、たしか3巻くらいのときだったじゃないですか、アニメ化の話し來たの!?」
「あはは、先生。あのときと今とでは、狀況が違うでしょう?」
狀況が……違う……?
「先生は、もうデジマスって実績がある。書籍売れ、アニメ円盤売れ、映畫は歴史に殘る大ヒット。そんな神作家の新作は、お試しの短編で投稿から數時間で月間ランキング5位に乗りました」
さて、と芽依さんが笑って言う。
「これのどこに、コケる要素があると思うの?」
「いや……えっと……」
と、そのときだった。
「うぉおおおお! 勇太ぁあ! すごいぞぉおおおおおお!」
ばーん! と父さんがリビングのドアを開けて、慌ててってくる。
「まさか連載版投稿と同時に、書籍、コミカライズ、アニメ化まで決まるなんて……! いやぁすごい、本當にすごいよぉ! さっすがカミマツ先生だぁ!」
「あら副編集長、おはようございます」
芽依さんがにこやかに笑いながら言う。
「やあ芽依くん! おはよう! しかしアニメ化!? 編集長良いって?」
「はい、二つ返事でした。カミマツ先生なら大丈夫でしょうって」
「すごいぞ勇太ぁ! 編集長にめちゃくちゃ信頼されてるじゃないか……って、芽依くん? こういうときって、まず直屬の上司である、副編集長の僕に話通すんじゃないの?」
「あ、編集長が通さなくっていいよって言ってたので。すみません」
父さんぇ……。
會社での扱いがちょこっと見えてしまった……。
「でも……本當に、大丈夫ですか? 書籍も発売してないのに、アニメ化の企畫走らせるなんて」
「まあでも勇太。そう珍しくないよ。1巻発売でアニメ化を発表したライトノベルがあるだろ?」
「ああ、あの文庫の……今アニメやってるヤツね……」
「あれも書籍の企畫段階で、アニメ化が同時に走ってたんだ。あの作品の作者って、前の作品も大ヒットさせてるし、アニメ化の実績もある。そういう作者の新作だと、アニメ化企畫ってすぐに立ち上がるんだよ。特にうちは自社でアニメ會社もってるしね」
す、すごい……。
なんか父さんが……編集者らしいこと言ってる……!
「あらあらまあ、あなた、まるで編集者みたいね」
「母さん!? ぼくの仕事忘れたの!?」
「上松(あげまつ)家の穀潰し……もしくはゆーちゃんの寄生蟲では?」
「そこまで!? 酷くないぃ!?」
母さんが微笑みながら僕の隣に立つ。
後ろから、肩をもんでくれた。
「ゆーちゃん。心配なのですね。期待値が大きすぎて……」
なぜ母さんは、こうも僕の悩みをすぐさま悟ってくれるのだろう。
「大丈夫。ゆーちゃん才能あるし、できますよ。芽依さんを始めとして、たくさんの大人が、あなたの才能を認めてますもの」
「そうだよ先生。うちだって商売なんだから、功する見込みがなければ、最初からやらないよ」
……昨日までの僕だったら、たぶん斷ってたかもしれない。
けど、アリッサと會話したことで、僕の覚悟は決まっているんだ。
「えっと……じゃあ、その、諸々、よろしくお願いします」
こうして僕の新作、【僕の心臓を君に捧げよ】は、書籍、コミカライズ、アニメ化まで決定した狀態で……連載スタートしたのだった。
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