ある休日のこと、僕は川崎駅まで來ていた。

「待ち合わせはスタバに11時にか……」

僕はスマホの電源をれる。

ツイッターのダイレクトメッセージには【11時に川崎のスタバで會いましょう！】と書かれている。

相手の名は……【みさやまこう】。

さて経緯を話そう。

先日、僕の2シリーズ目【僕の心臓を君に捧げよ】の書籍版の報が解となった。

7月発売、出版社はデジマスと一緒、そしてイラストレーターさんは【みさやまこう】さん。

ツイッターでその報を流したところ、もの凄い勢いで拡散された。

ツイートをした數分後に、みさやまこうさんからフォローされた。

さらにDMが送られてきたのだ。

【はじめましてカミマツ様！　私、せんせーの大大大大大ファンなんですー！】

【ぜひ一度、直接會って打ち合わせしたいです！】

【デジマスのこととか、僕心のことで、いろいろせんせーのお話聞かせてください！】

みさやまさん凄いフランクな人だった。

絵のお禮もしたかったので、會うことにした次第。

「集合11時だけど……ちょっと早く來過ぎちゃったかな」

時刻は10時くらい。

まあ、駅前適當にふらついてからいこうかな……と思ったそのときだった。

「ん？」

ふと、駅前にとても可らしいの子がいることに気づく。

「銀髪に青い目……外國の人かな？　ロシア系かも」

年齢は10才くらいかな。

小學生みたいな見た目している。

おの辺りまでばした長い銀髪と、冬の空のような澄んだ青い瞳。

ばした前髪で片目が隠してある。

真っ白なに黒いドレスのような服裝……まるでお姫様だ。

「…………」

銀髪のお姫様は、あっちへふらふら、こっちへふらふらと、改札の前を行ったり來たりしている。

スマホを見て、きょろきょろしている。

たぶん出口がわからないんだろうなぁ。

『あの……すみません……北口ってどっちですか……』

彼は何かをしゃべっている。

けど……意味が理解できない。

……日本語じゃ、ないよね。

『あの……すみません……どなたか……その……』

でもあの目はわかる。

迷子の目だ。

「あの、さ。君……大丈夫？」

見かねて、僕はに聲をかけた。

びくん……！　と彼がを強くこわばらせた。

ブルブルブルブル……！　と震えだす。

「えっと……その、もしかして迷子？」

びくんっ！　ブルブルブルブル……！

ま、參った……完全に怯えてるよ。

そりゃそうだ、知らない人から聲をかけたら怖いってもんだもん。

「どうしよ……ん？　あれ、それって……」

がスマホをぎゅっと握りしめている。

スマホカバーには、【デジマス】の主人公【リョウ】が描かれていた。

でも……変だな。

公式の絵じゃないぞ？

「それ、デジマス？」

「…………！」

が目を丸くする。

「もしかしてデジマス好きなのかな？」

「…………！」

こくこく、とが強くうなずく。

「そっか。僕もデジマス好きなんだ。リョウ、かっこいいよね」

「…………！」

こくこくこくこく！　とが何度もうなずく。

しデジマスの話をした。

彼はしゃべらないけど、でもリアクションは取ってくれる。

かなり大ファンらしくて、々とグッズを持っているんだってさ。

僕らがデジマスについて話していると、彼の張はだいぶほぐれたみたいだった。

「ところで君、迷子？　どこか行こうとしてたの？」

「…………」

こくん、とがうなずく。

スッ、とスマホを僕に見せてきた。

ブラウザにはスタバの畫像。

「北口のスタバ？　行きたいの？」

こくん、とがうなずく。

「そっか、よければ一緒に行こうか？」

「！」

いいの、とばかりに彼が首をかしげる。

「うん。ちょうど僕もそこに行く予定だったんだ」

「！」

ぱぁ……！　とが表を明るくする。

『……ありがとう。優しいお兄ちゃん』

「？　えっと……じゃ、いこっか」

そんなわけで、僕はを連れて、北口へと向かう。

とてとて、とがうしろから付いてくる。

しかし小學生も最近は、ひとりでこんな人の多い場所に出歩くんだなぁ。

僕らは信號待ちをしながら話す。

「スタバなんて行ってどうするの？　待ち合わせ？」

こくん、とがうなずく。

「そっか。僕も人に會うんだ」

みさやまさんがどんな人なのかわからないけど……ま、到著してDM送ればなんとかなるよね。

「あ、信號青だ。渡ろうか」

「…………」

は立ち止まってしまった。

「どうしたの？」

ぶるぶる、と震えている。

なんだろう……？

『……橫斷歩道、怖い』

相変わらず何言ってるかわからない。

けど何かにビビってる……？

「大丈夫だよ。ほら」

何が怖いのかわからないけど、僕は彼の手を握ってあげる。

「あ……」

みちるも、昔は結構怖がりだった。

そういうときは、一緒に手をつないであげると、怖いのもなおっていたっけ。

「僕が付いてるよ」

の手を握りながら橫斷歩道を渡る。

彼はぽーっと顔を赤くしながらぼくを見上げてきた。

『……すごい。王子様みたいだ。かぁっこいいよぉ～……♡』

そんなこんなあって、僕らはスタバへと到著した。

「はい到著」

ぺこぺこ、とが頭を下げる。

「いえいえ。待ち合わせの相手、いる？」

ジッ、とが店をつぶさに見る。

だがふるふる、と首を振った。

「そっか。一人で待つのもあれだろうし、よければ一緒に待とうか？」

ぱぁ……！　とが顔を明るくする。

だが、すぐに首を振った。

「大丈夫なの？」

「…………」

こくん、ととが首を縦に振る。

「そっか。じゃあね」

『……ありがとう、優しくて最高にカッコいいお兄ちゃん……♡　はぁ～……♡　せんせーがこのお兄ちゃんみたいな素敵な人だったらいいのになぁ～♡』

が頬に手を添えて、くねくねとをかしていた。

なんだろう、小學校の間に流行ってるダンスかな？

「さて……みさやま先生きてるかな」

とは言え、相手の顔もわからないからなぁ。

「あ、そうだ。DMでメッセージおくっとこ。ええっと……到著しました、と」

すると、すぐさま返事があった。

【こんにちはせんせー！　私も到著しましたっ！】

「あ、そうなんだ」

僕は【どこにいますか？】と打つ。

【り口のところにいますー！　せんせーに會いたい會いたいですー！　きゃー♡　どうしよう心臓ばくばくですよー！】

隨分とおしゃべりな人みたいだ。

何歳くらいだろう……？

畫配信してるし、絵描きさんでもあるから……20歳くらいかな？

【せんせー？　どこー？】

り口のとこを探してみるけど、さっきのの子以外にいない。

【どこー？】

「えっと……どこだろう？」

【ねーえーどこー！】

「ううん……あれ……いないよなぁ？」

おかしいなぁ……と、そのときだった。

とんっ、とさっきのが、正面からぶつかってきたのだ。

「きゃ……っ」

可らしい聲とともに、彼が餅をつこうとする。

「あぶないっ」

僕はとっさに彼の腕を引っ張る。

「大丈夫？　ダメだよ、前見て歩かないと」

かぁ……とが顔を赤くする。

……と、そのときだった。

「え？」

彼の落としたスマホの畫面が、ちらっと見えてしまった。

そこには、ツイッターのDMのページが開かれていた。

そして……さっきみさやま先生と、僕との會話が書かれている。

「え？　あ、あれ……？　も、もしかして……」

は顔を赤くすると、スマホをバッ！　と回収する。

僕はスマホに文字を打ち込む。

【もしかして、みさやま先生ですか？】

え、とが顔を上げる。

彼の青い瞳と、僕の瞳が錯する。

「「え……？」」

はDMにメッセージを送る。

【もしかして……カミマツせんせーですか？】

僕の攜帯に、ノータイムで、みさやま先生からメッセージが來た。

「あ、はい。そうです、みさやま先生」

「～～～～～～～～！」

は顔を真っ赤にして、ぷるぷると震えだす。

『……どうしよう～♡　想像の何億倍も、カッコいい人だったよぉ～♡』

日本語じゃない言葉で何かを呟く彼。

どうしよう、失禮なことしちゃったかな？

ともあれ、僕はイラストレーターである、みさやまこう先生と初顔合わせしたのだった。