《【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】》34話 超人気作家から勝負を挑まれる(完勝)

二作目【僕心】の発売日が近づいてきた、ある日のこと。

僕は編集部へとやってきていた。

大會議室にて。

「やぁ我がライバル! 久しぶりだねッ……!」

「白馬先生。こんにちは」

長に白スーツ、甘いマスクが特徴的。

彼は白馬(はくば) 王子(おうじ)。

僕と同じ作家だ。

アーツ・マジック・オンライン(AMO)というモンスターコンテンツを持つ、超人気作家である。

「白馬先生、何しに來たんですか?」

「それは君と同じだろう、我が宿敵よ。サイン本の作さ」

會議室の上には、山積みになった文庫本が置いてある。

サイン本とは、専門店に配られる、作者のサインりの本ことだ。

今回、【僕心】は初版○○○○○部(※自主規制)だ。

そのうち1000冊がサイン本として世に出る。

「なるほど……じゃあ」

「うむ……では……」

僕らは互いに、山積みの本から自著を一冊手に取ると……。

「「サイン、ください……!」」

何を隠そう、僕は白馬先生のファンだ。

AMOは1巻から初版で買い続けている。

一方で白馬先生も僕の作品をいつも楽しみにしてくれている。

お互いにサインを書いて、本を渡す。

「ありがとうございます!」

「こちらこそ、君のサイン本をもらえてとてもうれしいよ」

ややあって。

サインペンを片手に、僕らは並んで、サイン本を作る。

一般的に、サインはカバーをめくって側の扉にする。

「カミマツくん、読んだよ【僕心】」

「まじですかっ! ど、どうでしたか……」

フッ……と白馬先生は前髪を格好よく書き上げる。

「完敗だ」

すがすがしさをじる笑みを浮かべながら、先生が両手を挙げる。

「見事の一言だった。あれは歴史に名を殘すレベルの超傑作だ」

「あ、ありがとうございます! 先生に言ってもらえると……超うれしいです」

尊敬する作家に褒めてもらえたぞっ!

やったー!

「ウェブ版からだいぶ手直ししているのだね」

「はい、ウェブ版から作品を好きになって本を買ってくれた人たちにも喜んでもらいたかったんで、頑張って手直ししました」

「素晴らしいプロ意識だ。さすが我がライバル。若いのに大したものだ」

「いや、僕なんてまだまだですよ」

「本當に謙虛な男だね君は。とても好が持てるよ……って、あれ?」

ふと、白馬先生が目を丸くする。

「君……サインは?」

「え、終わりましたけど……?」

本を10冊ごとに山を作って並べる。

「ちょ、ちょっとみせてくれたまえ」

「いいですよ」

白馬先生はサイン本をとって、パラパラめくる。

「信じられない……もう終わって居るではないか……1000冊あったのだよ?」

愕然とした表でサイン本の山を見やる。

「なんというスピード……そしてサインのクオリティ……見事だ」

「そ、そうですか……あはは、照れるなぁ」

「私なんてまだ100冊だよ。普通サイン本は1冊作るのにかなり集中力がいるというのに、君は片手間でここまでのものを作るなんてね。……さすがだ」

くっ……! と白馬先生が顔をしかめる。

「しかもサイン本、僕は200冊頼まれてて、君は1000冊……人気の差をじざるを得ないね」

サイン本は、普通の本と違って、専門店で買い取りになる。

だから、下手したら大損する可能があるわけだ。

ゆえにサイン本を何冊作るかは、慎重に決められるんだって。

「ぶしつけだとは承知の上で聞くけど、カミマツくん、初版は何部だったのかね?」

初版とは、最初に何部本を刷る(作る)かのことを言う。

僕が部數を答える。

白馬先生が目を剝いて、聲を震わせた。

「……私の初版の5倍か。さすが、超人気売れっ子作家。だが、納得だね」

先生は手を止めてスマホを取り出す。

ウェブブラウザを立ち上げ、OurTUBEのページを開く。

それは先日公開された、僕心の宣伝用短編アニメだ。

「OurTUBEの急上昇ランキング連日1位を取っただけじゃなく、再生數は數日で億を超えた。この絵で、このプロモーションで、容で……売れない方が逆におかしい」

ふぅ……と白馬先生は重くため息をつく。

「まさかこんな化け作品と発売日が同じとはね……參ったよ」

白馬先生の新作も7月発売なのだ。

「編集部の意図としては、私の新作は咬ませ犬だろうね」

「そんなことないですよ! めっちゃ面白いじゃないですか先生の新作!」

「はは……ありがとう。でもねカミマツくん。わかっているのだ。君の作品が私のより優れてるということをね」

ぐっ……と先生が悔しそうに歯がみする。

「だがね……私は負けるつもりはないのだよ!」

が曇っていたのも一瞬のこと。

白い歯を輝かせながら、不敵な笑みを浮かべる。

「確かに容では君に遠く及ばないかもしれない。しかし! この新作は、イラストレーターや編集、多くの人たちが死力を盡くして作ってくれた。この本が世界最高の本だと私はを張って言える!」

ビシッ! と先生は僕に指を突きつける。

「私たちの本は……君に決して負けない! 勝負だカミマツ先生!」

「勝負って……売り上げで勝負ってことですか?」

「うむ。どちらがより多くの本を売れるかのバトルだ……!」

なんだろう……すごい、年マンガっぽいぞ!

「わかりました。僕だって負けません!」

こうちゃんが、由梨恵(ゆりえ)が、アリッサが……多くの人たちが全力を盡くしてくれた。

確かに白馬先生の本にも思いが込められているだろうけど、僕の本にだって、たくさんの人の努力の結晶が乗っているんだから!

「ふっ……ライバルとの直接対決、燃える展開だね。悪いが、私は決して負ける気はないよ」

と、そのときだった。

「た、大変ですよカミマツ先生ー!」

會議室にってきたのは、擔當編集の芽依(めい)さんだ。

「あ、お疲れ様です。サイン本全部終わりましたよ」

「そんなことより大変大変!」

なんだろうか……? と僕らは首をかしげる。

「重版が決まったよ!」

「「は……?」」

突然のことに、何を言ってるのかわからなかった。

「め、芽依さん? 重版って……まだ発売日じゃないですよね?」

「そう! 発売前の予約の段階で、こちらの想定している數を大きく上回ったの! だから急で重版することになったの! しかも初版と同じ數!」

ぶー……! と白馬先生がを吐いて倒れる。

「せ、先生! 大丈夫ですか!」

倒れ伏す白馬先生を抱き上げる。

「わ、私の初版の……10倍……だと……ば、化けものめ……がくん」

「せ、せんせー! せんせぇええええ!」

がくがくと揺すっても、白馬先生は微だにしなかった。

「ちょっと芽依さん、空気読んでくださいよ!」

「何かしたっけあたし?」

初版の時點で10倍の差をつけられていると知って、先生はショックをけてしまったのだろう。

「ふ、ふははは! ふははははははぁ!」

突如として先生が高笑いをする。

「見事だ……さすが神作家! 圧倒的な実力の違いを痛させられたよ! しかし……!」

ぐっ、と白馬先生は立ち上がる。

椅子に座ると、サイン本作を始める。

「勝負はまだ始まっていない。私が負けを認めぬ限り、負けはない……!」

丁寧に丁寧に、先生がサインを書き続ける。

すごい……さすがプロ作家。

どんなときでも仕事を投げ出さないその姿勢……立派だ!

「あ、カミマツ先生。サイン本追加で2000冊ね。もう専門店からじゃんじゃん注文がってきて困るのよー! あ、予約特典のタペストリーも作るってさ!」

ドサッ……!

「は、白馬先生! しっかり! 気を確かに! 先生! せんせぇえええええええええええええい!」

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