《【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】》35話 キャくそ野郎は上手く行かず苛立つ
上松(あげまつ) 勇太の新刊が、そろそろ発売されそうになっている、一方その頃。
クラス一のキャでイケメンこと中津川(なかつがわ)は、ある一つの問題を抱えていた。
現在、勇太達のクラスは、育館でバスケの授業中だった。
クラスでバスケの試合をしている。
「きゃー! 中津川くーん!」
「かっこいいー! すてきー」
長い手足に甘いマスクの中津川は、ボールを持って走るだけで、子達からの黃い聲援をける。
だが、中津川はギリッと歯がみした。
その原因は、単純明快。
「…………」
大桑(おおくわ) みちるが、こちらに全く関心がなさそうなことが、気にらない。
中津川は先日から、みちるに何度もアプローチしている。
だが、まるで彼はなびかないのだ。
授業中、彼は中津川に熱い視線を送っていたことはわかっていた。
好意があることは明白。
だからみんなでカラオケへ行ったあの日、こちらから【わざわざ】聲をかけてやった。
しかし拒まれてしまった。
ならばと思って……今度は一芝居打つことにした。
自分のパシリであるチンピラ達に、みちるを襲わせたのだ。
そこを華麗に助ける算段だったのだが……結果、失敗。
「(クソッ……! ムカつく……)」
中津川はバスケットボールを、スリーポイントラインから放つ。
シュッ……! とリングをボールが潛ると、子達が目を♡にしてぶ。
「…………」
だが……やはりみちるはこちらを見ていない。
「…………」
あのカラオケの日から今日まで、何度も中津川はみちるにアピールし続けた。
だが何度も何度も追い払われる。
そしてそのうちに、とある一つの事実に気づいた。
「上松……」
そう、あろうことか、クラスでも地味で目立たない、キャの年、上松(あげまつ) 勇太のことを彼はジッと見ているのだ。
數多くのの心を弄んできた中津川だからこそわかる。
あのは、上松勇太に惚れている。
「(なんでだよ……なんで、あんなクソキャにおれが負けなきゃいけねえんだよ……!)」
中津川は今まで、に一切不自由したことがない。
イケメンで高長。
そして何より、彼の父親は、【とある超有名出版社】の社長。
ようするに中津川家は、かなり裕福な家庭と言える。
「(おれはしいと思ったものは全部手にれてきた……あのみちるもおれのもんだ。だのに……上松 勇太め!)」
中津川の苛立ちは、みちるに振られるたび募っていった。
「(……諦める? バカ言え。このおれが狙った獲(おんな)を見逃すわけねえだろ! どんな手を使っても必ず手にれてやるからな……みちるぅ~……)」
そんなゲスな考えをにめていると、クラスの子達はまるで気づいていない。
と、そのときだ。
「上松! パス!」
「え……? わっ……!」
勇太にボールが渡ったのだ。
そう、今はバスケの練習試合中。
中津川の対戦相手のなかに、勇太がいたのだ。
「(……よっしゃ。鬱憤晴らしてやる)」
にやりと心で笑い、中津川は勇太に近づく。
ボールを奪うフリをして、強く當たりをする。
「ぎゃっ……!」
どしんっ、と勇太が餅をつく。
ディフェンスファールを取られて、試合が中斷する。
「すまねえな、上松(あげまつ)」
「う、うん……」
転がっているボールを追う勇太。
その手を、ぎゅーっと、中津川が踏みつける。
「つっ……!」
「……あんま調子のんなよ、クソキャ」
誰かに気づかれる前に、ぱっ……と足を離す。
「ゆ、勇太! 大丈夫なの!?」
みちるが心配そうな表を浮かべて、勇太に近づく。
「う、うん……大丈夫」
ホッ……とみちるが安堵の吐息をつく。
だが表を一転させ、中津川に怒りのまなざしを向けてきた。
「ちょっとあんた! なに勇太に酷いことしてるのよ!」
みちるが本気で怒りをあらわにしている。
それは馴染みである勇太を思うがゆえにだ。
……それがまた、中津川にとっては腹の立つことだった。
「(てめえはおれのだろうがよぉ! ったく、なんでこんなダセえくそ野郎なんかを……くそが)」
しかし人目があるため、イケメンの振りをする。
「ぶつかったのは事故だって」
「そのあと勇太の手を踏んだじゃない! あんた、勇太がもし骨折でもしたら、あんたどう責任とるのよ!?」
みちるの発言容に、しかし中津川は首をひねる。
馴染みがケガしたかもしれない、だから怒るのはわかる。
だがなぜここまで激怒するのか……。
答えは簡単だ。
勇太はカミマツ。言わずと知れた神作家だ。
彼の手から生み出される語は、巨萬の富を生み出す、まさに【金を生む手】。
そんな手が骨折でもしたら、どれだけ多くの人や企業が迷するか。
だが中津川は、勇太=カミマツだと知らない。
だからこそ、みちるの怒りが不思議でならない。
だが往々にして疑問に対して人間は、自分で勝手に答えを用意してしまうものだ。
つまり……中津川は、こう考えたのだ。
「(……わかった。そういうことか。みちるのやつ……このクソキャと付き合ってるのか!)」
そんなふうに誤解してしまうのも無理からぬ話だ。
あまりにみちるのリアクションが過剰だったのは、自分の人であるからとなれば合點がつく。
「(なるほど……わかったぜ。こうなったら強引にでも、奪ってやるぜ)」
★
バスケの授業が終わり、大桑 みちるはボールを育倉庫に戻しに來た。
育當番だった彼が作業していた……そのときだった。
がちゃり……!
「え?」
「よぉ、みちるぅ~」
そこにいたのは、中津川だ。
後ろ手に扉を、そして鍵を閉める。
「な、なによ……」
にじり寄ってくる中津川に、生理的な嫌悪を覚える。
彼からは隠しきれない邪悪なオーラと、そして汚らしいをじた。
「なぁ、おまえ……上松(あげまつ)と付き合ってるんだろ?」
何を言ってるのだろうか、こいつは……?
みちるは困する。
だが同時に、辛い気持ちになった。
「……付き合えるわけ、ないでしょ」
もはやみちるは、勇太にとってただの馴染みでしかないと、諦めていた。
彼のことを振ってしまい、しかも彼の周りにはたくさんの魅力的な子がいる。
もはや彼の心にミチルの座る席は殘ってない。
だから、付き合ってるのだろうと言われても、見當違いも甚だしいことだった。
「とぼけなくてもいいぜ。見てりゃわかる。てめえの目は上松のことしか見てない」
そう、諦めたとは言っても、そう簡単に割り切れるものじゃないのだ。
に抱いた、勇太への好意。
これは決して消えることがない。たとえ、彼の心が自分に向いてなくっても……。
「……だったらなによ」
「なぁ、あんなやつはやめて、おれと付き合えよ」
……いつだかのカラオケでの続きのように、中津川が一歩一歩近づいてくる。
だがあのときよりもさらに、自分の中にある獣のようなを隠し切れていなかった。
彼の目は、完全にみちるの大きなと、らしいのラインしか見ていない。
「あんなクソチビよりおれの方がイケメンで、長も高い。有株だろ?」
……確かに、見た目の點においては、勇太よりこの男の方が優れているかも知れない。
だが、それだけだ。
「しかもよ、おれの親父、超有名な出版社につとめてるんだぜぇ?」
彼の口から出てきたのは……。
「あのデジマスをだしてる、出版社の社長なんだぜぇ? おれの親父」
……つまり、カミマツの所屬しているレーベルの、社長が中津川父だということ。
だとしたら……。
「……バカでしょ、あんた」
そう、バカすぎる。
よりにもよって、その會社において、最も利益を出している神作家を……あろうことか傷つけたのだ。
他でもない、出版社社長の息子がである。
「ああ!? んだとてめえ」
中津川はカミマツ=勇太だと知らない。
だからみちるが嗤った理由がわからない。
「今のうちに勇太に謝っといた方が良いわよ。でないと……大変なことになるわ。斷言してもいい」
「うっせえなぁ! おれに命令すんじゃねえ……!」
中津川が怒りにまかせて、みちるを毆り飛ばしてくる。
金持ちのボンボンだ、きっと今までチヤホヤされながら育ったのだろう。
きっと世界は自分を中心に回っているとでも思っているのだろう。
世界で一番自分が偉いのだろうと勘違いしているのだろう。
……稽この上なかった。
「いいからだまっておれのになりやがれ!」
「死んでもごめんよ!」
みちるの腕を摑んで、育マットに押しつける。
「いやっ! 離して……!」
「うっせえ黙ってろ!」
中津川は、半ばムキになっている様子だ。
どんなも手にれてきたというプライドが、みちるをなんとしてでも手にれようと、彼を急かしているのだろう。
「大丈夫、おれ、自信あるんだぜぇ。おれなしじゃ居られないにしてやんよぉ……」
どうやら無理矢理犯して、屈服させようとしているようだ。
心を我がにできないならば、で言うことを聞かせようとする。
男の風上にも置けない所業だった。
「いや! 助けて! いやぁ!」
「へへ……生きのいい……すぐにヒイヒイ言わせてやるよぉ……」
みちるの著をずりあげて、にれようとしたそのときだ。
「やめろー!」
突如、何かが勢いよく飛んできて、中津川の顔にぶつかったのだ。
「へぶっ……!」
完全に油斷していたところに、衝撃が加えられた。
中津川は大きくよろける。
「勇太……!」
育倉庫のり口にいたのは、上松 勇太。
彼は近くにあったバスケットボールを投げて、中津川を撃退したのだ。
「みちるに……僕の馴染みに、何するんだバカヤロウー!」
勇太は完全に、中津川に敵意を向けていた。
彼の馴染みを無理矢理手にかけようとしたのだ。
……この瞬間、中津川は、上松勇太(カミマツ)の不興を買ってしまった。
彼の父の出版社において、莫大な利益をもたらす神作家の怒りを、買ってしまったのである。
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