《【コミカライズ&電子書籍化決定】大好きだったはずの婚約者に別れを告げたら、隠れていた才能が花開きました》アルバートの想い
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シルヴィアは、流れていた曲をふわふわと夢見心地でアルバートと踴り終えると、彼に腕を取られたまま歩き出した。アルバートが、シルヴィアを見つめてにっこりと笑った。
「シルヴィア、君のダンスはとても上手だね。まるで風に舞う妖のようだった。君の相手ができて、嬉しかったよ」
今までダンスを褒められたことのなかったシルヴィアは、驚きに頬にが上るのをじながらアルバートを見上げた。
「それは、アルバート様のリードがお上手だったからですわ。私はほとんど、アルバート様にを任せているだけでしたから。……私も、アルバート様とダンスをご一緒することができて、とても楽しかったです」
アルバートは、再度シルヴィアにしい微笑みを浮かべると、そのまま彼を連れて、大広間から続くバルコニーへと向かって行った。賑やかなざわめきで満たされた大広間とは対照的に、広々としたバルコニーには誰も人がおらず、ひっそりと靜まり返っていた。
バルコニーに出た二人の頬を、涼やかな風がでていった。月の明るく輝く晩で、バルコニーは淡い月に照らされていた。夜空を埋め盡くすように、月明かりに隠れて微かに星々が瞬いていた。
「シルヴィア」
シルヴィアの瞳を、アルバートが真剣な面持ちで見つめた。空に輝くしい月よりも、彼の金の瞳の方が惹き込まれそうに綺麗だと、シルヴィアはそうじていた。
アルバートのことを見つめ返したシルヴィアに、彼は続けた。
「俺の気持ちには気付いているかもしれないが、君のことが好きなんだ。……君に初めて出會った時から、ずっと忘れられなかった。君と再會してから、君への想いを再認識したよ。君との時間を重ねる度に、ひたむきで努力家で、優しくて健気な君の姿に、さらに心惹かれていった」
夢を見ているようだと思いながら、シルヴィアはアルバートに向かって口を開いた。
「私も心からお慕いしております、アルバート様。私の気持ちにも、きっと気付いていらしたと思いますが……」
アルバートはくすりと笑うと、シルヴィアのを優しく抱き寄せた。空気の冷え始めていた夜空の下で、アルバートから服越しにじられる溫をおしく思いながら、シルヴィアは彼の言葉に耳を澄ませた。
「君は可いね、シルヴィア。君は、すぐに顔にも、そして君が纏うその溫かな力にも、が素直に現れてしまうようだからね」
「……!」
(やっぱり、アルバート様は私の気持ちを知っていらしたのね……)
恥ずかしさにすっかり頬を染めたシルヴィアがアルバートを見上げると、アルバートは彼の髪をらかくでた。
「君には謝しないといけないね、シルヴィア。……俺も、君の気持ちが俺に向いていることを知らなければ、教え子である君に想いを告げる訳にはいかなかったからね。ほとんど確信に近い覚を持ってからも、なかなか君に言い出すことができなかったのだが……君を困らせて、以前に幾度か君が見せたような悲しそうな顔をさせたくはなかったんだ」
シルヴィアは、彼を気遣うアルバートの溫かな気持ちに、の中が熱い想いで満たされるのをじながら、彼のにぎゅっと両腕を回した。
「……大好きです、アルバート様」
アルバートはシルヴィアを抱き締め返してから、彼の顔を覗き込んだ。
「教え子と教師という関係である以上、俺は君との関係を曖昧なままにしておきたくはないんだ。もちろん、君の気持ちを確認した上でということになるが……」
息を飲んだシルヴィアに、アルバートは続けた。
「俺は生涯、君のことを一番近くで守っていきたいと思っている。君は俺に、これからずっと君の側にいることを許してくれるかい?」
シルヴィアはアルバートの言葉に目を瞠ると、大きく頷いてから、彼を涙の滲む瞳で見上げた。
「あの、それは、つまり……」
アルバートは、シルヴィアに向かって微笑みを浮かべると頷いた。
「ああ、そうだよ。シルヴィア、君が魔法學校を卒業したら、俺と結婚してくれないか?」
「はい、私でよろしければ、喜んで……!」
シルヴィアは、思わず涙が溢れた顔を両手で覆いながら、ぽつりと呟いた。
「私、幸せ過ぎて、まるで夢を見ているような気がします……」
アルバートも嬉しそうに笑いながら、シルヴィアに向かってそっとその手をばした。
「これは夢ではないよ、シルヴィア。君の顔を見せて?」
アルバートは、シルヴィアの両手を頬から優しく離すと、彼の瞳から溢れる涙をそっと指先で拭ってから、彼をふわりと高く抱き上げて、彼のごと一緒にぐるりと回した。
「ほら、君は笑顔が一番可いよ」
シルヴィアは、アルバートの力強い腕に抱き上げられ、回転するに冷んやりと心地の良い夜風をじて、確かにこれは現実なのだと思いながら、アルバートを見つめてくすくすと笑った。
(魔法學校を卒業してからも、ずっとアルバート様のお側にいることができるなんて……)
シルヴィアは、信じられないような奇跡が起きたことに、きっと彼をどこかから見守ってくれているのであろうの霊に、心からの謝をじずにはいられなかった。
シルヴィアが、アルバートにそのをバルコニーに下ろされた時、彼の背中側から高い聲が聞こえた。
「アルもシルヴィも、こんな所にいたんだ……!」
駆け寄って來たユーリと、彼に続いて歩いて來たクリストファーを見て、アルバートとシルヴィアは、頬を染めながら視線をわした。
二人の様子を見たクリストファーは、何かを察したように楽しげに笑うと、順番にアルバートとシルヴィアの顔を覗き込んだ。
「何だか雰囲気がさっきと変わったみたいだけど、無事に進展したのかい、アル?」
アルバートは、シルヴィアが頷くのを確認してから、クリストファーに口を開いた。
「シルヴィアに、結婚の申込みをけてもらったんだ。……彼の魔法學校の卒業を待って、結婚するつもりだ」
クリストファーは満面の笑みを浮かべると、ひゅうっと高く口笛を吹いた。ユーリは、きらきらと目を輝かせて、にっこりと二人を見上げた。
「わあ、本當におめでとう! よかったあ。アルもシルヴィも、お互い同じ気持ちでいるんだろうなっていう気はしてたんだけど、僕の大好きな二人が幸せそうで嬉しいな!」
(まだこんなにいユーリ様にまで、気付かれていたなんて……)
真っ赤になったシルヴィアに向かって、クリストファーがユーリの言葉を継いだ。
「私も、ようやくアルの想いが葉ったとわかって、実に喜ばしく思うよ。……父上と母上のところに案しようと思って來たのだが、せっかくの二人の時間を邪魔してしまって、すまなかったね」
***
國王と王妃は、國を支える存在とも言える霊の穢れをシルヴィアが浄化したことについて、心からの謝意を伝えると共に、彼が以前ユーリを助けたことについても丁寧に禮を述べた。シルヴィアがの霊セレーネに選ばれたと思われることについても、彼に與えられた稀な加護に、大きな期待を寄せている様子が窺えた。
ユーリが、結ばれたばかりのシルヴィアとアルバートの結婚の約束についても、國王と王妃の前でにこにこと話したために、喜ばしい報告に目を輝かせた彼らの前で、シルヴィアはその頬をまた赤く染めることになったのだった。
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