《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》3 ⭐︎

「リアナ、どうしたのじゃ。ぼんやりして」

私はその言葉でハッと意識を戻した。いけない、工房から出てきた時からずっと考え事で上の空だった。せっかくアンナが作ってくれた夕飯なのに、失禮な態度だったな。

その一瞬で反省して、すぐ「何でもない」と言おうとしたのだけど。

「何か心配事でもありましたか?」

「リアナちゃん、疲れてるんじゃない? 注文すごいってるらしいし……5人派遣してもらったって言ってもリアナちゃんと同じことができる訳じゃないから教育の仕事まで増えちゃってる狀況でしょ?」

「そうなのか? 大丈夫か? リアナ」

気遣わしげに私を見る3人の視線に思い直した。ああ、そうだ私の悪い癖だ。黙っていても改善する狀況ではない。きっと、私が隠したらみんな悲しむと思う。

相談してみよう。私の代わりにどうするか決めてしいとかではないけど、他の人の視點ではまた違った意見も出るかもしれない。現に私が考えた方法では今のところ上手く行ってないんだし。魔力作を補助する魔道を作ると決めたけど、何か他にいいアイディアが浮かぶかもしれない。

「……実は、新しく雇った錬金師の方達が、まだうまく人工魔石を作れていなくて……」

「え……それじゃあもしかして、今製造してるのは完全にリアナちゃん一人って事?」

「もう半月は経ちますよね……? それでもまだリアナ様のお力になれていないとは……差し出口になってしまいますが、錬金師ギルドの方へ人材の質について問い合わせた方がよろしいのではないでしょうか」

「いえ! そんな……みなさんは大変真面目に製造技につけようと取り組んでくれてるんです……! 悪いのは、まともに運用できる製造マニュアル一つ用意できていない私のせいなので……!」

なんだか不穏な方向に話が進みそうで慌てて止める。そう、ちゃんとした作り方を示す事ができれば問題なく工房としてけていたのだから。

そこで私は端的に今起きてる問題を述べた。商品になる人工魔石を作るレベルの魔力作をにつけるのにもうしばらくかかりそうな事、それをちょっと待てないので魔力作の補助ができる魔道を作ろうと思っている事を話した。

確かにまだ商品を作れる魔力作は出來ていないのだが、みなさん最初に比べれば上手くなっているのだから。きっと私がもっと上手い教え方を思いついていればもう戦力になっていたので彼らは悪くないという事もしっかり主張する。

それに、このところは納品期限が迫ってる分を製造するのに一杯一杯で、自主練習ばかりしてもらっていたし私が最後に確認した時よりは上達していると思う。

「……分かりやすく教えるって、どうしたら出來るんだろう……」

悩んだ末にポツリとつぶやいた言葉に3人が反応する。

「魔力作は俺も得意ってわけじゃないけど、……普通に水に魔力流す練習しか知らないなぁ」

「魔法使いの訓練は花びらの水を使うらしいですね。私は、魔法は火種くらいしか起こせないので想像するしかないのですけど、やはり練の技が必要なのでしたら練習あるのみではないでしょうか」

「琥珀は天才じゃから鍛錬らしい鍛錬なんてした覚えはないぞ。気が付いたら使えるようになっとった」

琥珀の意見は別として、やはりどの地域も魔力作の練習なんて大差はないのか。語のように、一つのアイデアで萬事解決なんて上手い話はなさそう。

「途中で必要な魔力作が上手く教えられていなくて……あとしだと思うんですけど。私は魔師でもあるから元々魔力作は苦手ではないので、難しい作だとは認識してなかったんです。他はれる順番を守って混ぜるだけなので正直振って混ぜる力があれば誰でも出來るんだけど……」

「む? 力がいるなら明日は琥珀が手伝ってやるぞ!!」

「ふふ、ありがとう、琥珀。じゃあせっかくだからお願いしようかな」

琥珀もこの近辺に生息している魔への対応や、解の仕方も覚えてきたと聞いているので長をじて嬉しくなる。そうだ、ついでに錬金師ではないけど魔法や魔に長けている人なら作れるかどうか試してみよう。當然琥珀は資格を持っていないが、売りにしなければ問題ない。

攪拌などの単純作業は無資格者にお手伝いしてもらっても大丈夫だし。自分から率先してお手伝いもするようになるなんて、出會ってすぐの頃は想像もできなかったな。

「リアナちゃんの『難しくない』にはかなり議論の余地が殘るけど。とりあえず今教えてる人達ってあとどれくらいで出來るようになりそう?」

「それが私にもちょっと……元々錬金師になる人は大抵魔力作が苦手だから、とは言われました。もっと分かりやすく教えられたらいいんですけど……」

「ああ確かに。錬金師は魔帯素材の加工とか、魔回路書いたりのプロだけどねぇ。魔力作が上手い人は魔師になっちゃうよね」

魔力作……私は錬金作業でも使うのだが。なので彼らの言う「錬金師だから魔力作なんてできない」という発言を聞いてもよく分からなかった。そもそも人工魔石の製造工程で「できない」と言う聲を聞くまで他の人も自分と同じように魔力作を使って錬金作を行っているのだと思っていたから。

そうすると、ほとんどの錬金師は魔力作しないで魔帯質の加工をしたり魔回路書いたりしてるって事よね。逆にそちらの方がすごいと思うのだが、一どうやっているのだろう。

私は食事を続けながらまた上の空になってしまいそうになる。

私も魔力作は苦手だったがやっているうちにどうにかこうにか「得意ではないけど使いにはなるレベル」にはなったから、今は苦手と言いつつも他の人もすぐ習得できると思っていたんだけど……。

「うーん……俺は錬金師の資格ないから暴な事言っちゃうけど。この件については誰でも教わっただけで出來るようになる方法っていうのは……存在しないんじゃないかな? 頑張って習得してもらうか、魔道で補えるならそれを使うしかないと思う」

「フ、フレドさん、あまり過保護な発言は良くないと思います……! 自分で分かってるので! もっと良い教え方があるんだろうなって……」

流石に間違った教え方はしていないとは思うんだけど。でも最適解ではないんだろうな。

「いやぁ、理屈を教わっただけじゃ出來ない事ってたくさんあるじゃん? もっと良いマニュアルが用意できればってリアナちゃんは思ってるみたいだけど……例えば楽譜があれば誰でもその曲が弾ける訳じゃないでしょ? いくら教え方が上手くても教わったばかりの素人がいきなり楽譜通り演奏ができるようにはならないんだよ」

そう言いながらハッとした表を浮かべたフレドさんは、「まぁリアナちゃんは教わってすぐ出來るようになってたのかもしれないけど、普通は何回も…何十回、何百回も繰り返して練習しないとにつかないから」と説明を加える。

いや、もちろん私だって、すぐに習得した技なんて無いですけど!

「苦手って言うか、中には練習しても出來るようにならない人だっているだろうし」

「そうじゃな。琥珀もいまだにアンナみたいに薄くキレイに芋が剝けん」

「はは、たしかに。琥珀が剝くと一回りはちっちゃくなっちゃうからな。でも最初は今よりさらにもう一回り小さくなってたから、だいぶ上手くなったと思うよ」

「ほんとか?!」

「うん、だからリアナちゃんも……他の人は技につけるのにリアナちゃんが考えてるよりずっと長い時間がかかるって考えないとだと思う」

完璧なマニュアルがあったとしても技が伴わなければ作れない。その発言に私の中の意識が変わった。つまり……お父様みたいに上手く教えられる、お父様に教わった時の私みたいにすぐ習得するって……慢心していたんだ、恥ずかしい。

自分だけでモダモダ考えるんじゃなかったな。魔力作は引き続き訓練を続けてもらう必要があるけど、な魔力作を可能とする方法を早急に用意しないと。

なら明日まずやる事は魔道作りだ。錬金師ギルドで參考にできる技について一通り、朝一番で調べよう。

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