《【書籍化・コミカライズ】三食晝寢付き生活を約束してください、公爵様》6.それは告白です。いや、違う。真実です。

一番の上座には、この家の主であるローデシー侯爵が座り、その右手にはアンドレ様。

わたしはローデシー侯爵の左手に座り、その隣はミシェルだった。

ロザリモンド嬢はアンドレ様の隣に座っている。

というか、ミシェルが完璧に著飾っていて、ものすごく気になった。

「では、再會と新たな出會いに」

グラスを掲げて全員で、乾杯をすると晩餐が始まった。

主に、ローデシー侯爵とアンドレ様が楽しそうに話している。

「私は、本當に連れてくるとは思っていなかったよ」

「約束は守らないとね、クロードがうるさそうだからこっそり連れてきたんだから、謝するように」

あ、拉致られてるのね、わたし。

と、どうでもいいことを考えた。

確かに旦那様(・・・)に対してはこっそりだったかもしれないけど、それ以外の人たちの前では、堂々とわたしを連れ去っていた。

旦那様に隠す気ないんじゃないかと思った。

きっと今頃旦那様の元に報告は屆いているだろうし、一どうするつもりなんだか。

「クロードが追いかけてきたら厄介だから、明日には首都に向かうけど、そちらはどうする?」

「私もせっかくだから一緒に行こうかな? 人が三人もいるのに、獨り占めはよくないな」

「みんな子供みたいなものだよ。一人は、男の子だけど」

さらりとネタバレするのやめてほしい。

相手は知ってるのかもしれないけど、知らなかった場合、裝趣味の変人を護衛にしてる変わった扱いされるんで!

「へー、そういえば確かリーシャの護衛に、男の子いたよね?」

目ざとく見ていたようで、ミシェルの存在はあっという間に明らかに。

「君、完璧だね」

心したようなローデシー侯爵のありがたくないお言葉に、ミシェルがそれはそれは綺麗にほほ笑んだ。

知らない人が見れば、くらっときそうなぶり。

「ありがとうござます。わたくししか専任護衛がいませんので、裝できた方が何かと便利なんです」

あ、わたしのために裝してると言ってるけど、単なる趣味じゃないの。

どうしてわたしに責任押し付けるようなこというかな?

でも、確かにミシェルの言っていることも一理ある。というか、本當は専任護衛は増やさないといけない。

ミシェルにばかり負擔がかかっているのは分かっているから。

々忙しくて後回しになっていたけど、本格的に探さないと。

旦那様にも言われているし。

「似合ってるからいいと思うな。もし本當になら、口説くことも考えてたかも」

むしろ、わが國ではミシェルを本気で口説いていた男は相當いますよ、と教えてあげた方がこの場を盛り上げられるのか真剣に考えた。

言わなかったけど。

「もちろん、そちらのも素敵だよ。社界ではきっと幾人も求婚者が列をなしているのが想像できるとも」

「わたくしはそれほどでもありませんわ」

それが事実か謙遜なのかはわからない。

ただし、ロザリモンド嬢は基本的に噓は言わないので、本人的にはモテてないだろうと思う。

しかし、外から見れば十分モテている可能はある。

なにせ、彼はミシェルとはまた違った貌を持つ

ミシェルが月なら、ロザリモンド嬢は太のような熱量がある。

実際、興味があることへの熱量はすごいので、時々ついていけない。

「でも、わたくしもミシェルもリーシャ様の貌の前ではかすみますよ」

「そんなことは……」

素で言われると、どう反応していいかわからない。

「私は三人が三人とも違ったを持っているから、優劣をつけにくいな」

にこにこと笑っているローデシー侯爵は、ふいにわたしに顔を向けた。

「そうそう、聞きたかったんだけど、リーシャはどうしてクロードと結婚したの?」

一瞬、気管にものがつまりそうだった。

いきなりの気構えのない質問に、言葉が出なかった。

二人の馴れ初めとか、聞くなら男側の旦那様にしてほしい。今、いないけど。

「ええ、と……」

ただ都合がよかっただけです――……なんて言えるわけない。

「なんでも、結婚特別許可証を発行してもらっての結婚だって? そんなに急ぐようなことあったの? 私はそれを聞いた時、一瞬妊娠を考えてしまったよ」

「それは、絶対に違います!」

「今は見ればわかるよ。それに、クロードがそんなことするはずないこともね」

ローデシー侯爵の探るような雙眸に、わたしは気が引き締まった。

ここで下手なことを言えば、まずい気がする――そんな意味のない直が働いた。

「その……、実はクロード様がお忙しくて、なかなか時間もとれないようですので、わたくしの方から提案しました」

噓だけど。

「ふーん……、でもに取ったら結婚って一生の問題でしょう? 華やかにやりたいとか希はなかったの?」

「わたくしは特に。ただ、クロード様が無理する方が嫌だったので」

夫を立て、夫のを案じる良妻賢母のようなことを言ってみる。

ついでに、儚く笑みを浮かべてみた。

隣でわたしを見てるミシェルの口元が若干引きつりそうになっていても、わたしは気にしない。

どれだけ噓を並べてても、ばれなければ問題ない。

「むしろ、クロードが言い出しそうだけどね」

そういいだしたのはアンドレ様だ。

さすが父親。

よく息子のことを理解しているようで。

「クロード様はわたくしのことを気にかけてくださっていましたが、わたくしも早く家を出たい事がありまして」

「へー、そうなんだ」

ローデシー侯爵が目を細めた。

何か疑っているようなじだ。

ただ、これは本當の事。

実家と不仲というのは、よく知られているのだから、疑われても痛くもかゆくもない。

家を出るには結婚するしかなかったのだから、早い方がよかったというのは、わたしにも當てはまる。

「リーシャは苦労してたんだね、でも今はクロードがいるから幸せかな?」

アンドレ様は何の疑いもなく、わたしに尋ねた。

幸せかどうか――、二者択一であるなら、間違いなく幸せだ。

のびのびと過ごしているし、旦那様との仲だって悪くない。

最近は、ちょっと旦那様とは微妙な関係だけど、それは自分のせいでもあると分かっているので、仕方なくれている。

実は、旦那様とし距離を置けたのは、ほっとしていた。

「クロード様にはよくしていただいております」

直接的な答えを避け、ありきたりに返すと、アンドレ様ではなくローデシー侯爵の方が不満そうだった。

「クロードと不仲なら、私が助けてあげようか?」

「あの、不仲ではないんですが……?」

「顔が、そうは言ってなかったけど? 離れられてほっとしてます、って顔してたかな」

顔に出しているつもりはなかった。

もしかしたらカマをかけられている可能もある。

「そうですね……、クロード様は顔がすごく整っているので、時々疲れるんです。人は三日で飽きるとは言いますが、形は三日経っても飽きないので、見るたびにが高鳴って苦しいんです」

そう告白したとたん、全員の顔がぽかーんとなっていた。

ローデシー侯爵やアンドレ様だけでなく、ロザリモンド嬢やミシェルまでも。

ちょっと、全員何かおかしなものでも食べた? って顔するのやめてくれませんか?

聞かれたから答えたのに、わたしがおかしいみたいな反応しないでほしい。

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新作『家政ギルドの令嬢は、旦那様の味方です~自分に自信のない旦那様は、とても素敵な男でした~』完結しました。

連載終了してるので、一気に読めます。

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