《【書籍化・コミカライズ】三食晝寢付き生活を約束してください、公爵様》7.ダメだと言ったら、ダメなんです
「なるほど、リーシャはクロードの顔見ると、が高鳴るのか」
にこにこと微笑ましい顔をするのは、アンドレ様。
「新婚っていいねぇ、クロードがこれを聞いていたらどんな顔をするのか気になるよ」
「そうですわね。ここまで堂々と惚気ると、わたくしも恥ずかしくなりますわ」
え? 惚気? 今の惚気になるの!?
むしろ旦那様の顔を見るとが高鳴るって、むしろそれ以外いいところないって風にも聞こえない?
そういうつもりで言ったんだけど!?
まあ、別に顔だけじゃないって、今はだいぶ認めてるけど、それを素直に口に出すのはまだ憚られる。
それこそ惚気だし。
自分でもよくわかってると思う。
「顔と財力、それ以外でいいところは?」
ローデシー侯爵が目を細めて、聞いてきた。
誰が見ても分かるいいところ(・・・・・)ではなく、聞きたいのはおそらく人の目に見えないところ。
格的なところだと思う。
一応結婚をした――的なじで裝ってるけど、実際は違うことをなんとなく見抜かれていそうだ。
下手な言い訳はきっと通用しないんだろうなともじた。
アンドレ様も気になるようで、わたしの方に顔を向けている。
というか、全員わたしの方を見ているので、しかたなく口を開いた。
「……優しい、ところでしょうか?」
優しくないところばっかり見せられていると、ふとした時の優しさが心に響く。
最近は、特に。
「わあ! まさかクロードが優しいなんて口にする人が現れるとは、思ってもみなかった」
「いやー、私も同意見だね。まさか、クロードを優しいと……」
いや、というか無難なところにれたのに、どうしてそこまで驚くのか。
この二人は旦那様の事を、きっとわたし以上に知しているに違いない。
ローデシー侯爵が、目を伏せてワイングラスを手に取る。
真っ赤なワインをクルクル回し、面白そうに笑った。
「夫婦仲が良好なのはいいことだけどね、獨りとしてはクロードにし嫉妬するかも」
へー、獨りか。
モテそうなのに。
「これでも結構から聲はかけられるんだけど、なかなかしっくりくるがいなくてね」
獨至上主義者なのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。
「できれば、自分に最大に利益になりたい人との結婚を考えていたが……、その人はすでに既婚者なんだよ」
「それは……」
殘念と言うのもおかしい気がした。
完全政略結婚を狙っている、と言っている仁に、結婚できなくて殘念でしたね、なんかちょっと馬鹿にしているようにも聞こえる。
「でも、し頑張ってみようかと思い始めてる」
「頑張る……ですか?」
「そのは、どうやら夫君とは仲が良くないらしいんだ。もし離婚――なんてことになったら、アプローチしてみるのもいいかなって」
いや、それはどうなんだろうか。
そもそも、離婚は男よりも側に傷となって殘る。
最大に利益になりたい人と結婚したいと言っているのに、むしろその『離婚』の傷が足を引っ張りそうだけど。
「積極的だね。でも、離婚するまでは手を出さない方がのためだよ? 離婚しないで、仲が改善することもあるからね」
旦那様そっくりな深紅の瞳が、諭すようにローデシー侯爵に言う。
むしろ、余計な事をするなと警告しているようにもじる。
「分かっているさ。余計なことはしない。でも、もしもの時、そのにとって頼るべき存在になりえるための努力位はいいと思わないか?」
それって、するって事でしょうか?
弱っているところに優しい言葉をかけられたら、ぐらりとくるはどれほどいるだろうか。
それが見た目も地位もあるような男から言われたら。
「リーシャはどう思う?」
突然ふられた話題に、一瞬言葉に詰まる。
「ええと……」
一応新婚のわたしに答えづらい質問を投げないでほしい。
いいのではないでしょうか、と言う浮気を推奨しているみたいだし。でも、はっきりと否定するのも違う気がする。
ただし、ここで大事なのはローデシー侯爵が相手を好きではないということ。
あくまでも利益があるから結婚したいと思っているだけなのだ。
これってちょっと側に失禮じゃない?
結婚上手くいってないのに、弱っているところに付け込まれて、それで離婚後アプローチされて結婚したら、実は好きじゃないけど、自分の利益のために結婚したんだって知らされると、ショックじゃないかな。
だって、相手はきっとそれを知らないで結婚するんだろうし。
それとも正直に言うのかな……。
いや、言わない気がする。
騙すことくらい簡単にやってのけそうな雰囲気はある。
でも、側もそれを知っている可能ってあるわけで……。
ちょっとよくわからなくなってきた。
とりあえず、自分に置き換えてみると、ご遠慮したい気はする。
もし旦那様と別れる時があっても、こっちが有責じゃない限りはきちんと謝料払ってくれると言ってくれているし、食うに困ることはないと思う。
ここで一番困るのは、わたしの生まれ故郷の領地をどうするかだけど、そこは旦那様がなんとかしてくれるかもしれない。
とにかく、々考えるとそもそも結婚はしばらくごめんだとなりそうだ。
「わたしは、結婚が上手くいかなかったらすぐに次の結婚への意はわかないと思いますが、人それぞれ事は違いますし、難しいところですね」
他人の事を考えたところで、答えは出ないので、とりあえず自分に置き換えて話してみた。
ローデシー侯爵は軽く頷いている。
「なるほどね。まあ、私もいきなりは難しいと思ってるよ。なくとも、まずは私の事を知ってもらわないといけないしね」
相手のはローデシー侯爵の事をよく知らないようだ。
顔見知り程度でもないような言い方だった。
「でも、人妻の話は々と參考になるね。ぜひ首都に向かう時にもいろいろ教えてほしい」
「それは、ダメ。リーシャは結婚しているんだから、獨男と同乗なんて許さないよ」
アンドレ様がすかさず割り込み、ホッとする。
「別に二人きりにさせろ、なんて言っていないだろう? アンドレも一緒でいいよ」
「ダメ。もしクロードにばれたら、私が殺されるから。クロードは実の親だって関係なく容赦ない男だよ。知っているだろう?」
「犠牲になったら、花ぐらいはたむけよう」
「まだ死にたくないから、ダメ」
えー、わたしこそ絶対に嫌なんですけど。
ミシェルとロザリモンド嬢と一緒の方が気楽だし、なんなら眠くなったら寢られるし。
分高い人と同乗とか、わたしが気を遣う立場じゃない。
肩凝りそうだわ……。
「とにかく、ダメ。頼まれたから會わせただけなのに、余計なことはしないでほしいね」
「すでにクロードは怒り狂っていそうだが、一つ二つ罪狀が増えたところで変わらないだろう?」
「変わるから、ダメ」
アンドレ様は、ひたすら斷りをれて、結局なんとか馬車に同乗だけは免れた。
よかった、本當に。
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