《【書籍化・コミカライズ】三食晝寢付き生活を約束してください、公爵様》10.リーシャとヴァンクーリ

前公爵の名前を本気で間違っていたので、全て直しています。

信じられない話を聞き、納得できるかと言われるとそうじゃない。

しかし、目の前には真実、わたしとそっくりな顔があるわけで……。

「ローデシー侯爵、悪いがリーシャを含めて全員さっぱりよく分からないよ。リーシャがリシェル王妃の子孫――というか族なのはいいとして、どうしてそこにヴァンクーリが関わってくるんだ? それに契約? 一どういうことか詳しく説明してほしいところだね」

「ヴァンクーリとリーシャの関係なら、すぐに面白いものを見せてあげよう」

ローデシー侯爵はさらに奧に進むと、そこには下につながる螺旋階段。

「ここは、裏の山脈につながってるんだよ、今外にはほとんどヴァンクーリはいないが、今までならそこら中に寢そべって勝手気ままにやってた」

薄暗い螺旋階段をローデシー侯爵が先導し降りていく。階段のところどころに外が見える窓があるが、そこからのぞくとあたり一面荒野のような場所が見えた。

アンドレ様がわたしの手をとってゆっくり降りていく。

ミシェルはロザリモンド嬢に腕を貸しているが、利き腕はいつでも剣が抜けるように警戒していた。

階段はすぐに終わり、外に出る。

なかなか見事なほどに何もない。

「見ての通り、何もいない。つい最近までの景を見せてやりたいよ」

でも、なんとなく想像できた。

公爵領にいるヴァンクーリは自由だった。

人にくっついて何か手伝っているようにも見えたが、基本的にのんびり過ごしていた。

「しばらく待ってたら、來るかな……。その間に、一何からはなしたらいいのか……」

「リシェル王妃とヴァンクーリの関係について私は知りたいね」

アンドレ様が気になっていることを遠慮なく聞く。

それはわたしも気になっていたことなので、ぜひ教えてほしい。

「それは、実はよく分かっていない。昔助けた獣が恩返しのためにずっと側にいる、というのが有力の説だけど、本當のところは誰も分からないんだ。そもそもヴァンクーリの生態自が謎に包まれている。契約がその一つだよ」

「契約――というのも、すごく曖昧でよく分からないものですね」

今度はミシェルだ。

「それこそ、口で説明できないね。なにせ、これもよく分かっていないから。呪いに近いのかもしれない。アンドレは何か思い當たることがありそうだが?」

アンドレ様はなぜかし理解を示して、なるほどとうなずいていた。

紙と紙で行う契約ではない、獣との契約など、普通に考えればおかしいことだ。

「リーシャはクロードから何か聞いてる?」

まったく何も聞いておりません。

なくともリンドベルド公爵家の事については、ほとんど知らないと言ってもいい。

むしろ、ロザリモンド嬢の方が詳しいくらいだ。

「古來より、の契約というのものがある。はっきり言えば、今時そんな事を口にすれば嘲笑されるくらいには、語上の存在でしかありえない。でも、あるんだよ実際に」

おとぎ話に出てくるような話だ。

普通は到底信じられない事なのに、アンドレ様が真実であると認め、なぜかぞっとした何かが背に走る。

それはアンドレ様の瞳が、暗く輝いたからかもしれない。

「生きている契約というのは、國の幹にも関わるものばかり。リンドベルド公爵家も、その契約の中で生きているんだよ。この國では、ヴァンクーリとの契約か、なるほどね。なぜヴァンクーリがこの國にしか存在していなかったのか分かったよ」

一人納得しているアンドレ様が、それで? と顔を上げた。

「ローデシー侯爵は何を求めているのかな? リーシャはすでに人妻だよ……何かするのなら、ヴァンクーリに噛みつかれるかもしれないね。遠くからこちらにやってきてるよ」

アンドレ様が、山の上にいるヴァンクーリを指し示す。

數匹のヴァンクーリが、ゆっくりとこちらに降りてきた。全く警戒もなくやってくるので、野生には思えない。

まるで、飼われたのようなじだ。

「これが、契約の威力か……。リーシャの匂いでも嗅ぎつけてきたかな?」

わたしたちの側までくると、まわりをぐるりと回って、わたしに鼻先をそれぞれ押し付けてきた。

どうしていいのかも分からず、とりあえずでると、代するように下がり新しいヴァンクーリが同じように鼻先を押し付けた。

全員でると、彼らは満足したようで、勝手に近くで寢転がり始めた。

その様子を見ていたローデシー侯爵が興したように言った。

「すごい、こんなの初めて見たな。父上でさえこんな風にヴァンクーリは近づいてこないのに」

代々の國王がヴァンクーリと契約を結ぶのだと、ローデシー侯爵が教えてくれた。

そもそも、こんな事を教えてもいいのだろうか。

悪用するつもりはないけど、普通に考えれば悪用されてもおかしくないだ。

「ヴァンクーリが突如としてこの國を離れたのは、母上のせいだと言われてたんだ。正當のない人間が上に立っているからと。この國では、まるで神のような存在だから、彼ら」

言っているのは王太子派の人間。

まあ、何か弱みを握りたいところなのだろう。

「この國を去った彼らが次にどこに向かうのか……、それを調べていたらようやくリーシャ、君の存在を知ることになった。クロードがひそかに結婚してたのは噂で知ってたけど、驚いたよ。君が、まるでリシェル王妃に生き寫しだから」

それはわたしも驚いた。むしろ、驚いたのはこの中では誰よりもわたしだと思う。

まさか他國に己の族がいたとは思ってもみなかった。

ただし、本當に族かどうかはまだ分からない。なにせ、似ている顔は何人もいると言われるくらいだ。

「なんか、疑っていそうだけど、ヴァンクーリの行を見れば誰もがリシェル王妃と同じを持っていると思うだろう」

ここまであからさまに好かれていると、そうなるよね。

ローデシー侯爵までもぐるりとヴァンクーリを見渡し、ふいにわたしに顔を向けた。

「ところで、クロードとはうまくいってないでしょう?」

「どういう意味ですか?」

突然の話題転換に、わたしは警戒した。しかも、旦那様との結婚についてだとなおさら。

「この國での王太子というのは、國王の子供の中で、最もヴァンクーリとの適が高いものが選ばれる。そして、王妃に選ばれるのは、なからずリシェル王妃のを汲む人さ」

が濃い方がヴァンクーリに選ばれやすい。そして、ローデシー侯爵は母親側にリシェル王妃のは混ざっていないため、國王になるのはほぼ不可能。

そんな時に、わたしが現れた。

「リシェル王妃と生き寫しで、ヴァンクーリが移を始めたリンドベルド公爵家の正妻。きっと、君がヴァンクーリの長と契約したのだとすぐに分かった……、そして、君とクロードの結婚が明らかにおかしいということも」

「ローデシー侯爵、それぐらいにしなさい」

アンドレ様が話を遮ろうとするが、ローデシー侯爵は止まらない。

「現契約者である君が私と結婚すれば、私は國王になれる。誰もが認めるしかないだろう。クロードと上手くいっていないのなら、離婚してこの國の王妃になるつもりはないか? クロードよりも大事にするよ?」

旦那様とわたしの関係はいびつだけど、上手くいっていないわけじゃない。

最近はし距離がまったと思う。

それに――……。

「王妃とか、絶対にお斷りです」

わたしの迷いのない答えに、ローデシー侯爵が目を見開いた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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『家族から冷遇されていた過去を持つ家政ギルドの令嬢は、旦那様に人のぬくもりを教えたい~自分に自信のない旦那様は、とても素敵な男でした~』

もぜひどうぞ。

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