《【二章開始】騎士好き聖は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】》01.追放ですか?ありがとうございます!
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「シベル・ヴィアス! 今このときをもって君との婚約は破棄させてもらう!」
王宮にある大ホールに、この國の王子、マルクス殿下の高い聲が響き渡った。
今はパーティーのまっただ中だったのだけど、婚約者の私ではなく、私の義理の妹と一緒にいる殿下に聲をかけた途端、興気味にこう言われたのだ。
「……どうしてですか?」
婚約破棄を言い渡された私、シベルは殿下の突然の言葉に、首を傾げて理由を問う。
「君は義理の妹であるアニカが真の聖だとわかった途端、彼をいじめるようになったな」
「いじめ……?」
更に続けられた殿下の言葉と、涙目で殿下に寄り添う妹、アニカを見て、思い當たることがあっただろうかと私は頭を悩ませた。
私が六歳のときに実の母が亡くなって、翌年父は再婚している。その連れ子が私と同い年の妹、アニカだ。
この國には約百年に一度、聖が誕生する。聖は、いるだけでその地に平和をもたらすとされている。
その聖が、我がヴィアス伯爵家の娘であると、王宮の予言者からお告げが出たのはもう七年前。私が十歳のときだった。
ヴィアス伯爵の正式な娘は私一人。それもあって私が殿下の婚約者に決まったのだけど、數週間前、突然本當の聖は義理の妹であるアニカのほうだと、ヴィアス伯爵の後妻である継母が言い出したのだ。
聖らしいことをまったくしないから、私は偽らしい。
それに、私は見たことがないけれど、継母は聖だけが使える聖なる力をアニカが使っているのを見たらしい。
私が真似をして噓をつくかもしれないと言い、的にどのようなものだったのかは教えてくれなかったけど。
「とぼけるな。階段から突き落としたり、ドレスにワインをかけたりしただろう!」
「ああ……」
「目撃者も多數いるんだぞ!!」
マルクス殿下の王妃(はは)譲りの金髪はし長めだ。それを後ろで縛り、國王(ちち)譲りの碧眼を私に向けて言った言葉に、そのときのことを思い出してみる。
確かにそんなこともあったわね。
けれどあれは確か、階段でアニカのほうから肩をぶつけてきて、彼が勝手に転んだだけだ。
それに、私がすぐアニカの腕を摑んだから、落ちてはいない。
目撃者がいるんじゃないのかしら?
ワインだって、やっぱり向こうからぶつかってきて、私が持っていたグラスからワインがこぼれて彼のドレスにしかかってしまったけど、私のドレスのほうがもっと汚れたのよね。
「他にも々聞いているぞ。とにかく君のようなはもうここにはおいておけない! 聖であるアニカに何をするかわからないからな! よって君は辺境の地・トーリへ追放する!」
「……まぁ! トーリへですか!?」
婚約破棄を言い渡されてもじなかった私だけど、その地名には思わず大きく反応してしまった。
ああ……そんな、まさかトーリだなんて……!
トーリは魔が多く発生している危険な地域。そして今は第一騎士団が派遣されている場所。
「そうだ。君は騎士団の寮で働いてもらうことになる。人手が足りていないからな」
「まぁ、騎士団の寮で!?」
ああ……なんということでしょう。
「そうだ。これは決定したことだから、今更謝ったってもう取り消すことはできな――」
「ありがとうございます!」
「……は?」
嬉しくて嬉しくて、飛び上がってしまいそう。
そんな気持ちを抑えて、伯爵令嬢らしく一杯落ち著かせた聲で殿下にお禮を言った。
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