《【二章開始】騎士好き聖は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】》34.し黙ってろよ
「くっしゅん……っ」
「あらシベル、風邪?」
朝食の片付けが済んだ頃、私はエルガさんの前でくしゃみをしてしまった。
「すみません」
「いいわ、シベルが看病してくれていたから、もらってしまったのかもね。今日は休んで」
先日、風邪を引いていたお掃除擔當の先輩の看病に行ったのは、確かに私。そこでもらっちゃったのかしら。
「大したことないので、大丈夫ですよ」
「いいから休む! 貴はし働きすぎよ!」
「はい……」
合も悪くなかったけど、エルガさんにし強めの口調で言われた私は、素直に言うことを聞いて自室に向かった。
そういえば、し寒気がするかもしれない。これから熱が出るのかしら。
「シベルちゃん!」
その途中、リックさんに呼び止められて、私は足を止めた。
「リックさん、どうされましたか?」
「実は、団長たちが忘れをしたみたいで……これから屆けに行くんだ」
「まぁ、それは大変ですね」
レオさんとミルコさんは今日、トーリの領主と面談のために、朝食を終えた後出かけている。
「それで、よかったらシベルちゃんも一緒に來てくれないかな?」
「え? 私ですか?」
「うん。俺、ここに來てまだ日が淺いだろ? 場所はなんとなく聞いたけど、シベルちゃんが一緒に來てくれると心強いんだ。他の先輩たちは皆忙しそうで……シベルちゃんも忙しかった?」
なるほど。確かに、リックさんはここに來たばかりだから、まだ街には行ったことがないのかもしれない。
騎士団の役に立つチャンスね!!
「大丈夫ですよ。私はちょうどお休みをいただいたところだったので」
「よかった! ありがとう!」
リックさんはいい人だ。よくお料理の配膳を手伝ってくれるし、その際もとても丁寧で、親切。
それに爽やかで優しい方だし、そんなリックさんのお願いを斷ることなんてできるわけがない。
前にレオさんが〝気をつけて〟と言っていたことをふと思い出して一瞬躊躇ってしまったけど……リックさんはそのレオさんに忘れを屆けに行こうと言っているのだ。それにもう皆さんとも仲良くやっているようだし、大丈夫よね。
そのまま二人で外へ出ると、リックさんは白馬にまたがり、私に手を差し出した。
「はい、シベルちゃん」
「……馬で行くのですね」
「馬車より早いからね。どうぞ?」
「はい」
手を差し出されたので、その手に摑まって引き上げてもらう。
私のを軽々と持ち上げてしまうリックさんは、とても力持ち。さすが、騎士様……!!
「じゃあ行くよ。しっかり俺に摑まっててね」
「は、はい……!」
リックさんは、ミルコさんに次いでたくましいつきをしている。そんなリックさんに抱えられて、ドキドキしてしまう。
だって……だってこれは……憧れのシチュエーション!!
騎士様と一緒に乗馬なんて……ああ、これは夢じゃないかしら?
……けれど、なぜか一瞬レオさんの顔が浮かんだ。
そしてその瞬間、の奧がもやっとした。
……どうしたの、シベル。
こんなにたくましい騎士様と馬に乗っているのよ?
もっと素直に喜びなさいよ。
「……」
「ん? どうしたの、シベルちゃん」
「いいえ……」
私がじっと見つめると、リックさんは爽やかに微笑んでくれた。
リックさんも素敵な騎士様だけど……どうして〝レオさんだったら〟なんて思ってしまったのかしら。
リックさんに失禮だわ。
どうやら騎士団の寮で生活しているうちに、私はすっかり張りになってしまったらしい。
騎士様を選り好みするようになるなんて、最低よシベル!
心の中で自分を罵倒し、そのまま大人しくリックさんの太い腕に摑まりながら街へ向かった。
――はずだったのだけど。
「リックさん、こっちは森です」
「この森を抜けると近道だって聞いたんだ」
「そうなのですか?」
リックさんが馬を走らせたのは、騎士団の寮の裏側にある森の中。
私はこの森に來たことはないけれど、街への近道だったなんて。
リックさんは必要以上に口を開かなくなってしまったけど、乗馬に集中したいのだろう。
凄く、速いし……。
ともかく私にできることはなにもないので、大人しくしていたけれど、リックさんはどんどん森の奧へ進んで行く。
「あの……、本當にこっちで合ってるのでしょうか?」
「合ってるよ」
「……ですが、どんどん森が深くなっていきます……」
リックさんはここに來たばかり。だから道がわからないのかもしれないのに、隨分自信ありげだ。
「あの、リックさん」
「うるさいな。し黙ってろよ」
「……」
しつこく聲をかけた私に、リックさんが鋭い口調で言った。
【書籍化】婚約者が明日、結婚するそうです。
王都から遠く離れた小さな村に住むラネは、五年前に出て行った婚約者のエイダ―が、聖女と結婚するという話を聞く。 もう諦めていたから、何とも思わない。 けれど王城から遣いがきて、彼は幼馴染たちを式に招待したいと言っているらしい。 婚約者と聖女との結婚式に參列なければならないなんて、と思ったが、王城からの招きを斷るわけにはいかない。 他の幼馴染たちと一緒に、ラネは王都に向かうことになった。 だが、暗い気持ちで出向いた王都である人と出會い、ラネの運命は大きく変わっていく。 ※書籍化が決定しました!
8 103【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無雙する
【日間&週間&月間1位 感謝御禮】 ブラック企業で働いていたアラフォーリーマンの難波カズは、過労死で異世界転生。 異世界を救い、戻ってきたのはなんと十七歳の自分だった。 異世界で身につけた能力を使えることに気付いたカズは、今度こそ楽しい人生をやり直せると胸を躍らせる。 しかし、幼なじみの由依をきっかけに、もといた世界にも『人間を喰う異形――ヴァリアント』がいることを知る。 カズは過去の記憶から、近い未來に由依が死ぬことを察してしまう。 ヴァリアントと戦う使命を持つ由依を救うため、カズはこちらの世界でも戦いに身を投じることを決める。 ★ファミ通文庫さんのエンターブレインレーベルから、書籍が9月30日に発売します。 文庫よりも大きめサイズのB6判です。 ★日間ローファンタジーランキング 最高1位 ★週間ローファンタジーランキング 最高1位 ★月間ローファンタジーランキング 最高1位 ※カクヨムにも掲載しています。
8 62VRゲームでも身體は動かしたくない。
多種多様な武器とスキルや様々な【稱號】が存在するが、職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全沒入型VRMMO化されることになった。 身體をなるべく動かしたくない、岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム內の親友との會話で落ち著きを取り戻し、今日も<Imperial Of Egg>にログインする。 當作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結し次第、一日一話投稿致します。
8 178僕は異世界召喚され召喚士になりました。
失敗から始まった召喚士としての新たな人生、最初から地味に怠けてる主人公が多くの仲間と契約して成長していくちょっぴり殘念な異世界ストーリーここに開幕!!!!! 「俺が現世に戻ることは……ない!」
8 141一兵士では終わらない異世界ライフ
親の脛を齧って生きる無職の男、後藤弘は変わろうと思いトラウマ多き外に出る。そこで交通事故に遭い敢え無く死亡。そして気がついたら変なところに。目の前に現れたのは神様と名乗るモザイク。後藤弘はそいつによって第二の人生を送るため異世界に転生させられる。今度は間違わないよう家族を大切にして生きる男の第二の人生の物語。
8 133異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?
「全ての條件は揃いました」 平凡な高校生活を送っていた佐野 祐。 だが神の都合で、異世界に強制転移させられてしまう。 そして、祐が神からもらった力、それはもしかしたら神にも匹敵する力だった。 ※投稿頻度は不定期ですが約1週間周期を目標にしてます。
8 135