《【二章開始】騎士好き聖は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】》58.もちろんお供します!
「お疲れ様、シベルちゃん」
「ありがとうございます、レオさん」
私は今、今日の分の聖としての仕事を終えて、レオさんと自室に戻ってきた。
私の仕事は魔石に聖の加護を付與すること。
それをいくつも作って、各地に運ぶのだ。運ぶのは私ではないけれど。
聖の加護がある魔石を置いておけば、その地は魔の脅威にさらされることなく、平和になるのだ。
最初に加護を付與した魔石は、真っ先にトーリに運ばれた。
エルガさんの祖母が持っていた魔石の置はエルガさんのものだから、その代わりとなるものをすぐに用意した。
おかげでトーリはあれからも魔の被害に遭っていないらしい。
……アニカやマルクス様は元気かしら?
「疲れただろう? 今日はゆっくり休むといいよ」
「はい」
ソファに私を座らせて、レオさんはすぐに部屋を出ていこうとした。
「レオさんは、お仕事に戻られるのですか?」
「いや……実は俺はこれから、ミルコと手合わせの約束をしていて……」
「え!? ミルコさんと、手合わせですか!?」
「ああ……」
つい大きな聲を出して目を見開いた私に、レオさんは一瞬気まずそうに視線を泳がせた後、躊躇いがちに口を開いた。
「シベルちゃんも來るかい?」
「よろしいのですか!?」
「ああ……」
「では、ぜひ!!」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに食い気味で答えると、レオさんは「やっぱり?」と小さな聲で息を吐くように呟いた。
レオさんったら、そんなに素敵なことを緒にしていたなんて……!
あ、でも……。
「もしかして、私がいると集中できないですか?」
「え?」
「すみません、私ったらまた自分の気持ちを優先して……お邪魔になるようでしたら、はっきりおっしゃってください」
「いや、違う! そうじゃないよ! ……その、ほんのしミルコに妬いただけだ。あっ、ほら、彼のほうが俺よりたくましいだろ? 君はミルコの筋には目がないからね……」
「まぁ……!」
照れくさそうに頭をかいて、白狀するようにそう言ったレオさんが、なんだかとても可く見える。
「確かにミルコさんはとてもたくましい方ですけど、私の理想的なきんに……いえ、理想的な方は、レオさんですよ」
「今、筋って言おうとしたよね?」
「……筋も、お人柄も、すべて私の理想なのです!」
「そうか?」
「はい!!」
レオさんはし疑ったような目で私を見てきたけれど、ここは笑顔でお応えする。だってそれは本音だから。
私はレオさんが一番好きだし、レオさんのことだけをしている。
……でも、元々騎士様と筋に憧れがあるから……どうしてもミルコさんのようなムッキムキなを見ると……ね。
馬鹿正直なでごめんなさい。でも気をつけましょう! それでレオさんのことを傷つけてしまうかもしれないのだから!
*
というわけで、私はお二人の手合わせを見學に、王城にある訓練場へとやってきた。
レオさんもミルコさんも、ラフなシャツに著替えている。
ああ……もう、それだけでもたまらないわ。
だって二人とも腕まくりをしているし、首元も緩くて鎖骨が見えるんだもの。
「……ありがとうございます」
つい拝みたくなってしまうけど、お二人の表はとても真剣。にやけている場合じゃない。
「シベルちゃんが見ているからと、手加減するなよ」
「そんなことはしないさ」
お二人は普段所持している剣とは違う、細のレイピアを片手で持ち、向かい合って構えた。
とは言っても防は著けていないし、怪我をする可能は十分あるので、私まで張してしまう。
王都に戻ってからはよく、レオさんとミルコさんは二人で訓練をしている。
私はお二人の訓練を見るのが大好きだから、こうしてたまに見學させてもらっているのだけど……。
やっぱり、元団長様と、現副団長様のお手合わせほど興するものはない。
ドキドキと鼓を速めながら、私は汗をかいた手をぎゅっと握った。
「……っ」
先に仕かけたのは、ミルコさん。
レオさんはその尖った切っ先をわし、すぐに自分の剣を前に出す。
キン――と、靜かに、乾いた音が室に響いた。
二人の短い息遣いと、時折重なるレイピアの高い音だけが聞こえる。
「レオ、また腕をあげたな」
「君こそ。本當に手加減抜きだな」
會話をわしながらも、二人にはまったく隙がない。
そしてまた、キン――という、高い音が響いて二人の剣が混じり合う。
「……っ」
「どうした、レオ! 押されているぞ!」
やはりミルコさんのほうが、力があるのだ。
とても早いのに、次から次に剣を繰り出すミルコさんに、レオさんはし押されてきている。
王太子となってもレオさんがトレーニングを欠かしていないのは知っている。だけど、やはり現役の騎士様には敵わないのだろうか……?
ミルコさんはレオさんの側近だから、レオさんより強いならそれはそれでとても頼もしいことなのだけど……。
レオさんが後退る足音が先ほどより多く耳に屆いて、私の心臓はもう、ドキドキしっぱなし。
「……っ!」
「く……っ!?」
レオさんが負けてしまう……!
そう思った直後、わった剣をくるりと返して、レオさんがミルコさんの剣を弾き飛ばした。
「……すごい」
キン――と一際高い音を立てて、レイピアがミルコさんの後ろに落ちる。
「……俺の勝ちでいいか? ミルコ」
レオさんの息は荒い。
「ああ……、さすがだな。やはりまだまだ、レオには敵わないか」
「いや、今回は本當に危なかったぞ」
途端に、張が解けていく。
私も深く息を吐いて、強張っていたから力を抜いた。
「お疲れ様です……! お二人とも、とてもすごかったです! 私の目では追えないほど早かったですし、とても力強くて……本當に本當に格好よかったです――」
そんなお二人に、私もたまらず聲をかけて歩み寄った。
「!!」
けれどレオさんは、シャツの裾を摑んで持ち上げると、そこで額の汗を拭った。
レオさんの形のいい腹筋がになり、私の心臓は跳ね上がる。
「レオさん、こちらをどうぞ……!」
「ああ、すまない」
慌てて持ってきていたタオルを手渡すと、服の裾をぱっと離してタオルをけ取り、それで額に浮いた汗を拭うレオさん。
ちょっと殘念……。なんて思いつつも、ミルコさんにもタオルを手渡す。
「ふぅー」と深く息を吐くレオさんと、顔周りの汗を拭いながら靜かに呼吸を整えているミルコさん。
ああ……でも、とてもいい景だわ……! これぞ役得……!!
神様ありがとうございます。
これで私はまた元気になりました。明日も聖として、頑張れそうです……!!
「俺たちは汗を流してくるけど、シベルちゃんはどうする?」
「もちろんお供します!」
「「えっ?」」
「あ……じょ、冗談です! 私は部屋に戻りますね! お二人とも、お疲れ様でした!」
いけないいけない。つい願が素直に言葉になって出てしまったわ。でもさすがにそれは駄目よシベル。恥を知りなさい。
「……シャワーを浴びたら君の部屋に行くから、待っていてね」
「えっ……!?」
そんな私に顔を寄せて、こっそりと耳打ちするレオさんに、私の心臓はまた一瞬にしてドキドキドキドキと高く脈を刻んだ。
シベルは今日も幸せです。
ストックが盡きてきたので、次回から更新ペースがゆっくりになります!ごめんなさい……!( ;ᵕ;)
プロットはできておりますのでエタりはしません!ご安心ください!
書籍化作業と並行しながら更新も続けていきますので、まったりとお付き合いいただけると嬉しいです!
よろしければ作家お気にり登録をしてくださると、更新した際にわかりやすいので、ポチッとしてくれると幸いです(*´˘`*)
★お知らせ★
同作者の別作品、9/2発売予定の
『私の主人は大きな犬系騎士様 ~婚約者は妹と結婚するそうなので私は魔導騎士様のお世話係になります!~』
こちら、完売していたサイン本が追加販売されました!( ;ᵕ;)
今回も數に限りがございますので、よろしければぜひぜひお早めにご予約くださいませ( ;ᵕ;)
私初のサイン本です……( ;ᵕ;)!
詳しくはぜひ活報告をごらんください(*´˘`*)
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