《【書籍化・コミカライズ】誰にもされなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺されていました〜【二章完】》第33話 思 ローガンside
「……そうでしたか」
夜、執務室。
ローガンが晝の顛末を話すと、オスカーは労(いたわ)しげに目を伏せた。
「やはり、事実だったのですね」
「ああ。アメリアが全て認めた」
いつもの椅子に座るローガンの指が機をトントンと叩いている。
彼が苛立ちを覚えている時に見せる作だ。
「なんなら、報告書に記載されていた容は氷山の一角だろう。恐らく、俺たちでは想像もつかないような扱いをけていたのだろう」
思い起こす。
ずっと溜め込んで我慢していたのであろう辛さが、悲しみが、苦痛が、弾けてしまったかのような慟哭を。
ヘルンベルク家に嫁いできてからというもの、明るく前向きな部分ばかり見せていたアメリアだったからこそ、赤子のように泣きじゃくる彼の姿はローガンに強い衝撃を與えた。
ローガンは拳を強く握りしめる。
「アメリア様は、今どちらに?」
「部屋で睡眠を取っている。泣き疲れたのだろう」
「なるほど。何はともあれ、このタイミングで吐き出せて良かったですな」
「ああ。多分、ずっと我慢していたのだろうからな」
彼の表の大半を占める笑顔はもしかすると、自分が壊れてしまわないようにと備わった防機能かもしれないとローガンは思った。
自分の本當の気持ちには蓋をして、とりあえず笑っておけばその場は誤魔化す事ができる。
しかしそれを続けると、自分の知らないところで心の膿のようなが溜まっていって、いずれは破裂してしまう。
そうなると、壊れてしまうのだ、心が。
いつかの自分のように。
アメリアもいずれ壊れていたかもしれないと思うと、早いうちに気づけて本當に良かったとローガンは思った。
「オスカー」
「はい」
「明日以降の仕事で、キャンセルできる、後に回せるものはどのくらいある?」
「そうですね…………ざっと五分の一くらいはあるかと」
「思った以上にあるな」
「ローガン様は引きけすぎなのですよ。別に、わざわざローガン様じゃなくても回る仕事があるのに、生き急いでいるとしか思えません」
「このところ、それしか楽しみが無くてな」
自分の能力を発揮して誰かに謝される、認めてもらえるというのは、ローガンにとって最もやり甲斐のある事だった。
「というわけで、キャンセルできるものはキャンセル、後ろに回せるものは回すことは可能か?」
「もちろんです。むしろ今まで稼働しすぎて相手方も困する速さだったので、この期に及んで誰も咎めはしませんよ」
「そうか……なら良い。調整のほう、よろしく頼む」
「かしこまりました。しかし、なぜ急に?」
オスカーの問いかけに、ローガンは一拍置いてから答えた。
「……しは、アメリアとの時間も作ろうと思って」
「ほう」
オスカーは興味深げに顎をなぞった。
「楽しみが増えたようですね」
「そういうわけでは……」
ハンカチをわざとらしく目に當てるオスカー。
「沙汰など無縁な仕事人間だったローガン様がついに……」
「いや、だからそういうわけでは……一部そうかもしれんがとにかく別に現(うつつ)を抜かすわけではない、そもそも此度の婚約は契約的なもので」
「妙に早口ですな」
「……とにかく、優先順位が変わっただけだ」
「そうですか……そういうことにしておきましょう」
ニコニコとご機嫌なオスカーに、ローガンは頭を掻きながら溜息をついた。
しかし、すぐに表を切り替える。
「もう一つ、頼みがある」
「なんなりと」
その面持ちは真剣そのもの。
オスカーの表も真面目なものに変わった。
ローガンがある要を口にすると、オスカーの目が見開かれる。
しかし意図を察したのか、どこか好戦的な笑みを浮かべて頭を下げた。
「かしこまりました。ただ、その報にたどり著くまでには、々お時間をいただくかと」
「時間は気にしなくていい。ただ、確実なものを取り揃えてくれ」
「はい、必ずや」
オスカーの力強い言葉に、ローガンは「うむ」と頷くのであった。
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