《【書籍化・コミカライズ】誰にもされなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺されていました〜【二章完】》第38話 誰かと一緒に食べるご飯
「お、味しい……!!」
牛スジのワイン煮込みをバゲットに載せて食すという、悪魔が考えたとしか思えない料理を口にした途端、思わずアメリアは歓喜の聲を上げてしまった。
スジといえばくて味がしなくてそんなに味しいものではなかった(とはいえ実家で出てくる料理の中ではマシな方だった)が、この牛スジは長時間煮込まれたためかトロトロで、噛んでも抵抗なくほろりと溶けてしまう。
一緒に煮込まれている玉ねぎもにんじんも、野菜本來の甘みがじゅんわりと染み出していて、カリカリのバケットと非常によく合った。
今まで味わったことのない未知の味しさにアメリアが至福の表を浮かべていると。
「君は、本當に味しそうに食べるな」
じっと、ローガンがアメリアに視線を注いだまま言う。
「も、申し訳ございません、はしたなくて……」
「謝り癖」
「あ! えと、ありがとうございます?」
「それはまた違うだろう。まあいい」
「うう……難しいですね……」
「そもそも、別に怒っているわけではない。むしろ、良いことだ」
「そうなのですか?」
「俺個人としてはな。公の場では、気をつけたほうがいいと思うが」
「ゔっ……気をつけます」
でも味しい、止まらない。
牛すじ煮込みの次は、海老の揚げ春巻きにフォークをばした。
ぷりっぷりの海老とザクザクキャベツが、カリッとしたガレット生地に包まれていて味はもちろんのこと食でも楽しませてくれる。
「んぅ〜〜〜……」
程よく効いたスパイスの味の中から、厚な海老がこんにちは。
そこにあっさりキャベツも加わりくどさも殘らない。
味しいし、胃もたれもしない、ずっと食べていたくなる一品だと思った。
後ろでは相も変わらず、いつものシェフが満足そうに頷いている。
「だいぶ、付きも良くなってきたな」
また、ローガンがアメリアを見て言う。
アメリアのフォークがぴたりと止まった。
「えっ……ちょっとふくよかになってしまいましたかね……?」
「逆だ、もっと食べた方が良い。今まで食べなさすぎたのだ、たくさん食べて、標準まで戻せば、より一層……」
そこで、ローガンは口を噤んだ。
目を逸らし、沈黙する。
アメリアはこの挙が、ローガンに照れが生じた時の癖であることをなんとなく覚え始めていた。
「ローガン様?」
「……なんでもない。とにかく、腹を痛めない程度にたくさん食え」
「は、はい! お腹を痛めてお騒がせなんて事は、二度といたしません!」
「殊勝な心がけだ」
ふ、とローガンは満足気に笑みを浮かべた。
夕食も終盤。
アメリアがたっぷりキノコの東洋風パスタに舌鼓を打っていると、またまたローガンが口を開いた。
「そういえばふと小耳に挾んだのだが」
「ふぁい?」
「口からキノコを生やしている時は喋らなくていい」
もぐもぐ、ごくん。
「す、すみま……あっ」
「その使い方は正しい。意識はしているようで何よりだ」
「はい、お様で……それで、小耳とは?」
「先日、君は皆に料理を振る舞ったそうだな」
思い出す。
一昨日の雑草ディナーを。
「料理、と言うほど大層なものではありませんが……季節の雑草を使った、ちょっとしたものを調理して、皆さんにご賞味いただきました」
「なるほど」
當時シルフィが懸念した、主人と同じものを食べていいのかという部分をアメリアはすっかり失念していたが、その辺りはローガンは特に気にしていないようだった。
「聞いたところによると、なかなか好評だったそうだな」
「はい、嬉しい限りです」
「季節の雑草か、また面白そうな」
「興味がおありで?」
わくわくが隠しきれない表で、アメリアが尋ねる。
「ああ、高級志向の料理を一通り食べると、たまには珍しい食材を使った料理も口にしたくてな。裏庭に生えている植がどのような味の変化を遂げるのか、興味がある」
「な、なるほど……」
いくら豪勢な食事とはいえ、日常的に食べていたら飽きが來てしまうのだろうか。
今までの食事が貧相すぎたアメリアには分からない覚だった。
(やっぱり、公爵様ってすごい……)
改めてそんなこと思うアメリアに、ローガンが言う。
「そのうち、食べさせてくれ」
「はい、もちろんです!」
アメリアが満面の笑みで頷く。
そのリアクションにローガンはまた、視線を微かに逸らした。
しかしアメリアは(調理の使い方、シェフの皆さんに教えてもらわなきゃ……)などと考えていたため、それに気づく事はなかった。
こうして、夕食の時間は過ぎていく。
久しぶりにローガンとゆっくり夕食を囲んで、話せていないことも話せて。
とても楽しいひと時を過ごすことができた。
改めて、アメリアは思う。
誰かと一緒に食べるご飯は、一人で食べるよりもずっと味しい、と。
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