《【書籍化】キッチンカー『デリ・ジョイ』―車窓から異世界へ味いもの輸販売中!―【コミカライズ】》それは等価になってないだろう(笑)

揚げたての手作りコロッケは、発泡スチロールの箱(別名トロ箱)にれていたからまだ溫かい。ただ、しだけ気が篭ってしまって、カリッとした食が失われているのが惜しい。そして団子は、余った合いびきを使って作ってみた。

この二つを選んだ理由は、まずはレイモンドの世界に存在するを使っても、高価じゃない調味料や香辛料・ハーブなどを混ぜて単純な味付けでも味しくできあがる料理であること。

々な工夫次第で、々な味やのバリエーションが楽しめる基本的な料理であることの二點を重視してみた。

そしてなんと言っても、白いパンを作る目標の一つにもなる。パンとして食べるだけじゃなく、他の料理にも使う材料になるんだってことを知っておいてほしかった。

ライ麥パンや黒パンでも確かにパンとして使えるし、実際に作ってみてもいいだろう。

でも、このこんがりとしたキツネにはならないし、度が高いパンだからパンにすると細かいになる。それをにすると、あの香ばしいカリッとしたさっくりがでない。

つまり、キツネを通り越した焦げ茶で、ザラリとした舌りの揚げになるんだ。やっぱりフライはさ、黃金のパンが立ったでなきゃね。

いつものプラの弁當容二つにれて、二人の前に並べてみた。もちろん、容はなぜか木の皮を薄く加工した容に変化したんだが…その、たこ焼き屋が使っている経木舟皿あたりに盛って出してみたい。変化するのか、しないのか気になる。

「この形は…決まっているのか?」

ジョアンさんがまずは一つ摘み上げ、や形や香りを確認して問いかけてきた。

その橫で、レイモンドはすでに大口を開けてかぶりついている。おいおい、二口で終了かよ!?

「決まっているわけじゃないんですが、揚げやすく崩れにくい形なんですよ。中はすでに火が通っているなんで、後は一気に高溫で良いになるまで揚げるだけなんですが、角があるとを付ける段階で壊れやすいんです」

「なるほど…お、これは味いな。食べやすいと言うか、妙な癖の無い味付けか…」

「はい。今回は基本的な味にしてみました。こっちの世界には、ここからんな味付けのコロッケが作られてます。も豚や牛なども使いますし、芋じゃなくてカボチャを使って甘味のある種類も―――」

「私は、多めが好きだな」

すでに団子を口へと放り込んでいたレイモンドが、頬を膨らませたまま自分の好みを率直に主張した。

その育ち盛りの子供みたいな様子に、思わずプッと吹き出してしまった。

「俺もだ。牛コロッケ味いよなー」

が行き過ぎると、コロッケを離れてメンチカツになっちまうがな!

「この団子も良い味だな。ハーブ…か?」

「ええ、こちらでは生姜と言われる香辛料の一種ですが、の臭み消しにれてます」

を敢えて細かくしてあるのかぁ。それに味をつけ臭み消しをれて…なるほどなぁ」

「別のハーブ使ってみても良いですよ。で、スープの中にれたりするとの旨味が出るし、細かくしてから団子にしてるんで火の通りも早くてらかい」

「手間はかかるが、んな料理に使えるわけか」

「はい」

ミートボールとして餡を絡めたりソースを絡めたり、スープのにしたり。本當に使いでがある。

格別に味い料理じゃないが、これを使って異世界ならではのコロッケや団子を作って、そして彼らの世界の日常食になってくれたらなぁと妄想してしまう。

「よぉし! では、こちらの世界の味いを!」

ジョアンさんの大聲が、開け放たれたままの戸口の向こうへと飛んだ。

すぐに何かが焼ける匂いと音が部屋へと近づいてきて、戸口の向こうにワゴンに乗ったデカい鉄板との塊が現れた時、俺は目を見開いたきり固まった。

大柄な三男のエリックさんが押してってきたワゴンですら大きいのに、幅が一メートルはあるんじゃないかと思える橫長の鉄板の上で、アニメでしか見たことないような分厚く巨大な切りされた何かのが、んなハーブと黒胡椒と塩がまぶされてジュウジュウと音を上げているのだ。見た目だけでも圧巻で、その上になんとも言えない良い匂いがしてくる。

味そうな脂の焦げた匂いと香ばしい香辛料の香りが混然一となって、俺の食中樞を凄い勢いで刺激した。

「…何のだと思う?」

自信満々って顔つきで、ジョアンさんがを切り分けながら俺に問いかけてきた。強面なのに、商人としての自信ありありな笑顔って最強だよなぁ。ただ単に「自信がある」ってだけじゃなく、この俺が隠し事なしでお勧めしている品だぞ!って確約されている気がしてくる。

そして、勧めてくる逸品が、円形に近くて中央に骨がある切り。大きさは鉄板の縦幅ぎりぎりだから、五十センチはあろうかというステーキだ。

「何か…大き目の獣の腳?」

「いいや…尾の切りだ。さて、何だ?」

尾…」

尾ですらこの太さとなると、本は相當な大きさだろう。

でも、彼らの世界の食用獣なんて知らんしなー…。

頭を抱えた俺を見て、三人兄弟は聲を殺して笑い出した。それでも答えを教えてくれず、まずは食えと切ったの塊をいくつか鉄串に刺して渡してきた。

「友人と食っていい?」

「おう!是非食ってくれ」

一つの塊ですら俺の拳ほどになるを串ごとけ取ると、それを手に振り返った。

「異世界焼(ステーキ)!!さて、何のか!」

俺が長々と獨(・)り(・)言(・)を呟いていたせいか、後ろのカップルは持參の煎餅を齧りながら飽き出していたところだった。そこへ、いきなり太い串に刺した拳大のの塊を持って振り返ったんだから、彼らの驚き合は推して知るべし!

煎餅を銜えて固まった野々宮さんと、袋に手を突っ込んだまま停止した中井。目を皿のように見開き、ぽかんと口を開けてを凝視している。

「おーい!正気に戻れ!今はの正が優先だ」

そんな俺の聲を合図に、二人は用意していた皿と箸をカウンターに並べて待機した。その上に満を持して『異世界の味い』が置かれた。

そこからは、異様に真剣な表の解から始まり、味わい、食と舌り、口から鼻へと抜ける香りと獣臭さを無言で堪能する俺たち。

笑えるのが、三人共に臆することなくを口にしたことだ。警戒心も躊躇いも見せず、ただ料理人の顔つきでそれを口に運んで咀嚼し、丹念に味わった。

「なんだ、これ…旨ぇ…」

「しっかりした歯ごたえといい、旨味が凝されたといい…マジで味いな!」

「おいしーっ!なにこれ!?」

三者三様の想だったが、ただ「味い!」に盡きた。

「で?何のだと思う?」

実は、すでに俺の中に一つの答えが浮かんでいた。けれど、まずは二人に質問してみた。

暗がりの中にぼんやり浮かんだ燈り。その小さなの中で、二人はニンマリと笑んだ。

「―――ドラゴン?」

それしか無いだろう。

加筆 3/18

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