《【書籍化】キッチンカー『デリ・ジョイ』―車窓から異世界へ味いもの輸販売中!―【コミカライズ】》ジィ様に負けた俺(´;ω;`)ウッ…

結局は営業日だったが、を休めるために急休店日にするしかなくなり、仕れ先にはお詫びの電話をれた。見えない相手にまで必死で頭を下げる、日本社會の禮節を重んじた行為(くせ)を見事にこなし、返しに見舞いの言葉をけ取って電話を切った。そして、心の中でお客さんたちに詫びをれ、まずは言いつけ通りに補水を開始した。

常溫の清涼飲料の味くないことに顔を顰め、でもには常溫の方が浸しやすいんだと自分に言い聞かせ、するするとを通って行く量に目を丸くした。

調管理も仕事の一部だって理解していたのに、やはりどこかでそれを忘れて[異世界流]に浮かれていたのかも知れない。

俺一人がレイモンドたちと付き合いってた時は、俺の都合でくことができたし、知識を渡して教えるってなことはしなくて良かったから、商品を売る時以外は適當な付き合いでいられた。しかし、今は関係者が増えてしまい、その流地點であるキッチンカーの持ち主の俺が立ち會わないではいられない。

別に中井たちを信用してない訳じゃないよ?鍵を渡して、彼らだけで流を計ってくれても何ら問題はない。

が、主である俺がいない狀況でジィ様に力を使わせるってのは、なんだか申し訳ないと思ってしまうのだ。例えば、家主が留守の家を友人に貸して、別の人から好意で家主にって贈ってくれたを使われてしまっている狀況に、なんか贈り主に悪いって気持ちが先に立ってしまってさ。

だから、その場に必要なくても立ち會ってしまう。んで、夜更かしと寢不足。そして他者の料理ばかりに気が行って、自分が飲み食いすることを忘れていた。

ベッドの上でじっくり反省して、それからスマホ片手に階下に降りて行った。

「おう。調子はどうだ?」

敦が巨を屈めながら臺所や居間を往復し、謎の何かを卓袱臺に並べていた。

とりどりの中ったペットボトルやガラス製の瓶が、掃き出し窓から差し込む午前のざしをけて煌いていた。

「敦ちゃん…なに?これ」

敦が滯在していたことにも驚いたが、それよりも謎の瓶の群れが俺のド肝を抜いた。

婆ちゃんが若い頃から使っていた飴に磨き込まれた卓袱臺の上に、ファンシーな合いのが落ちていて、それが飲料だと思えないのがまた何とも…。

「あっちで買ったソーダ。お前への土産だ」

「…これを俺が喜ぶと思っているのかな?」

熱が下がったばかりだからか、そんな嫌がらせみたいな土産に頬の筋が引くついた。

どう見ても著料と糖分過多なハイカロリー・ジャンクです。そんなモンを料理人の俺へ土産として買うゴリラ。

「あはは~!ただの嫌がらせだ。ま、店の隅にでも飾って素敵なインテリアにでもしろ」

だと思っていたら、やはり嫌がらせだった。

「で、昨夜はここに泊ったの?」

「いや、実家に帰った。気づいたらここの鍵を持って行ってしまってたんで、朝早くに戻って來た」

「そーですか…ご苦労様です」

「それで、だ。調は?」

そうですよね。それが本題ですよね~。

「お様で熱も下がって楽になったよ。駆けつけてくれてありがとう」

「若いと思って油斷してると、あっけなく死ぬぞ。夏は十分気をつけろよ?お前は基本、一人暮らしなんだから」

「うん…に沁みたよ」

あの心細さは、一人になった時に納得しただけじゃ理解は足りなかったらしい。意識があったからHELPの電話を掛けることができたが、あのまま昏睡狀態に陥ってたら…と考えると、恐ろしくなる。

「という訳で、簡単なでいいから俺に誠意を見せろ。そーだなー、冷やし中華を大盛で。ああ、茗荷の千切りも盛ってくれ」

でた…。病み上がりの半病人に飯作りを要求する非道なゴリラ。山盛りのバナナでも食ってろ!自分の金でな!

と、腹の中で思い切り悪態をついてから、おもむろに臺所へとった。え?本音と行が伴ってないって?俺は恩を仇で返す様な無な人間は持ってない。

だから、今回は黙って調理を始めることにした。それに、俺も冷やし中華が食いたくなったしな。

その夜は、キッチンカーの窓を開けることなく、店舗に休憩用の折り畳み椅子を出して座り、敦の土産を一瓶だけ開けて(一番害がなさそうなヤツを)氷をぎっしり詰めたグラスを持ち込んで飲んでみた。

「ジィ様に頑張ってくれなんて言っておきながら、俺が先にくたばりそうだったよ」

―――やはりか…大丈夫かと心配しておったんだがのぉ―――

「気づいてたなら、早めに忠告してくれよーっ」

―――馬鹿者!それは自己管理のだろうが。いかな主と言えど、生き死には儂の口出す問題ではない。お前さんは生きており、儂は端とは言え神の國の者。こうして言葉をわしておるが、本來ならば儂は眺めて過ごすだけなのだぞ?―――

ジィ様の説教が、炭酸の辛みと混じってをさした。

そうなんだよなぁ。もとはと言えば、付喪神のジィ様の神力は元の持ち主が大事に扱ってくれたから溜まって行ったモノで、俺はそれを使わせて頂いているだけなんだよなぁ。確かに、異世界の神と現世の神の手先に使われはしたけど、嫌な思いは経験してないしなぁ。

―――お前さんが元気で、そして儂を大切に扱ってくれているならそれでいいんだ。人ももいずれは最後が來るもの。それまでは達者でいてくれんと、老に鞭打つ甲斐がない――

「ほい。判りました。自分もキッチンカーも大事にします。お互い、頑張って行きましょうぜ!」

しだけヒンヤリしていた車の空気が、ほんわりとらかく優しくなった。

そろそろ寢るか。明日はきっちり仕事して、夜はゆっくり過ごすために。

誤字訂正 3/28

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