《【書籍化】キャだった俺の青春リベンジ 天使すぎるあの娘と歩むReライフ》33.勝負とか関係なく至極當然の結果

「ははっ! 聞いたぞ春華!」

聞きたくもない聲が響き、甘い気分になっていた俺の意識は素に戻される。

そして振り向けば、そこにあったのは腐れイケメン野郎の顔だ。

さっき俺とのテスト勝負で敗北して赤っ恥を曬した絶賛株大暴落中の王子――剣隼人がそこにいた。

こいつ……何しにきやがった!?

「え、え? その……何か私に用なんですか……?」

紫條院さんが目を白黒させている。

突然現れた剣に困しているようだ。

「ああ、そうだ! そいつとの話が聞こえていたが、お前は學力を上げるために教師役を必要としていたんだな!?」

「ええと、それはそうですけど……それがどうかしたんですか……?」

「なら喜べ! これからは俺がお前に勉強を教えてやる!」

は、はあああああああああああ!?

何を言ってるんだこいつ!?

「俺はそこにいる愚劣な雑魚とは比べものにならないほど有能だ! お前の績もすぐに學年5位以に上昇させてやる!」

「……ぐれ……つ……? ざこ……?」

「お前……! どの面を下げて紫條院さんに近づいているんだ!?」

俺との點數比べに負けたくせに『敗者は二度と紫條院さんに近づかない』という自分が決めたルールは堂々と無視か!

「黙っていろ邪魔くさいゴミが……! 俺がその時にむものが最も優先されるルールだ! そして俺は春華と話をしている! 俺たちの月を邪魔するハエはとっとと失せろ!」

(な、何が月だこのクソ野郎……! 相変わらず話にならない……!)

こいつがあれで大人しく引き下がるなんて俺も思っていなかったが……言ってることも行も想像のはるか上を行く稚さで目眩がする。

ここまで恥を知らないのなら、ルールや約束でこいつを止めるのはおそらく不可能だ。

「さあ春華、遠慮することはない! もうそんな愚に頼る必要なんてない……お前は俺の教師役としての卓越した手腕に激するだろう! 剣家に招き、手ずから教えてやるぞ!」

この……! これ以上好き勝手にベラベラと喋らせてたまるか!

ここは俺がガツンと――

「……お斷りします。あなたに教わることは何もありません」

俺はぎょっとして思わず剣に対して開きかけた口を止めてしまう。

何故なら紫條院さんが発したその拒絶の言葉には、彼から一度もじたことのない刃のように鋭利さと、酷薄なまでの冷たさがあったからだ。

「な……なんだと……俺がものを教えてやろうというのに……それを斷ると言うのか……!」

剣が信じられないという様子で戦慄(わなな)く。

いやいやいや、俺からすればそんな提案がいきなり通ると確信しているお前の方が信じられねえよ。

「いえ、そもそも――あなたは誰なんですか?」

その一言によって、剣は絶句して凍りついた。

実際これは強烈だ。

意中のに認識すらされていなかったのだから、自意識の塊みたいなこの男にはさぞショックだろう。

「ま、まあいい……! 覚えていないのならもう一度名乗ってやる! 俺は剣隼人……あらゆることにおいてそこらの雑魚とは違うお前と同じ『上』の男だ!」

「『上』……? すいません。ちょっと言ってることがわかりません」

「『上』は『上』だ! お前は家の格もしさもそこらのとは違う! だからお前はそこにいる『下』のハエのような男じゃなく、同じランクにいる俺と一緒にいるのが正しいんだ!」

この野郎黙って聞いてりゃ……!

俺に完全敗北した下魚(げざかな)王子が抜かしてんじゃ――

「――いい加減にしてください」

え……今の冷や汗が出るくらいドスの効いた聲……。

紫條院さんの口から出たのか……?

「いきなり出てきて口汚いことばかり……! 何なんですかあなたは!? さっきから新浜君のことを雑魚とか愚劣とかハエとか……! 失禮だとは思わないんですかっ!?」

普段決して見せない怒りのわにして、紫條院さんは聲を荒げる。

「新浜君は自分の勉強だって大変なのに、私のために資料や問題を作ったりと、本當の先生以上に力を盡くしてくれたんです! それをさんざんけなして……一何様のつもりなんです!?」

怒ってくれている。

あの溫和でぽわぽわした紫條院さんが俺のことで――

「な……何を言うんだ春華……? そんな雑魚どうだっていいだろう? お前のようなは俺と一緒にいるべきであって――」

「私からすれば! あなたの言っていることは何一つ理解できません! わかっているのは、あなたがとても失禮で不快な人だということだけです!」

普段は穏やかな表のみを浮かべているその貌を憤りに染めて、紫條院さんは怒りをそのまま口にするようにして言葉を紡ぐ。

「あなたなんか大っ嫌いです! もう二度と私に話しかけないでください!」

トドメの言葉で、剣は目を見開いたまま完全に直した。

あまりのショックにこいつの神基盤であるプライドが砕けたガラス細工みたいに々になったようで、微だにしなくなる。

「行きましょう新浜君! 私、これ以上この人の近くにいたくありません!」

「あ、ああ……」

そうして、時間が停止したように一言も発さなくなった剣を殘し、俺と紫條院さんはその場を後にした。

「こんなに怒ったのは生まれて初めてです! 本當に失禮な人でした!」

「……その悪かったな紫條院さん。本來はああいう変な奴は男の俺が矢面に立って黙らせるべきなのに……」

「新浜君は全然悪くありません! 私はただ許せないっていう気持ちを口に出さずにはいられなかっただけです! とっても良い気分で新浜君と話せていたのに……ああもう!」

紫條院さんがプンプンと怒りが収まらない様子で言う。

あのクソ馬鹿王子の相手は最初から最後まで気分最悪だったが……こうして好きな人の知らない一面を見れたことは新鮮だった。

「そういえばあの人は以前も私に話しかけてきたような気がしますけど……もう二度と関わらないのでどうでもいいですね」

お、おおう……普段の紫條院さんなら絶対にしないすごくバッサリとした言い方だ。どうやらあの馬鹿王子の無禮丸出しの態度にそうとう腹を據えかねたらしい。

これは……俺があいつに因縁つけられてテストの點數比べをするハメになったことを話すのは後にした方が良さそうだな。

今はとにかくあいつの名前は聞きたくなさそうだ。

「ふう、とりあえずあの変な人のことは忘れることにして……新浜君にはテストが終わったら勉強會のお禮の話をしたかったんです。まずちょっと聞きたいんですけど、食べで苦手なものってありますか?」

「え? いや、ゲテモノとか以外ならあんまり好き嫌いはないけど……」

お禮に贈答用の缶詰とかフルーツを買ってくるとかそういう話か?

うーん、そこまでしてもらわなくていいけど紫條院さんが俺の労力に対して対価を払いたいのならけ取っておくべきかも……。

そんな展開を予想した俺だったが、紫條院さんの口から飛び出た話はそんな生優しいものではなかった。

「良かった! お父様やお母様に相談するのはこれからなんですけど……実は新浜君を私の家に招かせてほしいんです! お晝ごはんとお菓子を作っておもてなしします!」

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