《【電子書籍化】退屈王は婚約破棄を企てる》10.王はう
夜會から2日後の晝下がり。
フローラはお気にりの薔薇園の東屋にいた。
先日は堅く閉じていた薔薇の蕾も、ようやく綻び始めている。開花はもうすぐといったところだ。
お茶を飲みながら小説を読むことは、フローラの日々の楽しみの1つである。今日も、すっきりと爽やかなハーブティーを飲みながら、ユリウスからお土産に貰った小説を読んでいるところだ。辭書を引きながら読むため時間はかかるが、外國語を學ぶことも好きなフローラは苦にしなかった。
語は、聖に選ばれたとその護衛騎士がに落ちるという容のようだ。まだ序盤ながら悲の気配が漂っていて、ハラハラしながら読み進めているフローラである。
フローラの隣では、給仕を終えたエルナが、こちらもハーブティーを飲みながら本を読んでいた。もちろん、フローラのいに応じてのことである。
エルナはフローラと違ってあまり小説を読むことはなく、今も、手にしているのは野菜の栽培について書かれた実用書である。フローラにしてみれば何が面白いのかさっぱりわからないのだが、エルナは、貴族令嬢にはおよそ使いどころのなさそうな実用書をよく好んで読んでいるのだった。
フローラはキリの良いところで本から顔を上げると、うーんと大きくびをした。それから両手で頬杖をつき、綻びかけた薔薇の蕾をぼんやりと眺める。
ふと、2日前の夜會のことが頭に浮かんだ。
ユリウスとロズリーヌが歓談に戻った後も、フローラは両親や兄と共に、夜會に參加した者達の挨拶をけ続けた。
その合間にホールに視線を向ければ、フローラの目は自然とユリウスに引き寄せられた。
ユリウスは、ロズリーヌをエスコートして、有力貴族達に挨拶をして回っているようだった。彼らの方でも、ユリウスと見慣れぬしい令嬢の取り合わせに興味を隠しきれない様子で、遠巻きに眺めたり、直接話しかけたりしている様子だった。
ユリウスのエスコートは紳士的で、常にロズリーヌへの気遣いがじられた。立ち姿も所作も洗練されていた。けれど、その姿を目にするたびに、フローラはうまく言葉にできない違和を覚えたのだった。
フローラはそれまで、ユリウスが自分以外のをエスコートする姿を見たことがなかった。
ユリウスにはすでに他家に嫁いだ姉がいるので、過去には夜會で姉をエスコートしたことがあるのだろうけど、フローラ自はそれを目にしたことはない。誰かをエスコートしたことがあるのかユリウスに訊ねたことはないが、なくともフローラが出席する王宮の夜會にはいつも1人で參加していた。
だから、実のところフローラは、ユリウスからロズリーヌをエスコートすることの許可を求められたとき、的に思い描けてはいなかったのだ。彼が他のをエスコートする姿がどういうものなのか、ということを。
実際にそれを目にしたフローラのに生じた、何とも言えないモヤモヤは、夜會後、ふとした拍子に何度も蘇っては、フローラを落ち著かない気持ちにさせるのだった。
「どうかなさいましたか?」
ぼんやりしたままのフローラに、エルナが気遣わしげな目を向ける。
「……ねぇ、見慣れないものを見ると、落ち著かない気持ちになる、わよね?」
主の漠然とした問いかけに、エルナは読んでいた本を閉じ、考え込むように首を傾げた。
「そうでございますね……。容によりますが、そのようなこともあろうかと思います。……姫様は落ち著かない気持ちでいらっしゃるのですか?」
「そう……そうなの。薔薇の夜會で、ユリウスが他のご令嬢をエスコートする姿を目にしたの。それ以來、なんだか気持ちが落ち著かないのよ。モヤモヤするというか、ザワザワするというか、うまく言葉にできないのだけど……。わたくし、ユリウスが誰かをエスコートするところなんて初めて見たから、そのせいかしらと思って……」
頬杖をついたまま、相変わらずぼんやりと答えるフローラに、エルナは驚いたように目を瞬いた。
「まぁ、姫様。それは……」
そのとき、東屋のすぐ近くに人の気配をじ、エルナは口を閉ざしてそちらに視線を送った。
「姫様、あの方……」
エルナの視線を追ったフローラは、そこに見覚えのある令嬢の姿を見付けた。すらりとした長に栗の巻き髪の異國の令嬢、ロズリーヌである。
ロズリーヌは1人のようだった。道に迷ったのか、キョロキョロと辺りを見回している。
そのしい顔が不意に東屋の方に向けられる。
ロズリーヌとフローラの視線がぶつかった。
予期せぬ遭遇に、フローラは咄嗟に表を取り繕うことも忘れ、無言でロズリーヌを見つめた。
驚いたのはロズリーヌも同じだったと見えて、一瞬きを止めてから、淑の禮を取る。顔を上げたときには、完璧なまでにしい笑みを浮かべていた。
そのときにはもう、フローラも15年の間に培った王の笑みを取り戻していた。そして笑顔のままロズリーヌに聲を掛けた。
「ごきげんよう、ロズリーヌ様。ご一緒にお茶でもいかが?」
ドーナツ穴から蟲食い穴を通って魔人はやってくる
チェンジ・ザ・ワールド。 世界を変えたい! 若者達の強い想いが國を変えていく。虐げられていた亜人種が國を取り戻すために立ち上がる物語。 物語の舞臺は世界の最果てに浮かぶ大陸アニュラス。人間と亜人種が暮らす大陸である。 闇の集合體──突如、現れた時間の壁により大陸は分斷される。黒い壁は人々の運命まで変えてしまった。 ディアナ王女もその一人。他國王子と婚約儀の後、帰國できなくなる。 宿営中、盜賊に襲われ、従者のユゼフは王女だけ連れて逃げることに。同時に壁の向こうで勃発するクーデター。王女は魔物にさらわれて…… 成り行きで同行することになった元貴族だが、今は浮浪者のおじさんと共にユゼフは王女を助けに行く。
8 92不老不死とは私のことです
うっかり拾い食いした金のリンゴのせいで不老不死になってしまった少女、羽鳥雀(15歳)。 首の骨を折っても死なず、100年経っても多分老いない彼女が目指すは、不労所得を得て毎日ぐーたら過ごすこと。 そんな彼女は、ラスボス級邪龍さんに付きまとわれながらも、文字通り死ぬ気で、健気に毎日を生きていきます。 ※明るく楽しく不謹慎なホラー要素と、微妙な戀愛要素を盛り込む事を目指してます。 ※主人公とその他アクの強い登場人物の交遊録的なものなので、世界救ったりみたいな壯大なテーマはありません。軽い気持ちで読んでください。 ※魔法のiらんど様に掲載中のものを加筆修正しています。
8 64俺は、電脳世界が好きなだけの一般人です
簡単に自己紹介をしておこう。 俺は、高校生だ。確かに、親父に騙されて、會社の取締役社長をやっているが、俺だけしか・・・いや、幼馴染のユウキも社員になっていた・・・と思う。 俺の親父は、プログラマとしては一流なのだろうが、面倒なことはやらないとという変わり者だ。 そんな親父に小學生の頃から、プログラムやネットワークやハードウェアの事を叩き込まれてきた。俺が望んだと言っているが、覚えているわけがない。 俺が、パソコンやネットワークに詳しいと知った者からお願いという名の”命令”が屆くことが多い。 プログラムを作ってくれとかなら、まだ話ができる。パソコンがほしいけど、何がいいくらいなら可愛く感じてしまう。パソコンが壊れた、辺りの話だと、正直何もできないことの方が多い。 嫌いな奴が居るからハッキングしてくれや、元カノのスマホに侵入してくれ・・・犯罪な依頼も多い。これは、”ふざけるな”斷ることができるので気持ちが楽だ。それでも引き下がらない者も多い。その時には、金銭の要求をすると・・・次から話にも來なくなる。 でも、一番困るのは、”なんだだかわからないけど動かない”だ。俺は、プロでもなんでもない。 ただただ、パソコンが好きで、電脳世界が好きな”一般人”なのです。 そんな”一般人”の俺に、今日も依頼が入ってくる。
8 128魔力、愛、君、私
姉を探すリルと戦士のハルマ、 お互い同じ國の出身でありながらリルには小さな身體で殘酷な過去を抱えていた。 メーカーお借りしました() https://picrew.me/share?cd=cljo5XdtOm 亀さんペースですごめんなさい
8 119全ての才能を一瞬で得た者
才能が無かった少年ロードは家族から馬鹿にされ、蔑まれていた。學園てはイジメられていた。 そんなロードがある事件をきっかけに才能と力に目覚める、目覚めた力で家族に學園の奴らに復讐目指し、邪魔するもの全てを破壊する物語。
8 187永遠の抱擁が始まる
発掘された數千年前の男女の遺骨は抱き合った狀態だった。 互いが互いを求めるかのような態勢の二人はどうしてそのような狀態で亡くなっていたのだろうか。 動ける片方が冷たくなった相手に寄り添ったのか、別々のところで事切れた二人を誰かが一緒になれるよう埋葬したのか、それとも二人は同時に目を閉じたのか──。 遺骨は世界各地でもう3組も見つかっている。 遺骨のニュースをテーマにしつつ、レストランではあるカップルが食事を楽しんでいる。 彼女は夢見心地で食前酒を口にする。 「すっごい素敵だよね」 しかし彼はどこか冷めた様子だ。 「彼らは、愛し合ったわけではないかも知れない」 ぽつりぽつりと語りだす彼の空想話は妙にリアルで生々しい。 遺骨が発見されて間もないのに、どうして彼はそこまで詳細に太古の男女の話ができるのか。 三組の抱き合う亡骸はそれぞれに繋がりがあった。 これは短編集のような長編ストーリーである。
8 161