《【書籍6/1発売&コミカライズ配信中】辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に勵みます》第32話 シャルロット(3)
何もかもがうまくいき、全てが手にった。
エルネストを丸め込んで、自分と婚約させた。
初めのうちは難を示していた王も、エルネストと婚約してもいいという令嬢がほかに一人もいないことがわかると、どこか投げやりな調子で婚約を認めた。
シャルロットはフランシーヌの存在を警戒していたのだが、幸いなことに、フランシーヌは第三王子のクロードとの話がまとまりかけていた。
運が向いてきた。
この調子でいけば、父の爵位も上がるかもしれない。
王族の結婚相手は侯爵家以上というのが暗黙の了解だ。
ついにシャルロットも侯爵令嬢だ。
「後で陛下からもお話があると思うけど、私、エルネストと婚約することにしたわ」
「バカを言うな」
「どうして? そうなったら、お父様も侯爵に位が上がるかもよ?」
父はなぜか苦蟲を噛み潰したような表になった。
「ねえ、第二王子と結婚するんだから、新しいお城くらい建ててくれるでしょ?」
「どこに、そんな金がある」
「どこにって……」
侯爵家になって、王家とつながりもできるのだから、お金の心配なんかしなくもいいのに。
「もう、うちは貧乏子爵家じゃないのよ?」
せっかくシャルロットが頑張ったのに、父はただ「おまえは本當にバカだ」と言っただけだった。
父かエルネストがお城を用意するまでの間に、住んでみたいところがあった。
アンジェリクのためにコルラード卿が用意したモンタン公爵家の離れだ。離れと言ってもちょっとした城と変わらない。はっきり言ってバラボー子爵家より広くて立派だ。
あれを自分たちの住まいにしよう。
王都の中心にあって、広々していて、裝は豪華だし、使用人は公爵家の者を好きなように使える。あんなにいいところはない。
なんならずっと住んでもいい。
ところが……。
コルラード卿は、急に手のひらを返したようにシャルロットを突き放した。
離れに住むことはおろか、これからは買いの支払いも自分の父親に回すようにと言ってきた。店の者にもそう言っておくと。
「おまえは我が公爵家の娘ではないのだからね」
コルラード卿の言葉に耳を疑った。
なぜ、今さらそんなことを言うの?
四人目の娘のようなものだと言ったのは、噓だったの?
恨みをこめて睨んでも、コルラード卿の態度は変わらなかった。
仕方なく家に帰ると、王からの使いが來て婚約が正式に整ったことが知らされた。
まだ運に見放されたわけではなかったと、ほっとをでおろしたのだが……。
「おまえ、エルネストなんか引きけて、どうするつもりだ……」
「どうするって?」
「知らないのか? 王族との結婚なんて、名譽以外、何もないんだぞ。うちみたいな貧乏貴族に、無駄にでかい名譽なんか必要ないだろ。侯爵になんか引き上げられたら、國の祭禮のたびに今までの何倍も出費がかさむし、第一稅率も上がる。領民から取る稅は、今でも上限いっぱいの四割なのに、どこから金を工面すればいいんだ」
「だって、エルネストは王子なんだから、領地やお金がたくさんあるんじゃ……」
「だから、今、言っただろう。名譽だけなんだよ。エルネストは王子と言う名の一文無しだ」
そんな……。
「だったら、これからどうなるの?」
「だから、こうして頭を抱えてるんだ。おまえが引いてきた貧乏くじなんだから、おまえがなんとかしろ」
これなら行き遅れのカトリーヌのほうがまだましだと言って、父は部屋を出ていった。
しばらく呆然としていたシャルロットだったが、ふとあることに気づいた。
最初からわかっていたことだ。
そもそもコルラード卿がいるから父は公爵家を継げなかったのではないか。
そう気づいてしまうと、ひどく理不盡な気がしてきた。
「そうよ。伯父様がいなければ、お父様がモンタン公爵だったんだわ」
父親がモンタン公爵ならば、第二王子との結婚はすばらしい名譽になる。
すでに、エルネストとの婚約は整っているのだし、あとは父に公爵になってもらえばいいのではないか。
「伯父様には悪いけど……」
だが、コルラード卿にも非がある。
アンジェリクの離れを、素直にシャルロットに譲ってくれればよかったのだ。
王都での買いにも口うるさく言わないで……。
「自業自得よね」
王都の店で買ったものをお金に換える時、闇の業者を使うことがあった。買ってすぐのものだと、正規の業者はモンタン家に確認などしてうるさいのだ。
闇の業者はクリムという地區にあった。
犯罪が多く、近づくなと言われていたが、行ってみればたいしたことはなかった。し薄汚れたじはするけれど、別に怖い目にも遭わなかった。
釘やインクやそのほかの嫌がらせに使った品は、あのあたりの者に売りに行かせた。
あそこには、底辺令嬢にも頼めないことを頼める人間がいる。
「仕方ないわよ。私に冷たくするからいけないよ。伯父様……」
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