《【書籍6/1発売&コミカライズ配信中】辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に勵みます》第36話 裁きの準備
モンタン家に戻ると、所持する馬の中で最も足の速い馬を借りてセルジュが旅立った。
晝過ぎのことだ。
途中、どの領地に立ち寄っても馬を替えられるように、アンジェリクはフクロウ便を飛ばしておいた。
セルジュさえ疲れなければ最短で二日、さすがにそれは急使の速さなので、二日半と見て、明後日の夕方か明々後日の晝までにはブールに著いてくれるだろう。
そこからはラッセに乗って、半日で王都に戻れる。
「確かに、こき使ってるわ」
ほとんど不眠不休で丸三日働けと言っているようなものだ。
ふだんのセルジュを知っているし、ブランカの時のことがあるから、頼んでも大丈夫だと思えるが……。
(大丈夫よね。力はあるもの……)
一瞬、夜のことを思い出してしまい、一人で赤くなってしまった。
セルジュを見送ると、最初に、王に謁見を申し込む手紙を書いた。
多忙な王に會うためには、ふつうならひと月前には申し込む必要があるが、そこは公爵家の力とフランシーヌの名前で、時間を取ってもらう。
以前ならアンジェリクの名で會ってもらえたかもしれないが、エルネストとの婚約が破棄された一件があるから、今はむしろマイナス要因だろう。
その點を考慮するとアンジェリクに會ってもらえるかすら心配だが、「父の件で」と書けば無下にはされないはずだ。
フランシーヌだけでなくマリーヌにもサインをもらい、三人の連名で願い出た。
次にアンジェリクがしたことは、馬車を出してもらって友人たちを訪問することだ。
手紙を書いてくれた令嬢たちのうち、正直に自分の罪を告白し、アンジェリクに謝りたいと書いてきた令嬢のもとを訪ねた。
釘を靴にれた令嬢や、ドレスにインクをこぼした令嬢などだ。
ほとんどの人が結婚していた。
嫁ぎ先が遠い場合は諦めたし、立場的に証言が難しいと言われれば無理にとは言わなかった。それでも、今は夫人となった令嬢たちの多くが、協力したいと言ってくれた。
「シャルロットのしたことが許せないの」
「自分のしたことも許せない」
「アンジェリクのためになるなら」
王の前でかつて自分の犯した過ちを語るのは覚悟のいることだ。
友人たちの勇気に、アンジェリクは謝した。過去のことは、もうなんとも思っていなかった。
最後に、フレデリクに付き添ってもらってクリムに行った。王都の中でも荒んだ地區だ。
アギヨン牢獄で會った犯人の男の家族を訪ねて、男がどのような人かを聞いた。
男の名はエドガール・バルトと言い、元は城門を守る兵士だった。
平民出の兵士が多い中、バルトの上司は下級貴族の三男で、理不盡な要求をバルトに繰り返した。金をたかられることも多かった。
バルトが斷ると、兵舎で起きた竊盜事件の犯人はバルトだと上に告げ口した。
上も下級貴族だったため、ろくに調べもしないでバルトが犯人にされた。仕事をクビになり、前科者となったバルトはまともな職に就けず、クリムで用心棒のような仕事をして生計を立てていた。
「でも、この子が……」
バルトの妻が娘を抱きしめる。
(病気なのね……)
だいたいわかったわと、アンジェリクはバルト夫人の話を遮った。
しかがみこんで、母親に抱かれている子どもに目の高さを合わせる。
「お名前は?」
「マリー……」
「マリー、どこが痛いの?」
「お……。息をするのが、苦しいの……」
マリーの目を見て頷きながら、を起こした。
「フレデリク、誰かに頼んで、マリーとバルト夫人を一番近くの領地まで送ってあげて」
「モレルでよろしいですか? 先月、子どもを診る専門の醫者がりました」
「ええ」
アンジェリクは振り返り、有能な執事を労った。
「さすが、モンタン公爵家の執事だわ」
「おそれいります」
クリムを出て大通りに停めた馬車に乗ろうとした時、誰かに見られている気がしてあたりを見回した。特に見知った顔はなかった。
「このあたりは騒ですからね」
また取りが狙っていたのかもしれないとフレデリクは言い、すぐに出すようにと者に命じた。
城に帰ると、マリーヌが「陛下からお返事が來てるわ」と言って書簡を差し出した。
謁見を許可するもので、二日後の日付が記されていた。
「思ったより早かったわ」
セルジュが城を出て今日の晝で丸二日。戻るのはおそらく明日の晝か夕方だ。
タイミングによっては手紙の提出は後になるかもしれないと思ったが、大丈夫そうだ。
これで準備は整った。
あとはシャルロットを呼び出すだけだが、念のため誰かに見張らせておいたほうがいいだろうか。
短期間に準備を整えたので、気づいてはいないだろうが……。
傾き始めた日差しの下を、離れに向かって歩いていた。
し頭を休ませたかったので、侍は付けなかった。
中庭を通り過ぎた時、突然、背後から人が近づく気配がした。あっという間だった。
振り向いたアンジェリクは大きく目を見開いた。
「シャルロット……!」
シャルロットの手には護用の短剣が握られていた。
たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。
下にある★ボタンやブックマークで評価していただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
約200日後に死ぬ俺。業界初!…かは知らないけどリアルタイム小説! 5月19日以降、 物語はリアルタイムで進みます。 ┛┛┛ のんべんだらりと生きる高校2年男子、 小鳥遊知実(たかなし ともみ)。 ある日突然、頭痛で倒れ、 病院で目覚めたとき 半年の余命か 今までの記憶がなくなる可能性の高い大手術か 選択を迫られることになる。 そんな狀態にも関わらず、 無情にも知実の學校生活は穏やかではなかった。 1⃣全校生徒をまとめきれないワンマン文化祭実行委員長。 2⃣學校の裏山を爆破しようと計畫している馬鹿女。 3⃣ロボみたいなイエスマンの心を閉じた優等生のご令嬢。 4⃣人生を全力で寄りかかってくる俺依存の幼なじみ。 5⃣諦めていた青春を手伝う約束をした貧乏貧乏転校生。 おせっかいと言われても 彼女たちを放っておくことが どうしてもできなくて。 ……放っておいてくれなくて。 そんな知実が選んだ道は。 悲しくて、あたたかい 友情の物語。 ※病気は架空のものです。 ※第6部まであります。 ┛┛┛ エブリスタ・ノベルバ同時公開。 ノベルバは時間指定でリアタイ更新です。 16時一気読みしたい人はエブリスタで。 (長すぎる日は16時と20時に分けます) リアタイ感をより味わいたい人はこちらで。
8 101【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜
サムライに憧れる高校生、高河孝(17)がVRMMORPG內で『マサムネ』となり、理想のサムライ像を模索する物語。 しかし昨今のゲームではジョブとしてのサムライはあれど、生き様を追體験するものは見つからなかった。 マサムネがサムライに求めるのは型や技ではなく、どちらかといえば生き様や殺陣の方に傾倒している。 數々のゲームに參加しつつも、あれもこれも違うと直ぐに辭めては誘ってきた友人の立橋幸雄の頭痛の種になっていた。 だと言うのに孝は何か良さそうなゲームはないか? と再び幸雄を頼り、そこで「頭を冷やせ」という意味で勧められた【Imagination βrave】というゲームで運命の出會いを果たすことになる。 サムライに成れれば何でも良い。そんなマサムネが最初に選択した種族は獣人のワーウルフ。コボルトと迷ったけど、野趣溢れる顔立ちが「まさにサムライらしい」と選択するが、まさかその種族が武器との相性が最悪だとはこの時は気づきもしなかった。 次にスキルの選択でも同じようなミスを冒す。あろうことかサムライ=刀と考えたマサムネは武器依存のスキルを選んでしまったのだ。 ログイン後も後先考えず初期資金のほとんどを刀の購入代金に充てるなど、本來の慎重な性格はどこかに吹き飛び、後にそれが種族変調と言う名のサポートシステムが影響していることに気付くが後の祭り。 こうして生まれたnewマサムネは、敵も倒せず、死に戻りしては貯蓄を減らす貧乏生活を余儀なくされた。 その結果、もしかしてこれはハズレなんじゃと思い始め、試行錯誤を繰り返したその時─── このゲームの本來の仕掛けに気づき、[武器持ちの獣人は地雷]という暗黙のルールの中でマサムネはシステム外の強さを発揮していくことになる。 そう。ここはまさにマサムネが夢にまで見た、後一歩物足りないを埋めるImagination《想像力》次第でスキルの可能性が千差萬別に変化する世界だったのだ。
8 99No title
「人は皆’’才能’’という特別な力を持っている」 森で暮らす青年レイスは、ある日突然「なんでもひとつだけ願いを葉えるから」と訳も分からず國王に魔王討伐の依頼をされる。 幼馴染のカイと共に、お金も物資も情報もないまま問答無用で始まってしまった魔王討伐の旅。 しかし旅をしていく內に浮かび上がってきた人物は、2人の脳裏に在りし日の痛烈な過去を思い出させる。 才能に苛まれ、才能に助けられ、幸福と絶望を繰り返しながらそれでも生きる彼らは、どんなハッピーエンドを迎えるのか。 初めてなので間違えてるとこは教えて頂けると大変幸せます。 駄作ですが暖かい目で読んでやってください( _ _)
8 103「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。
ある日大學中退ニートが異世界に転生! 「最強」に育てられたせいで破格の強さを手に入れた主人公――スマルが、強者たちの思惑に振り回されながら世界の問題に首を突っ込んでいく話。
8 183俺、自分の能力判らないんですけど、どうしたら良いですか?
異世界へ赴き、"異彩"を用いて任務をこなす"開拓団"を育成する教育機関、"學園"へと入學した|御笠《みかさ》 |琥太郎《こたろう》。しかし彼は、異彩の能力すら分からず劣等生のレッテルを貼られてしまう。 で・す・が!! これ、キーワード見てみ?"戀愛"だぜ? 有りますとも、戀愛。彼女いない歴=年齢の寂しい非リアどもに次ぐ。ついでにそうじゃないリア充どもにも次ぐ。 お・ま・た・せ☆ ハーレム?始発電車でお帰り願ったよ。さぁ! 野郎共!一人につき、一人のヒロインだそ? 一夫多妻?我が辭書にそのような文字は無い! はい、調子乗ってました。すいません。ハードル高すぎでした 昨今のハーレム系に一言物申したい。面白いよ?めっちゃ面白いよ?だけどさ?現実見てみ?やれ、不倫だ、あーだこーだ世間からひっ叩かれるんだぜ?そんな世の中でハーレムはちとハードル高くね? と、言うわけで!書いてやりましょうとも!思わず「こんな戀愛をしてみたい!」と思うような物語を! と、言うわけなので、「ハーレムものは、ちょとお腹いっぱいかな?」って方にオススメなので、暇な時にいかがでしょう? あ、プロローグはほぼ説明文だから後で読んでも変わらんよ。
8 116現人神の導べ
この物語は、複數の世界を巻き込んだお話である。 第4番世界:勇者と魔王が存在し、人と魔が爭う世界。 第6番世界:現地人が地球と呼ぶ惑星があり、魔法がなく科學が発展した世界。 第10番世界:勇者や魔王はいない、比較的平和なファンタジー世界。 全ては4番世界の勇者召喚から始まった。 6番世界と10番世界、2つの世界から召喚された勇者達。 6番世界の學生達と……10番世界の現人神の女神様。 だが、度重なる勇者召喚の影響で、各世界を隔てる次元の壁が綻び、対消滅の危機が迫っていた。 勇者達が死なない程度に手を貸しながら、裏で頑張る女神様のお話。 ※ この作品の更新は不定期とし、でき次第上げようと思います。 現人神シリーズとして処女作品である前作とセットにしています。
8 129