《【書籍6/1発売&コミカライズ配信中】辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に勵みます》第37話 ラッセとセルジュ
両手で短剣を構えて突進してくるシャルロットを、アンジェリクはを橫に向けることで瞬時に躱した。
父に習わされた護が初めて役に立つのが、従姉妹の襲撃を躱すためだなんて。
「シャルロット……」
城と離れの間には新婚夫婦のプライバシーを守るために目隠しの木が植えられている。
西の空がオレンジに染まり始め、明かりを燈す前の中庭はいつも以上に見通しが悪かった。
晩餐を前に使用人たちは忙しく走り回っている。
アンジェリクは誰かに助けてもらうことを諦めた。
素早くドレスの襞に隠した短剣を取り出し、右手で構えながら、まだ膨らんでいないお腹に左手を當てた。
(セルジュ……)
を噛んで、心の中で夫の名を呼んだ時、頭上を大きな影が橫切った。
それは、ギャオーと巨大な悲鳴に似た聲を上げ、赤く染まる空を旋回し、中庭のし広くなった場所を目指して降りてきた。
「ラッセ……! セルジュ……」
早い……。
急使と同じ速さでブールまで行ってくれたの?
「な、なに……?」
恐怖に引きつった顔でシャルロットが後ずさる。
もう一度、ラッセがギャオーと鳴くと、腰を抜かして石の床に倒れ込んだ。
ザッと音を立ててラッセの爪が床を摑んだ。
もちをついたまま後ろに下がっていくシャルロットを、ラッセは鼻からフンと息を吐いて一瞥する。
夕を浴びてきらめく背からセルジュが飛び降り、アンジェリクに駆け寄ってきた。
「アンジェリク……!」
「セルジュ」
「これは……」
いったいどういうことだと、アンジェリクを抱き寄せながら眉をひそめた。
赤く染まった夕暮れの中庭で、短剣を手にして向かい合う二人の婦人を互に見る。
アンジェリクをそっと離すと、もちをついている見知らぬの前にセルジュは立った。
長の若い男を見上げたシャルロットは、狀況も忘れてしばしその貌に見惚れている。
セルジュが冷ややかに見下ろした。
「アンジェリク、人を呼んでおいで」
セルジュの言い方は優しかった。だが、そのしい顔は氷のように冷たく、青くる目の奧には怒りの炎が揺らめいている。
びるように上目遣いをするシャルロットを橫目に見ながら、アンジェリクは城に向かった。
(この期に及んで、人の夫に秋波を送るか……)
はらわたが煮えくり返る。
アンジェリクに呼ばれ、慌てて中庭に駆けてきた従僕と侍たちは、そこで一斉に悲鳴を上げた。
「な、な、何かいる!」
「何?」
驚いて逃げようとする彼らを、ラッセが不本意そうに薄目で見ていた。
「大丈夫よ、みんな!」
「それより、手を貸してくれ」
セルジュに命じられて、ドラゴンにびくびくしながらも従僕たちがシャルロットを捕らえた。
その橫で、もう行くよ、というふうにラッセは床を蹴り、短くグルルとを鳴らしている。
ドラゴンは夜目が利く。ブールに戻りたいのだ。
「サリと卵が待ってるものね。ラッセ、ありがとう」
手をばして軽く腹をでてやると、ラッセは翼を広げ、あっという間に茜の空に消えてしまった。
中庭に集まった従僕と侍は、呆気に取られたように、暮れてゆく空をただ見上げていた。
「アンジェリク様……!」
し遅れてフレデリクが走ってきた。
セルジュが短く狀況を説明すると、フレデリクは顔をしかめた。
「そのようなことが……」
「あの時、誰かに見られていると思ったのは気のせいじゃなかったみたい」
「クリムの近くで馬車に乗る時のことですか?」
きっと、あの時、シャルロットはアンジェリクを見ていたのだ。
アンジェリクがバルトの家に行くのを見ていたのか、それとも、シャルロット自がバルトの家に用があったのか……。
(マリーとバルト夫人に何かしようとしたの……?)
そこまでは確信が持てない。
どちらにしても、バルトのことをアンジェリクに知られたと、シャルロットは気づいた。
セルジュがアンジェリクを抱き寄せる。
氷のように冷たい顔を、シャルロットが連れていかれた通路に向けていた。
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