「お、おい、なんだっ、この出狂みたいなネーちゃんは？」

剣豪ガインが、出現した鍛冶の神ヴェルンドを見て、呆気に取られた。

彼は水著みたいな布面積のない服を著ていた。

僕も目のやり場に困ってしまう。

「ヴェルンドの持つ【創世の炎鎚】は、炎の力を宿した寶だからよ。しでも涼しく過ごすために、ヴェルンドは薄著をしているの」

ルディアが鍛冶の神ヴェルンドについて、解説する。

そういば、あの巨大ハンマーからジリジリとあぶられるような熱気をじるな……

あっ、ソフトクリームが熱で溶けて、ゆっくり食べていたイヌイヌ族が涙目になっている。

「【創世の炎鎚】のような寶を持っている神は、ＳＳRの中でも激レアよ！　それになんといってもヴェルンドは……」

「私は武を作る鍛冶の神です。マスターにふさわしい武を作って差し上げたいのですが。

この村にはオリハルコンや神鉄（アダマンタイト）はないのでしょうか？」

ヴェルンドが僕に尋ねてきた。

「そんな神話に登場するような激レア金屬は無いな」

さも有るのが當然のように言われて、當してしまう。

「困りました。では、ミスリルくらいなら、ありますでしょうか？」

「それも無い……」

ミスリルは最高級の武が作れる魔法金屬だ。

かなり高価であり、Ｓランク冒険者くらいの稼ぎが無いと、ミスリル製の裝備は買えなかった。

オリハルコンや神鉄（アダマンタイト）は、さらに希な伝説級の金屬だ。

１０００萬ゴールドかけても手にるじゃない。

「それではマスターの手元にあるのは、鉄くらい？　それだと、せいぜい古竜を一撃で屠（ほふる）る程度の武しか作れませんが……」

「「いや、それで十分だから！」」

ルディアを除いた、その場にいた全員からツッコミがった。

それ以上の能を求めるなんて、一何と戦うつもりなんだろうか？

「えっ？　魔王と戦うにはもっと強い武が必要でしょう？」

ルディアは、なにやら首を傾げて、とんでもないことを言っている。

「いや魔王と戦うつもりとかは無いから。そのために復活を阻止する訳だし。

僕はここで、モンスターたちとの楽園を築いて、ノンビリ楽しく暮らすつもりなの」

そのための自衛の戦力は必要だが、古竜を倒せるほどの武があれば、武裝についてはもう十分だ。

「や、やりがいがありません。より強い武を、もっともっと強い武を作るのが、私の生き甲斐なのに……その程度の武で満足されては」

鍛冶の神ヴェルンドは、シュンとしていた。

の子に殘念そうな顔をされると、ちょっと罪悪が湧くな。

「イヌイヌ族さん。ミスリルも用意できますか？」

僕はミスリルを注文できないか、尋ねる。

「もちろん。ご用命とあらば、最優先でご用意させていただきますワン！」

イヌイヌ族は、さらなるビジネスチャンスに目のを変えた。

「ミスリルのお値段は、１キロ、２０萬ゴールドほどが相場になりますワン！」

げぇっ。やっぱり高い。

ロングソードの一般的な重量が1.1kg～1.8kg。ミスリル製の剣を作ろうとしたら、材料費だけで、一本２５萬ゴールドはかかる計算だな。

鍛冶の神ヴェルンドにミスリルをプレゼントしてあげたいのはヤマヤマだげと……

「うーん、それならガチャに課金した方が、費用対効果が良さそうだな」

今回も【神剣の工房】という指定した武の攻撃力を５倍にアップするスキルが手にった訳だし。

古竜を倒せるほどの剣をこれで強化すれば、もう無敵だと思う。

「そうでしょう。そうでしょう！　お金があったらガチャにつっこむ！　世界を救うために、それはとっても正しいことだわ！」

「グスッ……ルディア、希金屬が手にらないと私の存在意義が……」

ルディアを見つめる神ヴェルンドは、なにやら涙を浮かべていた。

「ああっ、まあ、それもそうよね。魔王と戦える武も用意しておきたいところだし、お金のやり繰りが大変だわ」

ルディアが腕組みして悩んでいる。

「それでしたら、出大サービスでミスリルの剣を一本、無料で差し上げますワン。

アルト様たちと、今後ともぜひ長くお付き合いさせていただきたいですし。

これでいかがでしょうかワン？」

「こ、このワンちゃん。イイ子……！」

提案したイヌイヌ族のリーダーを、神ヴェルンドが抱きしめた。

「て、照れるって……痛いワン！」

なにやら、イヌイヌ族が絶している。

強く抱きしめ過ぎたようだ。

「イヌイヌ族は力が弱いんだから、ダメだって！」

僕は慌てて、ヴェルンドを引き剝がした。

こ、これまた個的な神が仲間になったな。

とりあえず鍛冶の神ヴェルンドには、アルト村の『鍛冶擔當大臣』になってもらとしよう。