《【書籍化】盡くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?》高校生カップルの正しい過ごし方(休日編)④
晝時ということもあり、目當てのハンバーガー屋はかなり混んでいた。
りこはどうしたらいいのかわからないらしく、眉を八の字にして俺に視線を向けてきた。
頼ってくれているのが、その眼差しから伝わってくる。
誰かからこんなふうに信頼されることなんて初めてだから素直にうれしい。
しかも、その相手が好きな子なんて……。
りこが寄せてくれている信頼の気持ちを裏切りたくはない。
りこに心細い想いをさせないためにも、ここはこの店に慣れている俺がしっかりしないと。
……よし。まずは席を確保しよう。
ぐるっと店を見回すと、 運良く窓際に面した二人掛けの席が空いている。
ちょっと待っていてくれるようりこに告げ、財布を取り出したバッグをテーブルの上に置きに行った。
「ごめん、りこ。お待たせ」
そう言ってりこのもとに戻ると、なぜかりこはぽーっとした顔で俺のことを見つめてきた。
「りこ? どうしたの?」
「あっ! う、うん。えっと……あのね? 湊人くん王子様みたいで見惚れちゃった……」
「ごほっ……! なっ!? 王子様!?」
揺しすぎて思わず咽せてしまう。
俺の何を見たら王子様なんて単語出てくるのか。
俺が信じられないという表を浮かべたからか、りこは恥ずかしそうに目をぎゅっと瞑ってから言葉を付け足した。
「だってあんなふうに席を用意してくれるなんて、キュンとしちゃうよ……」
たしかにりこに恥をかかせたくなくて頑張りはしたけど、まさかここまでの言葉をもらえるとは思ってもみなかった。
でも、ここで調子に乗ったら臺無しだよな……。
「あれくらいは普通じゃないかな」
できるだけ冷靜なふりをしてそう言ってみる。
「そんなことないよぉ。私一人だったら絶対まごついちゃってたと思うし。ふふっ。今日は湊人くんのかっこいいところがたくさん見れてうれしいな。いつもかっこいいけど、今日は人同士として過ごせているからかな? なんだかいつも以上にドキドキするの」
「……っ」
りこの言葉に思わず心拍數が早くなる。
このままでは揺しまくってることがりこにバレてしまう。
そんな格好悪いところできれば見せたくない。
俺は不自然な咳払いをしてから、レジに並ぼうと提案した。
メニューを見ながら何を注文するかりこに尋ねると、俺と同じものがいいと言う。
順番が回ってきた。
普段頼むチーズバーガーのポテトセットを二人分機械的に頼むと、りこはまた先程と同じ焦がれるような視線を向けてきた。
席に著き、向かい合わせで座る。
二人掛けのテーブルは小さく、しじろぎするだけで膝と膝がれ合った。
「あっ、ご、ごめん」
「ううん、大丈夫……!」
ぎこちない言葉をわし、はにかんだ視線を絡ませる。
いつも一緒に食事を摂っているのに、いつもと全然違うから、どうしようもないくらいりこの存在を意識してしまう。
一旦、冷靜になるんだ。
このままじゃ不自然すぎて、りこに想いがバレてしまうぞ……。
頭ではそう思っているのに、りこから視線を逸らさない。
だってりこ、行や表のひとつひとつが逐一可いすぎるんだ。
ああ、ほら。今だってまた。
手を合わせ、「いただきます」と小聲で言ったのに、なぜか両手で持ったハンバーガーを見つめたままパチパチと瞬きを繰り返している。
ちょっと不思議なその仕草がらしくって、口元が綻ぶ。
「りこ、どうしたの?」
「えっと……ハンバーガーって食べるの難しいなって思って……」
「ああ、たしかに。注意して食べてもソースが口の周りに付いちゃったりするよね」
「もし口の周りにソースが付いちゃったらそれを湊人くんに見られるのは恥ずかしすぎるし。でも、ソースが付かないよう大きなお口で食べるのも恥ずかしくて……。うう。乙心は複雑なのです……」
乙心ってどういうことだろう?
「だけど、ほら、ちゃんと紙ナプキンがあるから気にしなくて大丈夫だよ。それに、口にソースを付けようが、大きな口でハンバーガーを食べようが、何をしたってりこなら可いから。全然、気にしなくていいと思うよ」
乙心のわからない俺にフォローされても響かないかもしれないが、 しでもりこの気持ちを楽にしてあげたくて思ったことをそのまま伝えてみた。
その直後、りこの顔が真っ赤になった。
「湊人くん、今、可いって……」
「はっ……!」
し、しまった……!
つい勢い余って……!
「い、今のはきっと、や赤ちゃんに対する可いだから……喜んじゃだめっ……」
揺して固まっている俺の向かいで、りこが自分自に何かを言いきかせている。
「り、 りこ?」
躊躇いがちに聲を掛けると、りこは赤面したまま悔しそうな顔になり、「今の言葉、録音しておきたかったよぉ……」と呟いた。
えっ。なんで……?
「りこは可いなんて言葉、言われ慣れてるんじゃないの?」
「湊人くんには言われたことないよ」
「いや、俺じゃなくて、他のヤツに」
「他の人じゃ意味ないもん……」
りこがぷうっと口を膨ませる。
なぜ他の人じゃだめなのかはわからなかったが、 可いと伝えたほうがいいのはなんとなく 察せられた。
もし、今後りこを可いと思うたび、照れずにしっかり言葉にしたら……。
こんな俺でもりこを喜ばすことができるのだろうか?
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容は、『膝枕』と『ホラー映畫を見る』と『お互いの好きなところ』についてです。
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