《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》10.悪役令嬢はめげない
屋敷に帰ると、ドレスという武裝を解除するなり、ベッドへ倒れ込んだ。
ぼふん、とをけとめてくれるベッドにをじながら、もう無理……と呟く。
それだけ心労をじていた。
(シルヴェスター様があんなに手強いなんて、聞いてないわよ)
フェルミナに対抗するどころではない。
あれからというもの、會話の節々でシルヴェスターはクラウディアから何かを引き出そうとし、お茶會の後半は胃にが空きそうだった。
幸い十分な知識があったので、ミスを犯すことはなかったけれど、もう一対一でのお茶會は勘弁願いたい。
(共通の家庭教師がいるおかげで、バカなふりもできないし)
刺繍の腕前だけじゃなく、學業の績もシルヴェスターには筒抜けだった。
會話は弾んだが、それも表面的なものでしかない。
一時間に満たない流だったけれど、永遠にも思える時間、気を張り続けていた。
(ボロを出せば、そこから責めてくる雰囲気だったわよね。わたくし、やっぱり嫌われているのかしら……いっそ責められれば良かった? あぁ、もうっ、正解がわからないわ!)
正直なところ、フェルミナのことで手いっぱいなのだ。
シルヴェスターとの流は重荷でしかない。
今後もあのような化かし合いが続くなら、フェルミナに押し付けたくもなる。
(けど、あの悪に権力を握らせたくはないのよね)
そうなれば、斷罪の二の舞だ。
権力を持ったフェルミナは、すぐにクラウディアを排除しようとするに違いない。
自分のを守るためにも、現狀を維持するしかなかった。
気持ちは晴れないものの、ベッドのらかさが疲れを癒やしてくれたのか、自然と瞼が下がっていく。
知らず寢ってしまったクラウディアを起こしたのは、侍長のマーサだった。
「クラウディア様っ、なんてはしたない格好で寢ているのですか! ベッドにられるなら掛け布団を被ってください、風邪をひきますよ!」
(ベッドで寢ているのに、はしたないもないでしょうに……)
言い返したくなる気持ちをぐっと堪える。
ベッドでダイブしたままの寢姿以上に、風邪をひくのを心配してくれたのだとわかったからだ。
「ベッドに橫になられる場合は、枕に頭をのせて」
「ごめんなさい、次から気を付けます」
しかしお小言が終わりそうになかったので、しおらしく謝る。
そのあと母親の姿勢を真似て背筋をばせば、マーサは満足げに頷いて引き下がった。
どうやらマーサは、母親の力強い姿に憧れていたらしい。
(シルヴェスター様も、これぐらい扱いやすかったらいいのだけど)
「ではクラウディア様、なりを整えてくださいませ。旦那様がご帰宅されます」
「お父様が? あまり間が空いていないわね」
「殿下とのお茶會を気にしておられるのではないでしょうか。それと旦那様がお屋敷に帰られるのは、普通のことです」
なるほど、とマーサに頷きながらも、普通じゃないのが今までの父親だった。
シルヴェスターとのお茶會を基點に、流れが変わってきているのだろうか。
(きまぐれな神様も楽しんでくれているかしら)
ヘレンについて祈ったとき、そういう約束をした。
だからこそ、未來は変えられると信じられているところもある。
(じゃなきゃ、人生をやり直す意味なんてないものね)
今まで放置していたクセに、自分にとって都合が良いと干渉してくる父親には辟易するが。
これもヘレンのため、とクラウディアは拳を握る。
彼の娼館行きを止めるのに、父親の協力があって困ることはない。
侍たちに頼んで報は集めてもらっている。
殘念ながら狀況的に伯爵家の沒落は止められないが、ヘレンはまだ救える可能があった。
(お父様の機嫌が良さそうだったら、そろそろヘレンのことも相談してみましょうか)
伯爵家沒落後、ヘレンはお金に困って娼館にを売ったと聞いていた。その頃には他家に働きにいく伝手もなくなっていたと。
娼館へ行く前のヘレンは貴族令嬢でしかなく、働くという意識が薄かった。彼もクラウディアと同じく、娼館で人生を學んだのだ。
生活できるお金があればいいのなら、公爵家で侍として雇えばいい。
今ならクラウディアという「本人も知らない」伝手がある。
自分の心にさえ目を瞑れば、シルヴェスターとのお茶會は功したといっても差し支えない。
これをカードに、クラウディアは父親と渉することを決めた。
僕はまた、あの鈴の音を聞く
皆さまの評価がモチベーションへとつながりますので、この作品が、少しでも気になった方は是非、高評価をお願いします。 また、作者が実力不足な為おかしな點がいくつもあるかと思われます。ご気づきの際は、是非コメントでのご指摘よろしくお願い致します。 《以下、あらすじです↓》 目を覚ますと、真っ白な天井があった。 橫には點滴がつけられていたことから、病院であることを理解したが、自分の記憶がない。 自分に関する記憶のみがないのだ。 自分が歩んできた人生そのものが抜け落ちたような感じ。 不安や、虛無感を感じながら、僕は狀況を把握するためにベットから降りた。 ーチリン、チリン その時、どこからか鈴が鳴る音が聞こえた。
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