《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》31.悪役令嬢は生徒會に參加する

授業が本格化するのに合わせて、生徒會の活も正式にはじまった。

生徒會がある日は、四人揃って生徒會室へと向かう。

「僕だけ椅子に座らせてもらえないんですよね」

トリスタンはシルヴェスターの護衛としているだけなので、生徒會室にいる間は、ずっと立ちっぱなしだった。

項垂れるトリスタンに、フェルミナが気遣わしげに聲をかける。

「お辛いですよね。お兄様に相談しましょうか?」

「大丈夫です。お小言が倍に増えるだけですから……」

トリスタンも自分の立場はわきまえている。

ただグチをこぼしたくなっただけだ。

「會長は屋敷でもあんな……いや、フェルミナ嬢も、クラウディア嬢も優秀でしたね」

口うるさいのか訊こうとしたところで、自分とは違うことに気付いたのだろう。

途中で自問自答が立した。

「お姉様は凄いですが、あたしはまだまだで。厳しい視線を向けられることも多いです」

「フェルミナ嬢でもですか! 僕だけじゃないなら、救われます」

フェルミナが厳しい目で見られるのは、當人の言のせいである。

けれど、にこにこと笑うトリスタンがそれを知る由はない。

ちらりとシルヴェスターだけが、クラウディアへ視線を送る。

しかし二人の和やかな會話に、割ってるつもりはなかった。

不仲説はまだ殘っているものの、表向きクラウディアとフェルミナの関係は良好だ。

あえてそれを壊す必要もないだろう。

と、クラウディアは思うのだけれど、フェルミナは違った。

「意外だったんですけど、お姉様はあまり殿下とお喋りしないんですね」

何かと絡んでは、クラウディアに責められる可哀想な妹を演出しようとする。

「わたくしばかりが獨占するわけにはいきませんから」

「でも今だって……ちょっと冷たくありません?」

會話がないのはどうかと言いたいらしい。

クラウディアからすれば、シルヴェスターの好みの問題だ。

ずっと話しかけられたい人もいれば、そうじゃない人もいる。シルヴェスターは後者だろうと當たりをつけながら、當人を見上げた。

「そうかしら? シルヴェスター様はどう思われます?」

「クラウディアとの會話は歓迎するが、常に機嫌を取ってしいわけではないな」

放っておけば、誰かしらから話しかけられる人だ。

クラウディアの予想は當たっていたようで、シルヴェスターに気にした様子はない。

「殿下はお優しいんですね」

フェルミナには、シルヴェスターがクラウディアの意思を尊重したように聞こえたのか、いたわるような笑みを見せる。

その茶い瞳は、姉と付き合うのは大変でしょうと語っていた。

的外れなフェルミナの反応に、クラウディアはこめかみに手をあてる。

(自分の良いように解釈し過ぎでしょう)

下手をすれば相手への失禮になりかねない。

しかしシルヴェスターは穏やかな笑みを浮かべるばかりで、相変わらずを見せなかった。

もしかして面白がっているのだろうかと、ヴァージルの言葉が脳裏に蘇る。

――あいつは人の醜い部分を楽しむところがあるからな。

フェルミナの醜い、というより歪んだ部分にれ、楽しんでいるのだろうか。

何となくそんな気がして、フェルミナも報われないな、と思った。

生徒會室へれば、トリスタンがシルヴェスターの後ろに立ったのを合図に、會議がはじまる。

議長は、生徒會長であるヴァージルが務めた。

「毎年、生徒會では大きな催しを企畫する。それを功させることで、今期の生徒會の力を証明するのが狙いだ」

學園は學び舎であると同時に、社場でもある。

生徒に力関係をわからせるのはもちろんのこと、親である貴族にも自分たちが優秀な後継だと見せる必要があった。

「みんなには今年は何をするか意見を出してもらいたい。手元に配ってあるのは、昨年までの資料だ」

一斉に資料を捲る音が響く。

クラウディアもそれに倣ったが、提案する容は決めていた。

何せ、企畫された催しを「知っている」。

(ズルをしているようで、後ろめたいけど……)

ズルというなら、やり直し自がそうだろう。

これも、きまぐれな神様の采配だ。

とは思うものの、気後れしてしまうのには理由があった。

元の発案者がフェルミナなのだ。

だから前のクラウディアをはじめ、古參貴族は反発した。

けれど結局は、生徒會が古參貴族を鎮め、フェルミナが新興貴族をまとめたことにより、催しは功に終わる。

今回クラウディアが提案すれば、古參貴族の反発は防げるはずだ。

新興貴族寄りの企畫であるため、王族派であっても中立のリンジー公爵家――ヴァージル――も主導しやすい。

諸々を考えた結果、代案を考えるより、元々の企畫を提案することに決めた。

(既に案が頭の中にあるなら、フェルミナは面白くないでしょうね。でもわたくしだから、できることもあるはずよ)

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