《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》07.悪役令嬢は見抜く
腰のラインだ。
レステーアが近付いてくれたことで、より鮮明に確認できた。
立っている狀態だと上著で隠されてしまうけれど、くと服のシワから見えてくるものがある。
男の違いは々あれど、付き以外でわかりやすいのは、骨盤の形だった。
男は幅が狹く、は広い。
正確には骨盤に繋がる太ももの骨にも違いがあって、男は直線的、は曲線的にのアウトラインが変わってくる。
それは腰のくびれや、パンツの形になって現れた。
普段から魅力的なくびれを作ろうと努力し、観察しているクラウディアだからこその気付きだった。
特に娼婦時代の経験から、クラウディアは男のに通している。
レステーアは、ラウルと一緒に來た令息ではなく、令嬢だったのだ。
がパーティーで、ドレスではなく、パンツスタイルを選ぶことはまずない。
だから服裝で青年だと思い込んでいた。
その齟齬が、違和の正だった。
合點のいったクラウディアに、レステーアは淡い碧眼を細めて優しく笑う。
「ぼくの男裝を見破ったのは、ハーランド王國であなたがはじめてです。とても良い目をお持ちですね」
レステーアの言葉に、周囲が大きくざわめく。
バーリ王國側では、よく見抜いたな、という驚きが。
そしてハーランド王國側では、レステーアがであることに驚きが広がった。
一際近くで上がった聲にクラウディアが顔を向けると、トリスタンがいた。
(あら、いつの間に仲良くなったのかしら?)
トリスタンはいつも通りシルヴェスターの後ろで控えているものの、すぐ隣にはルイーゼの姿があった。
二人とも驚きを隠せないまま顔を見合わせている。
仲睦まじい二人の様子に、目が瞬いた。
(そういえばヘレンも、お兄様の好みを把握していたわね)
卒業記念の贈りものを選んでいるときも、その前からもヘレンは淀みなく相談にのってくれる。
クラウディアと同じくらい、ヘレンもヴァージルの好みを知っているからできることだ。
雇い主である公爵家の人間の好みを調べていたところで、不思議はないけれど。
ちなみにパーティー直前に贈ったブローチは、とても喜ばれた。
それはもう砂糖も溶けてしまいそうな表を返されて、どこが氷の貴公子なのかと周囲に問いたくなったほどだ。
相関図が近で更新されていたことに心の中でメモを取っていると、視線をじて顔を戻す。
ラウルが目を大きく開けてクラウディアを見つめていた。
ビターチョコレートの瞳が、驚きに染められている。
「これは凄い! バーリ王國でも初見で気付いた人間は、片手で數えられるほどだっていうのに!」
「お恥ずかしいです。わざわざ指摘することでは、ありませんわよね」
バーリ王國側の反応を見れば、これがレステーアの普通だとわかる。
珍しくはあるものの、見逃すのが正解だったのではないだろうか。
余計なことをしてしまったのではないかと不安に駆られた。
しかしそんな心は、ラウルに指先を持ち上げられたことで霧散する。
「先回りして白狀したのはレステーアなのに、クラウディア嬢は奧ゆかしいな。それでいてバラの花を咲かせたように華々しいあなたが、どんなダンスを踴るのか興味が湧いた。どうかオレと一曲踴ってもらえないだろうか」
奇しくもバラに例えたラウルから、同じように例えられて、れた指先が熱を持つ。
立場にかかわらず、社のためのダンスに制限はない。
相手が隣國の王弟ともなれば、シルヴェスターですら止めようがなかった。
「喜んで、お相手を務めさせていただきます」
定型句を返して、ダンスホールへ向かう。
平靜を裝いながらも、予想外のことに心臓は暴れ回っていた。
てっきりラウルは、誰ともダンスを踴らないと思っていたからだ。
(が、それもわたくしのような外見が、苦手じゃなかったの!?)
社の建前にしても、あの場にはルイーゼだっていた。
型や雰囲気を考えれば、ルイーゼのほうが好ましく映ったはずだ。
(公爵令嬢の分を重んじられたのかしら?)
さり気なくラウルを伺う。
彼が何を考えているのか知りたかった。
けれど見えた橫顔に思い出が重なり、懐かしさに切なさがりじる。
こんな形で再會するとは、夢にも思わなくて。
答えることなく別れたのが、申し訳なくて。
(落ち著きなさい、今日が初対面よ)
涙が浮かびそうになるのを堪える。
今できるのは、失禮にならない程度で、早くダンスを切り上げるぐらいだ。
それがラウルのためになることを、クラウディアはよく知っていた。
◆◆◆◆◆◆
「お兄様ったら、いつまで待たせる気かしら?」
馬車の中で獨りごちる。
王弟が留學するという、ハーランド王國の貴族にとっては衝撃的な発表があったものの、卒業パーティーはつつがなく終わった。
一度ヴァージルは、クラウディアと馬車に乗ったのだが、忘れものを思いだして會場へ引き返した。
「誰かにつかまっているのでしょうけど」
公爵家の嫡男。
社界でも氷の貴公子と呼ばれ、人気の兄を思えば、引き留める人がいてもおかしくはない。
けれどクラウディアが溜息をこぼすぐらいには、時間がかかっていた。
一人でいると、どうしてもラウルの顔が頭にちらつく。
考えても詮無きことだとわかっているのに。
「わたくしに出會うまでに何があったの……?」
王族ではなく、上級貴族だと言っていた彼。
そもそも王族に連なるものが、娼婦の請けをできるとは思えない。
だとすれば、やはり出會った頃には臣籍降下していたのだろう。
一貴族に下ったあとなら、平民を娶る抜け道はある。
よく耳にするのが、相手を縁深い貴族の養子にし、表面上の分を整える方法だ。
実際ラウルからも、バーリ王國の貴族との養子縁組みを提案されていた。
人としてではなく、正式な妻として求められていると、クラウディアはそこで知った。
「バカよね……」
請けは、娼館に大金さえ払えばいい。
もちろん娼婦が納得しているのが前提だけれど、クラウディアは正妻の座なんてんではいなかった。
「見かけによらず、責任が強いんだから」
今のラウルはどうだろう。
娼婦時代より、若い彼は。
なくとも接する中で、不快はなかった。
他人行儀なのは當たり前だ。
けどそれすらも、親になる前の――カウチで一人寢ていた――記憶を刺激するぐらいには、違いがない。
「また仲良くなれるかしら?」
「誰と仲良くなるつもりだ?」
今度は友人として付き合えたらと、何気なく呟いた言葉に返事があって、が固まる。
馬車の出り口から姿を現したのは、待っていた兄ではなく――。
「君はすぐに人の垣を越えてしまうから困る」
銀糸の髪が麗しい、思い人だった。
【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われた少女の手を取り、天才魔術師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔術師に溺愛される)
***マンガがうがうコミカライズ原作大賞で銀賞&特別賞を受賞し、コミカライズと書籍化が決定しました! オザイ先生によるコミカライズが、マンガがうがうアプリにて2022年1月20日より配信中、2022年5月10日よりコミック第1巻発売中です。また、雙葉社Mノベルスf様から、1巻目書籍が2022年1月14日より、2巻目書籍が2022年7月8日より発売中です。いずれもイラストはみつなり都先生です!詳細は活動報告にて*** イリスは、生まれた時から落ちこぼれだった。魔術士の家系に生まれれば通常備わるはずの魔法の屬性が、生まれ落ちた時に認められなかったのだ。 王國の5魔術師団のうち1つを束ねていた魔術師団長の長女にもかかわらず、魔法の使えないイリスは、後妻に入った義母から冷たい仕打ちを受けており、その仕打ちは次第にエスカレートして、まるで侍女同然に扱われていた。 そんなイリスに、騎士のケンドールとの婚約話が持ち上がる。騎士団でもぱっとしない一兵に過ぎなかったケンドールからの婚約の申し出に、これ幸いと押し付けるようにイリスを婚約させた義母だったけれど、ケンドールはその後目覚ましい活躍を見せ、異例の速さで副騎士団長まで昇進した。義母の溺愛する、美しい妹のヘレナは、そんなケンドールをイリスから奪おうと彼に近付く。ケンドールは、イリスに向かって冷たく婚約破棄を言い放ち、ヘレナとの婚約を告げるのだった。 家を追われたイリスは、家で身に付けた侍女としてのスキルを活かして、侍女として、とある高名な魔術士の家で働き始める。「魔術士の落ちこぼれの娘として生きるより、普通の侍女として穏やかに生きる方が幸せだわ」そう思って侍女としての生活を満喫し出したイリスだったけれど、その家の主人である超絶美形の天才魔術士に、どうやら気に入られてしまったようで……。 王道のハッピーエンドのラブストーリーです。本編完結済です。後日談を追加しております。 また、恐縮ですが、感想受付を一旦停止させていただいています。 ***2021年6月30日と7月1日の日間総合ランキング/日間異世界戀愛ジャンルランキングで1位に、7月6日の週間総合ランキングで1位に、7月22日–28日の月間異世界戀愛ランキングで3位、7月29日に2位になりました。読んでくださっている皆様、本當にありがとうございます!***
8 78【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
8 88意味がわかると怖い話(自作)
オール自作です。一話一話が少し長く、また専門知識が必要な話もあります。 解説は長くなってしまうので、省略verとフルverに分けて投稿します。 また、小説投稿サイト「小説家になろう/小説を読もう」に全く同じ作品が投稿されていますが、それは作者の僕が投稿したもので、無斷転載ではありません。
8 56ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件
MMORPG『スカイ・アース・ファンタジア』のサービス終了のお知らせ。 それを知った主人公の大空 大地(おおそら たいち)は、最後のアップデートで実裝されたドラゴンテイマーになろうと決意する。 その後、なんとか手に入れたジョブチェンジ用アイテムを使った結果、MMORPG『スカイ・アース・ファンタジア』のもとになった世界へと転生してしまうのであった…… これは、強くてニューゲームしてドラゴンテイマーとなった男が、異世界で第二の人生を送る物語である。 ※.第一章完結しました。 ※.1週間に2、3話の投稿を目指します。 ※.投稿時間は安定しませんがご容赦ください。
8 135七つの大罪全て犯した俺は異世界で無雙する
俺はニートだ自墮落な生活を送っていた。 そんな俺はある日コンビニに出かけていると、奇妙な貓に會い時空の狹間に飲み込まれてしまう。
8 71Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~
辺境の騎士爵長男として生まれたアルスは5歳になったときに頭痛と共に前世の記憶を思い出す。自分が日本人である桜木優斗(47)であることを。ただ、自分がどうして転生したのかまでは思い出せないのだが、前世は獨身貴族だったこともあり未練は、まったく無かった! そんな彼は自分の領地を豊かにするために、前世の知識を使い領地を富ませていくのだが、その手法が畫期的すぎるあまり天才扱いされ王族から目を付けられてしまうのだった。
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