今度は失敗しない。

神殿のような場所で「荒宮れいか」はそう誓った。

一度目の異世界召喚はマリアと名を変え貴族の令嬢として招きれられた。

みなが聖だと褒め稱えてくれた。

形で優しい王子が自分を大事にしてくれた。

聖様とみなが自分を崇め奉った。

あの時ほど自分の人生の中でり輝いた時があっただろうか。

漫畫でよく見る知識チートもたくさんして、皆が褒めてくれた。

この幸せがずっと続くと思っていた。

けれど――マリアは本當は聖じゃなかった。

ステータス確認で摂取スキルlv１０という項目を見かけてはいたがまさか聖はリシェルでマリアはリシェルの力をかりていただけだとは夢にも思わなかったのだ。

ガルシャ王子がマリアの失策を補おうとリシェルに罪を著せ殺したせいで、本來聖だったリシェルが死んだ。

そのためマリアも力が使えなくなってしまったのだ。

そこからはもう転落する一方だったのである。

１８歳のの子にそんな事わかるわけないじゃない！！

と泣きんでも、リシェルを殺した事にたいする批難はやまず、ガルシャ王子とマリアは殺されそうになった。

だからガルシャ王子がを発した。

俺がなんとかする。お前には絶対迷をかけない。

そう言ってに挑んでいったガルシャの背中が今も忘れられない。

きっとこうして二度目の人生をやり直しているのは。

ガルシャが時を巻き戻したからだろう。

ガルシャが自分を守ってくれたのだ。

今度こそ本當の聖に。

リシェルは自分に仕えるメイドにでもしておけば力を失うこともない。

二度目の異世界転生人生は好き勝手生きてみせる！！！

マリアは心に誓うのだった。

■□■

前世の記憶をもったマリアの二度目の転生は順調だった。

今度は失敗を繰り返さない。

一度目の人生よりもはやく貴族に取りり、ガルシャ王子の婚約者となれた。

何故かリシェルが婚約していた相手は違ったが無事婚約を解消させ王子の婚約者にさせる事もできた。

王子の婚約者ということで嫉妬した前世ではリシェルの男を奪い、これみよがしにリシェルの前で親しくしたり、嫌がらせをしたりしたが今世では仲良しを心がけている。

逆行前はリシェルを殺してから、何故かマリアは聖の力が使えなくなった。

本當はリシェルが聖だったと、後になって皆がマリアを責め立ててきたのだ。

そんなことでマリアを責められても困る。

マリアは知らなかったのだから。

知っていたらめなどしなかった。

大事にしたのに。

勝手にマリアを聖として認定したのは大人達なのに、何故マリアだけが責められるのかと理不盡でしかたなかった。

確かに王子に悪口を吹き込んだのはマリアで、そのせいで王子がリシェルを敵視して、殺してしまったのは事実だけれど。

まさか殺してしまうとまでは、マリアも予想外だったのだ。

今世では絶対にリシェルを殺すことも、仲が悪くなることもダメ。

彼を手元におき、マリアが聖様でいなければならない。

でなければ、また他國やエルフ、竜人達から攻め立てられ逃げるだけの人生を繰り返してしまう。

「リシェル様、お茶をどうぞ」

王宮の中庭で。

王子の婚約者になったばかりのリシェルをお茶にいにっこり微笑みマリアがお茶を渡せば、

「有難うございます」

とリシェルも微笑んだ。

そう、多気にらないくらいでリシェルと仲が悪くなってはいけない。

彼にはずっと側にいてもらわないといけないのだから。

マリアはリシェルに優しく微笑むのだった。

■□■

マリアの作戦はこうだ。

まずリシェルと仲良くなる。

王宮に招きいれて言葉巧みにロゼルトと別れさせ、ガルシャ王子の婚約者にする。

次に汚名を著せてリシェルにガルシャ王子との婚約を破棄させて、失意に打ちひしがれているリシェルをメイドとして迎えれる。

メイドの中でも待遇をよくしてやればリシェルもマリアに付き従うだろう。

それでリシェルの聖の力を使い放題になるのだ。

これほど萬全な作戦がどこにあるだろう？

王子にはもう婚約破棄の件は話してある。

あとは実行に移すだけだ。

マリアはこの時、何も考えていなかった。

何故。リシェルの婚約者の相手が変わっていたのか。

何故。リシェルに聖の啓示がなかったのか。

考えればわかる事だったのに。

元々の格が天然だったためなのか、自分以外にも逆行前の記憶を所持している者がいるなどと微塵も考えなかったのである。

マリアの中では、語の主人公は常に自分だった。

自分には、常に主人公補正が働いているという拠のないその自信がマリアの思考を停止させていた。

あとは來月の舞踏會でガルシャ王子にリシェルと婚約破棄をしてもらうだけだ。

web小説とか最近流行している漫畫で、王子に婚約破棄されて平民に落とされる令嬢の話をマリアは知っていた。

婚約破棄されれば――リシェルから公爵令嬢の地位をとりあげて自分のメイドとして働かせることができる。

ここは祝福や聖がある世界だもの。

完璧な作戦にマリアは微笑んだ。