結局、になってしまったその日は、仕立て屋に採寸だけをしてもらい、服の生地選びは後日ということになった。

なぜって、オーダーがオーダーだからだ。

『四天王の最後の席に座るものにふさわしいだけ誂える』

それは、相當の量が必要になる。

何せ、『魔王』に次ぐ『四天王』と目されているのだ（勝手にだけどね）。必然的に、必要な裝は多くなる。

魔族領の食事は、人間の國のものよりも優れていて、とても味しかった。食後に供された菓子は、マカロンというらしいのだが、あれはとても甘くて、そして、あっという間に口の中で溶けてしまって、とても味だった。

そんな怒濤のような一日を過ごし、ようやく夜になって、寢るために部屋で一人になれた。

ちょっと、現狀について、相談したいわ。

私は、いつもの相談相手、マーリンを呼ぶことにした。

「しゃもん(サモン)だいけんじゃマーリン」

すると、ベッドに腰掛ける私の目の前に、マーリンが顕現した。

……と共に、彼が大きく目を見開く。

「これはマスター……、に違いありませんが。実にらしい姿になられましたね」

「にんげんのくにで、いきるとこもないから。……まぞくになったの」

信じていた仲間から裏切られた記憶に悲しくなって、私は俯きながら答えた。

「ああ、だからですか。その見た目とは裏腹に、包する魔力量が桁違いに増えていらっしゃる……」

「え？」

「そうですね、十倍は軽いかと」

ーーえ、ちょっと待って。

「まえだって、おおしゅぎて、かくしてたのよ？」

あ、また噛んだ。

それを耳にして、マーリンが微笑ましそうに笑顔になる。だが、すぐに顔を真剣なものに戻した。

「私自がをもってじるのです。マスターからいただく魔力が、以前とは比べにならないほどに増えております。これでしたら、私は、生前の頃よりも魔法を存分に行使できるでしょう」

ーーえ、ちょっと待って、あなた、『大賢者マーリン』だから。

伝説の大賢者だから！

その現役時代より強いとか、ちょっとおかしなことになってるから！

「しょこまれだと、なんか、たいへんかも……」

ええええ〜、となんか大変なことになったと思って、思わず顔を顰めてしまう。

「いえいえ、マスター。それだけではありません。おそらく、召喚できる英霊の最大數も増えましょう」

ーーあれ？　私、危険人になってないかな？

「ですがマスター、今はそれを考える時ではありません」

「ふえ？」

「……今日の貴には、たくさんの事があり過ぎました。しっかりとお休みすることが最優先かと思いますよ？」

そう言って、マーリンは私の膝を掬って、姫抱きにすると、ベッドに私のを橫たえ、上掛けをかけてくれた。

「ありがと、マーリン」

「おやすみなさい、マスター」

マーリンから額に口付けをけると、私はの疲れに抗えずに眠りに落ちていくのであった。

そして翌朝。

小鳥の囀る聲で目が覚めた。

魔王城には緑が多い。それに集まる小鳥達が、朝になると一斉に朝がきた！　とでも言うように歌い出すのだ。

「ふあぁぁ〜」

私は寢から上半を起こして、大きく腕をばしてびをする。

そして、その手のひらをじっと見る。

うん、ちっちゃい。そしてぷにぷにと子供らしく可らしい。

昨日のことは、夢ではなかったようだ。

「お目覚めですか？」

扉の向こうから、アリアの聲がした。

「おはよう、アリア。はいって、いいわ」

すると、「失禮します」という言葉とともに、ドアが開けられて、可式テーブルと共にアリアが私の元へやってきた。

載せられているのは、顔などを清めるための水のったタライと、タオル、そして、類などだった。

パシャパシャと水を掬って顔を清め、タオルで顔を拭う。細い木を束ねた歯を清める道で汚れを掻き出してから、掬った水を吐き出して口腔を洗浄して、口を拭う。

「本當にい方よりも、作法はご存知でいらっしゃるので、とても助かりますわ」

そういうのは私専屬らしいアリアだ。

「きょうは、どうしゅるの？」

そんなアリアに、私に今日の予定があるのかを尋ねてみた。

「そうですね、今日は王城のご紹介してもいい施設を、ご案させていただこうと思っております」

なんとも嬉しい返答が返ってきた！

そして、簡易なワンピース姿で、アリアに案されながら歩いた。

と、ここで不思議に思うかもしれない。

『がなぜそんなに歩けるのか？』

大人の人間からの姿になったからだから、自はしっかりしているのだそうだ。それに加えて、魔族は人間よりがしっかりできているらしい。

人間の五歳児までだと、関節もまだあまりしっかりとせず、本當はそんなに歩くことは出來ないのだけれど。