《【本編完結済】 拝啓勇者様。に転生したので、もう國には戻れません! ~伝説の魔は二度目の人生でも最強でした~ 【書籍発売中&コミカライズ企畫進行中】》第34話 友人との別れ
前回までのあらすじ
ヤバいよ、村長だよ!!
恐る恐るドアを開くと、そこには村長が立っていた。
しかし目深に被った帽子のせいで顔がよく見えなかったし、フェルもエメも暫く會っていなかったので、即座に彼が誰なのかわからなかった。
村長には村の様子を見て回る仕事がある。しかし彼は意図的にリタの家を避けていたので、フェルもエメも村長に會うのは本當に久しぶりだったのだ。
そんな彼が、挨拶もそこそこに口を開いた。
「やぁ、フェルさん、エメさん。話は聞かせてもらったよ」
「あ、あの、何の話でしょうか?」
前置きもなしにいきなり話を始めた村長に、フェルが怪訝な顔で訊き返す。
すると彼はどこか困ったような顔をした。
「あんたたち、領主様とめたんだってな。先日の騒ぎはもうみんな知っているよ。……あれから誰も訪ねて來なかったかい?」
「いえ、誰も……」
この三日間を、エメは思い出してみる。
しかし誰一人として訪ねてくる者などいなかったし、それどころか家の周囲に村人の姿は全くなかった。
リタ一家はこの村の中で浮いている。
それはフェルとエメが、外からやって來た流れ者だからだ。
人の出りがない辺境の村では、生まれた場所で一生を終える者もなくない。だからある日突然やって來たフェルたちは、村人たちにとっては余所者(よそもの)以外の何者でもなかった。
フェルとエメがこの村に住み著いた理由――それは旅の途中でエメの妊娠が発覚したからだ。
お腹の子を優先した彼らは、たまたま通りかかったこの村で旅を中斷すると、偶然空いていたこの廃屋に住み著いた。
そしてリタが生まれてからも、そのまま住み続けていたのだ。
もちろん村長には許可を貰っていたし、村人たちもけれているようだった。
しかし元來閉鎖的な村である事実は如何ともし難く、未だにリタ一家は孤立したような狀態だったのだ。
春先に起こった児行方不明事件以來、幾つかの家族とは流を持つようになった。しかしそれでも、依然として村人たちは積極的にかかわろうとはしてこない。
それはフェルとエメが醸し出す、自分達とは違う空気を敏に嗅ぎ取っていたからなのだろう。
それにも増してリタが魔力持ちであることが発覚してからは、以前にも増して距離を置かれてしまう。
だからここ數日どころか、もっと遙か前から村人たちとは流がなかったのだ。
「そうか…… それじゃあ改めてここに來た理由を言わせてもらうが……」
余程言い辛いことなのだろう。要件を切り出すまでに村長は何度か躊躇する様子を見せた。それでも思い切ったように口を開く。
「この村を出て行ってもらいたい。 ――すまないが、この村の総意だ」
「あぁ、そうですか……」
「この前あんたたちは領主様の使者とめただろう? だから我々としては、このまま放置してもおけんのだ。 ――一度領主様のところへ帰ったらしいが、また後日引き返してくるのではないのかね?」
そこまで話を聞いたフェルもエメも、彼の真意を理解した。
仮にも自分たちの所有者――領主に盾突いたのだから、村としてこのまま放置できるはずもない。
もしそうであれば、村自が罰をけることになってしまうので、彼らとしてはリタ一家に出て行ってもらうしかなかったのだ。
そうして村を守るつもりなのだろう。
しかし彼に言われるまでもなく、フェルとエメも端からそのつもりだったので全く驚かなかった。
「……えぇ、わかっています。私達も初めからそのつもりでしたから」
「そ、そうか…… それなら話は早い。それでいつ――」
「申し訳ないのですが、明日まで待ってもらえませんか? 明日の朝にはここを発ちますので、それまで準備をさせて下さい」
「あ、あぁ、そうか。わかった。それくらいなら待てるよ」
村長の顔に、あからさまに安堵の表が浮かぶ。
かに彼は、フェルたちが出ていくことに渋ったらどうしようかと思っていたのだろう。
それに対してはっきりとした返事と的な日時まで聞くことができて、彼の仕事も無事に終わったということなのだ。
「この度はお騒がせしまして、申し訳ありません。私たちは村には迷をかけるつもりはありませんので、速やかに姿を消します。これまで々とありがとうございました」
「あぁ、いや、こちらこそ…… 個人的にはあんたたちに餞別の一つでも持たせてやりたいが、後日それがバレでもしたら面倒なことになるから……すまないな」
「いえ、お心遣いは結構です。ありがとうございます」
「それじゃあ、これで……」
村長は、結局最後までリタ一家を心配するような素振りは見せなかった。
それに形としてはリタ一家が勝手に逃げて行ったことにしたいようだし、今ここに彼が來たこともなかったことにするつもりなのだろう。
リタたちが逃げる手伝いをしたなどと後日言われてしまえば、村として、延(ひ)いては村長自も大変な事になるのは目に見えているからだ。
村の事は理解できるし、悪いのも一方的に自分たちだ。
しかしあまり流がなかったとは言え、仮にもこれまで五年間一緒に暮らしてきた仲間なのだ。
そのあまりに素っ気ない村人や村長の態度に、一抹の寂しさをじてしまうフェルとエメだった。
翌日の早朝、まだ夜も明けきらぬうちからリタたちは行を起こした。
両親二人は持てるだけの食糧を背嚢に詰め込み、金になりそうなものは全て肩掛け鞄にれた。
フェルの調に未だ不安を抱えたままなので荷を最低限にした結果、服は著の著のままだ。
これから寒い冬にることを考えると些か不安になる服裝ではあるが、いまさら冬服の準備もできないのでこのままの格好で発つつもりだ。
もちろんリタも、小さなで持てるだけの食糧を背負った。
そして唯一とも言える私として、エメ特製のうさぎのぬいぐるみを大事そうに小脇に抱えている。
ついにフェルもエメもリタも、それぞれのにそれぞれの想いを抱いて住み慣れた我が家を後にしたのだった。
彼らが一歩家から出ると、そこに想像だにしなかった見送りが來ていた。
それはリタの友達のカンデとシーロ、そしてビビアナだった。
フェルたちの前では事務的で素っ気ない態度の村長ではあったが、彼は彼なりに思うところがあったらしく、せめてリタには友達にお別れをさせてあげようと思ったようだ。
それで特に仲の良かった三人がこんな薄暗い早朝にもかかわらず、最後のお別れを言いに來たのだ。
もちろんリタの一家と流のあった彼らの両親も一家に別れを言いたかったのだが、リタたちが黙って出て行ったことにしなければならない都合上、その姿を見せるわけにはいかなかった。
こんな狹い村では、誰が見ているかわからない。
だから子供たちのお別れでさえ、早朝に人目を忍んで手短に済ませなければならなかったのだ。
「リタ……元気でな。またどっかで會おうな」
「あい。わちはどこでも元気じゃよ。カンデも達者でのぉ」
二歳年上のカンデは、いつもリタの面倒を見てくれた。
彼は彼なりにリタの兄のようなつもりでいたのだろう。一緒に遊ぶ時にはいつもリタに気を配ってくれたし、彼の我が儘にも付き合ってくれた。
そしてリタも友達というよりも、やはり兄のように慕っていたのだ。
そんなカンデが目に涙を浮かべて別れの言葉を口にしていた。
「リタ……ぐすっ、冬になったら一緒にかまくらを掘ろうって言っていたのに……またね。また絶対一緒に遊ぼうね」
「うむ。シーロよ、おにゅしも達者でのぉ。かまくらは殘念じゃったが、次に會うときにでもまた作ろうの」
一歳年上のシーロは、小柄で可らしい外見の男の子だ。
そんな彼がリタと一緒にいると、その気の弱さも手伝っていつも彼に振り回されていた。それでもシーロはリタと一緒に遊ぶのが楽しいらしく、頻繁に遊びに來ては毎回リタの言いなりになっていた。
そんな彼も、涙を浮かべてべそをかいている。
「あ、あんたのことなんて、一生忘れてやらないから!! 覚悟しておきなさいよ!!」
「わちもおまぁのことは忘れんじょ。だって親友じゃからなぁ」
リタと同い年のビビアナが、気の強そうな釣り目がちの瞳に涙を浮かべながら気丈に振舞っていた。
確かに彼は口も悪いし気も強いのだが、実はビビりの小心者だということをリタは知っている。
そしてオウルベアに襲われた時のことが今でもトラウマになっていることも。
普段は元気いっぱいに走り回るリタが、目に涙を浮かべながら友人達との別れを惜しんでいる。
その姿を見つめる両親の目にも自然と涙が浮かんできて、一層娘のことが不憫に思えた。
彼らはリタの初めての友達だった。
病気のために生まれてからずっと寢たきりだったリタは、それまで誰一人として友人はいなかった。
それを彼らが初めて友達になってくれた。
彼らと一緒に遊ぶようになってから、リタは不自由なを引きずるようにして一生懸命外を走り回るようになったのだ。
そのおかげで彼のは、今では普通の子供と遜ないほどまでに自由にくようになったし、多の活舌の悪さは殘ってはいるが、これも普通に會話ができるまでになっていた。
だからこの三人の友人たちはリタにとっては特別な存在だった。
彼らと出會ってからまだ一年も経っていなかったが、リタにとっては掛け替えのない馴染と言っていい。
しかしそんな特別な友人達とも、これでお別れなのだ。
恐らくこの三人もこの村で育って、この村で結婚し、この村で子育てをして、この村で死んでいくのだろう。
もしかするとビビアナは、このどちらかの男の子と將來結婚するかもしれない。
そのくらい辺境の村というのは狹い世界でしかなく、リタは彼らと再會を誓い合ったが、恐らくこの先それが果たされることはないだろう。
「お主(にゅし)らみんな、元気でなぁ。達者でなぁ、また會おうなぁ――」
裏山への狹い林道を母親に手を引かれて歩きながら、リタはいつまでも小さな手を振り続けた。
そしてその灰の瞳からは大粒の涙が溢れていたのだった。
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