《「もう・・・・働きたくないんです」冒険者なんか辭めてやる。今更、待遇を変えるからとお願いされてもお斷りです。僕はぜーったい働きません。【漫畫1巻+書籍2巻】》22 落日のギルド3
王族がエクス獲得に向けてく中、
冒険者ギルドは以前のような勢いを失っていた。困った事に依頼に失敗する冒険者が増えてきている。
「依頼失敗ですか?これでもう今月11件目。昨年の年間フォルトをたった3日で超えました」
付嬢が困した顔をした。
「あぁ、すまない。でも妙なんだ!敵がいつもより強かった。數日前より、くなってる」
「それにきも素早さを増してて要注意だ!」
「だから途中で息切れしてしまって。なんでだ?今まではこんな事なんてなかったのに!」
依頼に失敗した冒険者達は、口を揃えて全ての敵が1段階強くなったと訴える。
そんな事は有り得ない(笑)
當たり前だが、敵の強さは同じ。
つまり、彼らが1段階弱くなっていた。
・・・原因はなんと、エクス。
先月かけたバフの長過ぎる効果が、ようやく切れた事にある。
泣き言の理由は上から順に、サポート1のバフ効果の中の
筋力+1
敏捷+1
AP+1
が切れたといったところだろうか。
「どうしたお前ら?弛んでおるぞ」
そんな折、ご機嫌な様子のギルマスが2階のマスタールームから降りてきた。
この男は、若干満気味ではあるが、昔冒険者をやっていただけあって筋量はある。
「ギルマス、ご機嫌っすねー」
「分かるか!臨時ボーナスで家を買ってな。ふはは」
相好を崩すギルマス。
グッドコミニケーション。
「完したら、呼んでください。それより、ギルマス、臨時ミーティングやって喝(バフ魔法)をれてくれませんか?」
「頼んます」
「俺ら、どうにもここ最近、気合いがらなくて」
この冒険者ギルドでは、ギルマスの薫陶をけるとゾンビのように強くなるという噂があった。
実際に、なぜか安易に強くなれて、一度験すれば病みつきになる。
「ふぅ。お前らは全く不甲斐ないな、分かった。やってやろう」
溺れる者は藁にも縋る。
縋ったのは、ギルマスだった。
こうして異例の急招集がされた。
2時間後、不調をじて集った冒険者達は期待と謝の眼差しでギルマスを見た。
ギルマスは自分に心酔する。
ふんっと鼻を鳴らした。
「あー。今日は特別に!弛んでる貴様らに喝を與える。まず君たち冒険者には、日頃から高い意識と自ら考える力を持ってもらいたい…」
ここが、彼の栄のピーク!
ようやく長い話が終わると、苦痛な時間が終わった喜びに冒険者者達は拍手喝采した。パチパチパチパチ、それは解放の歌聲。
「冒険者諸君っ。後はアリエスよりバフをけて、冒険に勵むように」
「「ギルマスありがとうございました!!アリエスちゃーん、バフよろしくぅ」」
一部の冒険者が沸き立つ中、他所から來たばかりのアリエスは懐疑的な視線をギルマスに向けた。
「ギルマス?前も思ったんですが、戦闘中でも無いのに、バフを掛けたって無意味だと思うんですが?」
「はぁ〜?アリエス、そんな事は考えなくてもいいのだ。これだから新人は。言われた事を早くやりたまえ」
有り難い自分の薫陶をけて、自ら考えて発言したアリエスを秒で否定したギルマスは、言う事を聞かない部下を詰る。
「分かりました。皆さん、一列に並んでください。順番にバフ魔法を掛けていきますので、パワー」
「おお〜!力をとり戻したぜ。ありがとう!」
ぐぐっと力こぶしを作り満足げな冒険者。
アリエスは釈然としないまま、次々と參加者達に希のバフ魔法をかけていく。
自信を取り戻した冒険者達が嬉しそうにはしゃぐ。明日からは失敗しないぞと、その顔に書いてある。
和やかな空気が流れて、ギルマスは満足そうに參加者から謝の言葉をけ取った。
このまま臨時ミーティングは大功のまま終わると思われたのだが、最初の方にバフをかけて貰った冒険者から順に、どんどんと変な顔をしだした。
明らかにオロオロと困している。
「え?もしかして、もうバフが切れた」
「本當だ。切れてる」
「アリエスちゃんは、もしかしたら劣等魔法使いなのか?」
それが、アリエスの耳にる。
謂れの無い非難の目を向けられてアリエスは、ぎょっとした顔をした。
「ええっ!?ちょっと皆さん何を言ってるんですか??バフ魔法は10分しか持ちませんよ」
顔を見合わせる冒険者達。
生暖かい目でアリエスを見守る。
「いやいや、最低1ヶ月は保たないとバフの意味がないだろ」
「アリエスちゃんは専攻が違うんだろ、別に怒ってないから」
「あの欠陥魔法使いは、バフ専だったのか」
アリエスは、おろおろしだす。
「そんなの、ありえませんよ。これは、誓ってもいいです。バフ魔法は最高でも10分です!」
魔法の専門家からのお墨付き。
つまり、もう今までのようなバフの援助はけられないという事だ。
「え?それってヤバくね?」
「あぁ、かつての力が使えないとなると。かなりヤバい」
「閃いた!代わりのバフ魔法使いを呼ぼう」
「だからっ、馬鹿がっ!話を聞け。そんなのいないんだっての!!」
誰かがぽつりと呟いた。
「もしかして、エクスって実は凄かったのか?」
水面に投げられた小石のように、その発言が波紋を靜かに広げる。
を描くように大きく。
冒険者達は、顔を見合わせた。
「なら、エクスが実は魔導師って噂は本當だったのか?」
「なんで欠陥魔法使いとか呼ばれてたんだよ?誰がそう呼び出した?」
「とにかく、あのバフがなければ俺達は、やってられないっ」
もう結論は1つだった。
エクスにもう一度バフ魔法を掛けて貰う。これ以外に過去の栄を取り戻す道は無い、という結論に達して、誰かが聲を張り上げた。
「ギルマス、俺らにはエクスが必要だ。あんたが追い出したんだから、あんたが責任を持ってエクスを呼び戻してきてくれるんだよな!?」
「「そうだ!そうだ!」」
真剣な目で見られたギルマスはたじろぐ。ギルドカード砕事件は皆の記憶に新しいから、これは非難されて當然である。
「お前ら、騒ぐな。エクスには戻ってくるように既に話をつけてある。帰ってきたら一番にやらせよう」
その発言を聞きほっとした人、多數。
胃がキリキリ痛んだ人、1名。
ギルマスは能天気な顔で、數日前に簡単なお使いを頼んでいた付嬢を見た。
「そういえば報告を聞いていないが、その件はどうなってる付嬢?なかなか顔を出さないが、エクスはいつ來るのだ?んんー?」
冒険者達の視線が集中する中、付嬢は不貞腐れ気味に答える。
「その・・エクスさんは來ません」
「貴様ッ!今まで報告もせず、いったい何をやっていたんだ!!」
ギルマスが機を叩き付嬢を威圧すると、付嬢が今度は逆ギレした。
「そもそもギルマスが悪いんですよねっ!先方は、ギルマスが相棒に謝るのがスジだろって言ってました」
「はあ?私が謝る?いったい誰に?」
きょとんとする厳つい豚。
付嬢の手がわなわな震えて、ギルマスの首を摑みあげた。
「はあ?馬鹿ですか!? エクスさんですよっエクスさん! エクスさんに謝ってください!!」
正義の暴徒となった付嬢は、困するギルマスを締め上げていく。
反省するくまー。
ちなみに付嬢もエクスに謝ってなかったりするが、今はそんなの関係ない。
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