森の霊達はギルマスを讃えた。

彼こそは秒速の男だと。

新記録を樹立したからだ。

「逃亡ルートは、大森林の脇を抜けて街道にる、だな。よし、行くぞっ」

３、２、１、スタート！

森の中へとり、誰も踏みしめていない草を踏みつけると強い草の匂いがした。

ゆっくりと歩く。

ギルマスは、先ほど暗闇の中を橫一文字に走った蒼いに興味をそそられて近づいていく。

以前、冒険者達が、新型結界の近くで屑魔石が拾えるというのを話していたのを思い出したからだ。

屑魔石なんて大して金にはならないが、拾えるなら拾いたい。運が良ければ大きな魔石もあるかもしれないと。

森林警備隊に導されたという噂の新型結界を間近で見ると、丸太の支柱に鉄線を張っただけの簡単な柵だと分かりしガッカリする。

それに地面も暗くて、屑魔石も探せそうにない。

「何だ？初めて見たが新型結界は安そうな柵だな。こんな玩で大丈夫なのか、この街の警備は？まぁいい、私には関係の無い話か。たしか、ここを乗り越えれば近道だったな。よいしょっ」

地図を頭に思い浮かべながら、鉄線の柵を乗り越えようとして、ぎゅっと鉄線を握る。

これが、痛恨のミス。

「ぶべべべべ」

電気がビリビリと奔る。

逃亡開始より、５２秒で電(・・)っ。

ニューレコード！

これを見ていた森の霊達は拍手喝采っ！！わー。

ギルマスは、エクスの電気柵にってしまった！

電した事により夜の森に愚か者の姿が蒼白くって浮かび上がった。

「は、離れぬっ！何故だ？？結界は人に無効のハズでは！？痛いっ。うああああ！！！」

手を鉄線から離そうという意志に反して腕の筋は収し、鉄線を熱烈に握り締めて全然離さない。それもそのはずで、これは結界とは名ばかりの、異様に長持ちするだけの初級電撃魔法(スタン)なのだ。

「手が離れぬっ。拙いっ、このままだと死んでしまうううう。ぐはっ・・・」

しまいには、限界を超えたのか口からぶくぶくと蟹のように泡を吹き出し、顔面蒼白になってビクンビクンと痙攣しだした。

もはや意識も無く、自力では手が離せないため、継続(スリップ)ダメージで死んでしまうのは時間の問題だった。

そんな時、想欄より祈りの聲が屆く・・・

『勇者よ！ギルマスの命を助け給え。彼はちゃんと絶の中、斷罪されてほしい』

その真摯な祈りに応えるように、愚かなギルマスを救済すべく勇者が現れた！

祈りを託された勇者の種族名は、ゴブリン。

醜い緑顔の勇者はニタリと嘲笑う。

そして両手を広げて電気柵にぴょーんと近づき、

バチュン！

と命の花火を盛大に上げた。

愚かなギルマスを、死地から救ったのはより愚かなゴブリンだった。

ゴブリンは、激しい勢いで燃え盡きてあっという間に屑魔石に変わる。

勇者ゴブリンがアースになり、全ての電撃を命の時間だけ肩代わりした事により、ギルマスは鉄線を無意識下で手放す事に功。

どうにか、一命を取り留めた。

電線と別れを告げた悪運だけは強いギルマスは、糸の切れたあやつり人形のように立ってる力を失うと、母なる大地と熱烈なキスをする。

要救助者１名。

朝１番に屑魔石を拾いに冒険者が來るまでは、しばらく森のベッドでおやすみなさい。

「おいっアンタ！！生きてるか？・・・え、ギルマスか？？なんでこんな場所に？」

ギルマスの鞄には金庫の橫領品がパンパンにっていた。

・・・まだ目覚めない。

「エクス、追いかけて來るなっ！聞いてくれ、私は逃げてるんだぞ。ううぅぅ。。」

苦しそうにまだ醒めぬ夢の中で必死に逃げ続けていた。

過去イベント（終了）

2021/6/27