《「もう・・・・働きたくないんです」冒険者なんか辭めてやる。今更、待遇を変えるからとお願いされてもお斷りです。僕はぜーったい働きません。【漫畫1巻+書籍2巻】》43 俺たち森林警備隊3

酒瓶が転がる部屋。

テーブルの上にはカードと積み上がった貨。

ここは森林警備隊の元請けのアジトだ。

數人の男がたむろする鬱とした部屋で、1人だけ椅子に座らず立ったまま、リーダーに何か報告する中年男がいる。

まず初めに現場復帰を決意したのは、その中年男、下請けエバソンだった。

椅子から立ち上がった元請けさまのゲルグに、顔を毆られて改心する。

「げぺっ」

バーコード剝げ頭の天辺に乗せた髪が、まるで海藻のように、ゆらゆらと揺れて、膝をついた。

「てめぇ勘違いしてんのか?そのエクスが辭めたから何だ?ヤれよ。出來ないなんて寢言は死んでから言え」

「で、でも。エクス君がいないと」

エバソンは、うるうるとした瞳で頬を抑えながら上目遣いで、ゲルグにすがりつき慈悲を乞うた。

「キメェんだよ。さっきからエクス君、エクス君って!1人休んだくらいで何だ?てめぇの男娼(イロ)なのか?そんなの殘ったメンバーだけでヤれや」

ゲルグは、バーコード剝げ親父に可り寄られて當然のように激しく嫌悪を覚える。ぞわぞわした気持ち悪さに耐えきれなくなり、今度は腳が出た。死ねや、オラッ!

「かはっ。かひゅーっ。そ、それが、今までは、エクス君が1人で全部やってましたので・・」

エバソンは、思わず痛みで隠しごとを自白してしまう。

當然、ゲルグの怒りにれた。

目をくわっと開いたゲルグは、エバソンの首元を力の限り締め上げて引き起こす。

「はぁ!?1人でだと!たしか、お前には、孫請け10人分のカネを払ってたはずだが?」

「ひぃっ。彼はB級魔導師なのでむしろ我々の給料から補填していました」

青いの引いた顔で許しを乞うエバソン。

ちなみに、B−E級の差額分はギルマスの懐にっていた。

「ちっ、どの道やらんと殺す。街に侵出來ないモンスターと街で自由にける俺たちと、どっちが優しいかよく考えろ。分かってると思うが逃げたら家族を八つ裂きにしてやるからな」

「ヒィィ」

首締めから開放されてもちをつき這うように逃げていくエバソンを、ゲルグは忌々しげに睨んだ。

他の仲間が貨の山をチャリチャリと玩びながら、ニヤついた顔でテーブルを叩く。

「そんな事より早く再開しよーぜ、ゲルグ。今、いいカードが來てんだ」

「ちっ・・・忌々しいぜ」

ゲルグの手札は悪く無いが、イライラして考えが纏まらない。

「レイズ!」

「ちっ、フォールドだ」

手札を投げると、総取りした仲間はニヤリと笑って手元がったようにカードを見せつけやがった。くそがっ何がいいカードだ。

「へへっありがとさん」

「ブラフかよっ!とんだ疫病神だ。エクスって奴は」

ちくしょう、俺の貨が回収された。

「怒るなよゲルグ。俺は好きだなエクス年。5年前に孫請けが50人って、俺らが30人に減らされた頃さ、俺らの仕事を全部やってくれた良い子だぜ」

「そんなに優秀なのか?なら、そいつを脅して呼び戻して再び働かせれば・・」

配られたカードを見る。微妙だな。

「バカだなぁ。あの年がゴブリンキングを単で撃破してる所を俺は見たぞ。返り討ちに遭ってしまう。しかも今の話が本當なら、今の今まで森林警備隊配下の100人分の仕事をたった1人でしてたって事になる」

「おいおい、イカれてる。そんなの完全な化けじゃねぇか!?何者だよエクスって奴は?それで、どーするんだよ」

忌々しい。くそカードを投げ散らかしたい気分だ。

「頭を使えよ、ゲルグ。ギルマスの指示を大人しく聞いてたのが引っかからないか?」

「そうか!エクスは、なにか弱みでも握られてたのか?なら、ギルマスから聞きだすのが手っ取り早いか」

ちっ駄目だ。

ジョーカーを手にした奴がいる。こっそり表面に付けた印が教えてくれた。

なぜギルマスが便利なエクスを開放したのかが気になるが本人に聞いてしまえば話は早い。

「フォールド。おい、お前。ギルマスからエクスの弱みを聞き出して來い!」

「え?俺が!?」

ゲームに1番負けてる奴に白羽の矢を立てた。

「上手くやれば、次の効率化の時にメンバーから外さないでやる。急げ」

「わ、分かった!」

「全くコストカット、コストカット。世知辛い世の中だなぁ」

ぼやく仲間の発言に同意しながら、くびっと安酒を飲んだら腹がカッと熱くなった。やってられない。

走って出掛けた負け犬を見つめる。

せいぜい俺の為に走れ。

存在しない弱みを探るため、負け犬はギルマスに會うため飛び出した。エクスを縛っていた鎖は、1か月前に消え去っているのに。

場所は変わって、下請け事務所。

「エバソン、急に呼び出されてもな。オラ達には無理だよ」

「んだ、んだ」

「やらないと、元請けさまに何をされるか分からないんだぞ。それに、エクス君に出來て俺らに出來ない訳ないだろ」

エバソンに呼び出された2人はガチガチに怯えていた。それもそのはず最終出勤は4年前。しかもその頃はメンバーは100人いたから、最低でも10人を超える編だったはずだ。

「今日は舊式結界の再起だけでいい。5年間貯めた高級アイテムだけはある。楽勝だ、行くぞ!」

「「んだー」」

この3人組は、コソコソと必死で逃げ回り特に目立った見せ場が無かったので割するが、貴重な魔法銃と回復薬を使い切り、12ある結界の、再起出來たのは僅か3。

遠目からオークジェネラルを発見して心が完全に折れて殘ったアイテムを捨てて逃げ帰る。

エバソンの元々なかった髪はオークの一摑みで半分も奪われて、服もボロボロ、アイテムも盡きた。

しでも鍛えてれば、こうは無様は曬さなかっただろうに。

回復薬を1つ使ったエクスに、なぜこんな簡単な仕事で怪我をしたんだ?と言ったのは記憶に新しい。

「エバソン、もう逃げよう」

「んだ。魔に食われるぐらいなら、人の手で殺されたい」

「くぅぅ。こんなにこの森は脅威だったのか?エクス君さえいればっこんな事には。なぜ彼は辭めてしまったんだ!?」

最早出來る事も無い。

下手に逃げれば家族に咎が及ぶ。

敗戦報告をするため、重い足取りのエバソン。

「・・・元請けさまに報告しにいくか」

不幸のオーラをじ取り、ゲェェェと死食らいの死喰鳥が鳴いた。丸々太った黒の飛ばない鳥。食べたいとも思わないが、味は非常に不味いらしい。

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