《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第15話「幕間:帝國領での出來事(2)」
今日は2話、更新しています。
本日はじめてお越しの方は、第14話からお読み下さい。
──トールが魔王領に著いたころ、ドルガリア帝國では──
ここは、帝都の迎賓館(げいひんかん)。
貴族たちは、そこで夜のパーティを楽しんでいた。
集まったのは、帝國でも名だたる貴族たち。
中でも一番の注目を浴びているのは、公爵(こうしゃく)であるバルガ・リーガスだ。
「──おぉ、バルガ・リーガス公爵がいらっしゃったぞ」
「──さすが帝國第一位の貴族。堂々たる姿だ」
「──うわさでは帝國のために、ご子息を魔王領への人質として差し出したとか。なんという忠誠心だろうか……」
公爵がパーティ會場を歩くと、貴族たちのささやきが聞こえてくる。
リーガス公爵の強さは、帝國貴族の中でも上位に位置している。
水屬の魔で敵のきを封じ込め、力任せに敵を斬るのが、彼の剣だ。
その破壊力は、貴族の誰もが認めるところだったのだ。
「やれやれ、わしも強くなりすぎたか。注目を浴びすぎるというのも面倒なものだな」
公爵は肩をすくめた。
その隣で公爵家の執事が、へつらうような笑みを浮かべている。
「公爵さまほどのお方であれば、仕方のないことでしょう。帝國の領土拡大のためには、公爵さまのお力が、より一層必要となります。公爵家の栄はこれからでございますよ」
「まぁな。汚點だったあの者もいなくなったことだ。公爵家はこれからだろうよ」
「…………は、はい」
「なんだ、妙に歯切れが悪いな」
「い、いえ。あの……公爵さま」
執事はおそるおそる、訊ねる。
「……トールどのの『錬金』スキルについてなのですが」
「ああん!?」
ぎろり、と、公爵が執事をにらんだ。
「奴のことは言うな! 奴は貴族として魔王領へと向かい、人質となった。貴族として帝國の役に立った。それだけだ。二度とその名を口にするな!!」
「ひぃぃ!」
「楽しい気分がだいなしだ。なにか飲みを持って來い」
「は、はい!」
一禮して、執事は飲みが置いてある場所へと走り出した。
公爵はまわりを見回した。
貴族たちはこちらを見ていたが、無視することにした。
今はもっと重要なことがある──そう考えて、公爵は主賓(しゅひん)の登場に備える。
今日のパーティには第3皇のリアナ殿下が出席する。
公爵は最初にあいさつをすることになっているのだ。
「おお、殿下がいらっしゃったぞ!!」
しばらくすると広間の扉が開き、ドレスをまとった皇が姿を現す。
桜の髪に、青の瞳。帝國第3皇のリアナだ。
しいだけではなく、強力なの魔力を持っている。
その皇は広間を見回し、バルガ・リーガス公爵の方を見て、
「──この場にふさわしくない者がおりますね。追い払いなさい」
汚いものでも見るかのように、手を振った。
「「「……承知(しょうち)いたしました」」」
衛兵たちが、公爵の腕をつかんだ。
「……リーガス公爵さま。リアナ皇殿下のご命令です。ご退出ください」
「な、なにを言っている!? わしは、バルガ・リーガスだぞ!?」
「存じております。今はどうか、こちらへ」
「ええい放せ!!」
公爵は衛兵の手を振り払った。
そのまま、皇リアナに向かって歩き出す。
「お待ち下さい。皇殿下! どうしてわしが出ていかねばならぬのです! わしになんの罪があるというのですか!?」
「リーガス公爵。あなたとは話をしたくないのですが」
「一なにをお怒りなのですか!?」
「……よく、そのようなことが言えますね」
皇リアナが、公爵を見た。
青の瞳が、怒りに燃えているようだった。
「わたくしと仲間を危険にさらしておいて! よくもまぁ、そのような言葉が出てくるものです!!」
「危険?」
「わたくしは公爵家(こうしゃくけ)に、魔法剣の修理について依頼をしたはずです。おぼえておりますか?」
「は、はい」
公爵はうなずいた。
確かに宮廷から、そんな依頼をけたような気がする。
武の管理は執事の仕事だから、そのまま任せたはずだったが──
「公爵家から、確かに修理したということで魔法剣をけ取りました。ですが、魔法剣は私の魔力に耐えきれず、修理した部分から刃こぼれが起きて……そのまま、ぽろぽろと崩(くず)れてしまったのです!」
「な、なんと!?」
「しかも、魔獣と戦っているときに」
皇の言葉に、周囲の貴族たちがざわめく。
貴族たちは戦闘スキルを持ち、魔獣との戦いも経験している。
戦闘中に武が壊れることがどのような意味を持つのか、彼らにもわかっているのだ。
「わたくしは危うく魔獣に殺されるところでした。助かったのは、かばってくれた仲間のおかげです」
皇はつらそうに目を伏せた。
「あとで調べたら、魔法剣が砕けた理由がわかりました。欠けた部分に、ただ金屬片を継いだだけだったのです。その部分が魔力の流れをさえぎり、結果、剣そのものが崩壊(ほうかい)してしまったのです。その修理をしたのはリーガス公爵家で、間違いございませんね?」
「──お、お待ち下さい……」
公爵の頭が真っ白になった。
まわりの貴族たちの聲が聞こえる。
「──まぁ、リーガス公爵家がそんないい加減な修理を?」
「──魔法剣の修理だろう? 難しいのはわかっている。できないならできないと言えばいいのに……」
「──戦闘中に剣が折れることが、どれほど危険かわからないのか。公爵は──」
公爵は、今、目の前で起きていることが信じられなかった。
こんなことが、あっていいはずがなかった。
公爵家は、邪魔な子どもを排除した。
これからは栄の道を駆け上がるはずだったのだ。
皇から責められ、貴族から後ろ指をさされるなど、あっていいはずがなかった。
「そ、それは、修理を擔當した錬金師(れんきんじゅつし)が、いい加減な仕事をしたに決まっております!!」
だから、公爵はんだ。
「錬金師など、ちょっと変わった鍛冶屋(かじや)のようなものです。役にも立たないスキルを鼻に掛けて、うまくごまかせると思ったのでしょう。罰せられるべきは錬金師! そうではありませんか!?」
「私もそう思って工房に人をやったところ、こんな書類をいただきました」
リアナ皇は侍に向かってうなずいた。
侍は手にしていた羊皮紙(ようひし)を、皇に手渡す。
皇はそれを広げ、すべての貴族にわかるように示した。
「ここに証拠の書類があります。『魔法剣の完全な修理は難しい。ゆえに、リーガス公爵家は、見た目だけでもきれいに修理するように、工房に依頼をする。責任はすべて、リーガス公爵家が取る』と。公爵家の印と、公爵家執事(こうしゃくけしつじ)のサインもございます。皆さま、よくごらんなさい」
「────な!?」
「「「おおおおおおっ!?」」」
會場がどよめいた。
さらに皇は続ける。
「工房の錬金師は言っていました。魔法剣は途中まで完全に修理されていたと。ただ、ちいさな欠損(けっそん)があったために、そこから折れることになったのだろうと」
皇がうなずくと、侍が砕けた魔法剣を差し出した。
彼の言葉の通り、剣はほとんどが砕けていた。
殘っているのは柄と、刀の一部だけだ。
「不思議ですね。砕けずに殘っているのは、その『完全な修理』をした部分だけなのです。その部分だけが私の『の魔力』に耐えてくれました。おかげで、私は魔獣の爪をなんとかけ止めることができました。そうでなければ、命を落としてしたかもしれません」
「で、殿下は魔法剣を、儀式に使われるのではなかったのですか……?」
「最近、『の魔力』が強くなってきたので、儀式と同時に魔獣(まじゅう)の討伐を行うことになったのです。公爵家にもその連絡はしたはずですが?」
「……う、うぅうううう」
「とにかく、わたくしは魔法剣の『完全な修理』をされた方に、命を救われたようなものです。錬金師にも使える者はいるようですね。その者を私の道としたいのですが、名前と居場所を教えていただけませんか?」
皇は言った。
公爵は歯がみした。
彼はその剣を誰が、『完全に修理』したのかを知らなかった。
知っていたとしても言えなかっただろう。
魔法剣を正しく修復した錬金師──トールは魔王領に行ってしまった。
その後のことはわからない。
すでに死んでいるか、魔王領の牢獄(ろうごく)にでもいると思っている。
今さら呼び戻せるわけがない。
「……そ、その剣を最初に修復したのは……おそらく流れ者の錬金師(れんきんじゅつし)でしょう。行方は存じません」
「そうですか。殘念です」
皇はため息をついた。
「いずれにせよ、あなたの顔は見たくありません。出ていきなさい。しばらく、皇家の者の前に出るのは控えるように!」
「で、殿下!?」
「話はここまでです」
皇リアナは公爵に目もくれず、その橫を通り過ぎた。
「──お騒がせしてすいませんでした。皆さま。さぁ、パーティを続けましょう」
皇が手を叩くと、止まっていた音楽が流れ始める。
貴族たちは、まるで公爵が存在しないかのように會話を再開した。
衛兵たちは公爵を、建の外へと引っ張っていく。
放心狀態のリーガス公爵は、抵抗さえできない。
そのまま迎賓館(げいひんかん)の外へと連れ出され、ただ、放置された。
それで終わりだった。
衛兵たちも公爵をいないものとして、自分たちの仕事を始めた。
「──こ、公爵さま……」
気づくと、真っ青な顔をした執事が、公爵の隣に立っていた。
「……貴様……なんてことをしてくれた!」
公爵はんだ。
「魔法剣を、見た目だけ修理しただと!? その上、それとわかるような証拠を殘すとは……ふざけるな! わしが恥をかいたのは貴様のせいではないか!!」
「も、申し訳ありません!! ですが……直すのは不可能だと、私は……」
「うるさい! 貴様の顔は見たくない。しばらくの間、牢(ろう)に幽閉(ゆうへい)し、追って処分する!!」
「そ、そんな!?」
「おお、馬車と護衛の兵士が來たな。ちょうどいい」
騒ぎを聞きつけた公爵家の馬車が、迎賓館(けいひんかん)の前にやってくる。
「こいつを連れて行け。しばらく、わしの前に現れぬようにせよ」
公爵は、自家の兵士に向かって告げた。
兵士たちはうなずき、執事を引きずって行く。
「こ、公爵さま……お許しを……」
遠ざかっていく執事の聲を聞きながら、公爵は馬車に乗り込んだ。
「今回の事件──いや、事故で、公爵家の名譽は地に落ちた。だが、挽回(ばんかい)の手段はある」
果を上げる。
自分が存在していることが、帝國には大きなメリットであることを示すのだ。
「わしには作戦がある。帝國に新たなる利益をもたらす計畫がな。おろかなる魔族と亜人どもをうまく利用できれば……名聲は取り戻せる。いや、さらなる高みへと至れるはずだ」
つぶやきながら、公爵は屋敷に向かったのだった。
第16話は、明日の午後6時ごろに更新する予定です。
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【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。
【注意】※完結済みではありますが、こちらは第一部のみの完結となっております。(第二部はスタートしております!) Aランク冒険者パーティー、「グンキノドンワ」に所屬する白魔導師のレイ(16)は、魔力の総量が少なく回復魔法を使うと動けなくなってしまう。 しかし、元奴隷であったレイは、まだ幼い頃に拾ってくれたグンキノドンワのパーティーリーダーのロキに恩を感じ、それに報いる為必死にパーティーのヒーラーをつとめた。 回復魔法を使わずに済むよう、敵の注意を引きパーティーメンバーが攻撃を受けないように立ち回り、様々な資料や學術書を読み、戦闘が早めに終わるよう敵のウィークポイントを調べ、観察眼を養った。 また、それだけではなく、パーティーでの家事をこなし、料理洗濯買い出し、雑用全てをこなしてきた。 朝は皆より早く起き、武具防具の手入れ、朝食の用意。 夜は皆が寢靜まった後も本を読み知識をつけ、戦闘に有用なモノを習得した。 現にレイの努力の甲斐もあり、死傷者が出て當然の冒険者パーティーで、生還率100%を実現していた。 しかし、その努力は彼らの目には映ってはいなかったようで、今僕はヒールの満足に出來ない、役立たずとしてパーティーから追放される事になる。 このSSSランクダンジョン、【ユグドラシルの迷宮】で。 ◆◇◆◇◆◇ ※成り上がり、主人公最強です。 ※ざまあ有ります。タイトルの橫に★があるのがざまあ回です。 ※1話 大體1000~3000文字くらいです。よければ、暇潰しにどうぞ! ☆誤字報告をして下さいました皆様、ありがとうございます、助かりますm(_ _)m 【とっても大切なお願い】 もしよければですが、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです。 これにより、ランキングを駆け上がる事が出來、より多くの方に作品を読んでいただく事が出來るので、作者の執筆意欲も更に増大します! 勿論、評価なので皆様の感じたままに、★1でも大丈夫なので、よろしくお願いします! 皆様の応援のお陰で、ハイファンタジーランキング日間、週間、月間1位を頂けました! 本當にありがとうございます! 1000萬PV達成!ありがとうございます! 【書籍化】皆様の応援の力により、書籍化するようです!ありがとうございます!ただいま進行中です!
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