《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第22話「火炎將軍ライゼンガを説得する」
「むむ? ここは風呂場か。湯沸(ゆわ)かし係のサラマンダーなら、アグニスの居場所を知っているかもしれぬ!」
ばんっ!
廊下(ろうか)側のドアが開いた。
り口につっかえそうなほどの巨が見えた。
火炎將軍のライゼンガだった。
「おぉ。ここにいたのか我が娘アグニス……よ?」
ライゼンガがを屈(かが)めて、戸口を通り抜ける。
黃がかった瞳が、アグニスの方を見た。
目を閉じて、俺に抱きしめられるのを待っているアグニスを。
それからライゼンガ將軍は、俺の方を見た。
アグニスの肩に手をかけて、今にも彼を抱きしめようとしている俺を。
「……きさま」
ライゼンガ將軍の髪が逆立った。
「……貴様。なにをしている! 我が娘になにを────っ!?」
ずん、と、床が揺れた。
ライゼンガ將軍は床を踏みしめながら、まっすぐ、こっちに向かって來る。
「お待ち下さいライゼンガさま!」
その前に、メイベルが立ち塞(ふさ)がる。
ライゼンガ將軍は肩を怒らせながら、
「どけい! メイベル!!」
「どきません! トールさまは私の主人です! それに、あの方はアグニスさまのために──」
「メイド風(ふぜい)に我は止められぬ!!」
ライゼンガ將軍が床を蹴(け)った。
巨大なが、真橫に跳んだ。
速い! あれが火炎將軍のきか……。
メイベルが反応できてない。ライゼンガ將軍はメイベルを避けて、素早いフットワークで──俺の前にやってくる。鋭い目をらせて、俺をにらむ。
「來い! 貴様は我が領土に連れて行く。そこでアグニスに手を出した罪をつぐなわせてやる!」
「その前に話を聞いてくれませんか。ライゼンガ將軍」
「貴様と話す口など持たぬ!」
「あなたは今のアグニスさんの姿を見て、なにも気づかないんですか!?」
「──む?」
反応があった。
ライゼンガ將軍が、アグニスの方を見た。
そして──
「お、おぉ? アグニスが鎧(よろい)ではなく……普通の服を!?」
「俺は錬金師(れんきんじゅつし)です。だから、アグニスさんの事を聞いて、対策を考えました」
俺は説明をはじめる。
「アグニスさんが火炎を制できなかったのは、火の魔力が強すぎるせいですよね? その魔力を変換することで──」
「貴様は……アグニスをだまして服を著せたのだな!?」
「はい?」
「炎に耐えられる布だと言って、アグニスにメイド服を著せたな!? それが徐々に燃えていくのを見て、段階的にアグニスをにするつもりなのか!? なんということを考えるのだ貴様は! この変態め!!」
「こっちの話を聞いて!!」
「うるさい! いいからこちらに來い!! 従わぬのなら、我の我慢にも限度があるぞ……見よ!!」
ライゼンガ將軍がぶ。
逆立った髪から炎が生まれる。怒った將軍の顔を照らし出す。
「これが火炎將軍の炎だ! この力を恐れるならおとなしく言うことを聞──」
「収納(しゅうのう)! 火炎!!」
俺が宣言すると、ライゼンガ將軍が発した炎が消えた。
『超小型簡易倉庫』に吸い込まれたんだ。
アグニスはあの倉庫を、持ち歩いていてくれてた。さっき著替えたときに、テーブルの上に置いておいたんだ。それが役に立った。
「な!? 我が炎を!? き、貴様は一……?」
「俺は魔王陛下に雇われた錬金師(れんきんじゅつし)です」
ライゼンガ將軍の目を見返して、俺は言った。
「この魔王領に住む人の問題を解決して、俺の居場所を住みやすく快適にするのが俺の仕事なんです。俺はアグニスさんを助けたいと思った。だからメイベルにも協力してもらって対策を考えた。それだけなんです」
「…………う、うぅ。だ、だが……」
將軍の言葉が途切れた。
それから將軍は頭を振って、再び、俺をにらんで──
「と、とにかく來い! 話はそれから──」
──俺に向かって手をばそうとした。
けれどその手は、俺には屆かなかった。
「……いいかげんにしてしいのです。お父さま!」
アグニスの手が、ライゼンガ將軍の腕をつかんでいたからだ。
さっきから、ずっとそうだった。
將軍は興してるから、気づかなかったようだけど。
アグニスは將軍が俺の前にきたとき、すでに父親のきを封じていたんだ。
「……謝(あやま)って。お父さま」
アグニスの細い指が、ライゼンガ將軍の赤銅(しゃくどういろ)の腕に食い込んでる。
將軍はアグニスの手を振り払おうとする。けれど、かない。
アグニスは怒った顔で、ライゼンガ將軍を見つめている。
でも、彼のから炎は出ていない。
代わりに、元の『健康増進ペンダント』が、を発し続けてる。
『火屬の魔力により:活力+250%を得ました』
『余剰分(よじょうぶん)の火の魔力を、他の屬の魔力に変換します』
『火の魔力を、土の魔力に変換しました。土屬の効果:安定+250%を得ました』
『土の魔力を、金の魔力に変換しました。金屬の効果:強固+250%を得ました』
『金の魔力を、水の魔力に変換しました。水屬の効果:+250%を得ました』
『水の魔力を、木の魔力に変換しました。木屬の効果:生命力+250%を得ました』
「な!? う、けぬ。アグニス。お、お前にこんな力が!?」
「トールさまはアグニスのためにがんばってくれたのに……」
「……え」
「アグニスが普通の服を著られるようになったのは、トールさまのおかげなのに……お父さまは、どうして話を聞いてくれないの!!」
アグニス、本気で怒ってる。
その細い腕で、火炎將軍ライゼンガのきを、完全に制してる。すごい……。
「は、放せ! 我はお前のためを思って──ぐぬぅ!!」
ライゼンガが全に力を込める。床に亀裂(きれつ)がる。
だが、アグニスは揺(ゆ)るがない。
空いた手で、ライゼンガ將軍のもう片方の腕もつかむ。將軍は振りほどこうとするけど、アグニスはそれを完全に押さえ込んでる。
「な、なんだと!? ど、どうして、お前にこんな力が!?」
「アグニスは……怒ってるので。あふれる魔力を、使ってるので!」
「怒っている!? だ、だが、炎はどうした!? お前はがたかぶると、炎が出るはずでは!?」
「トールさまのおかげで、アグニスは長した……です」
アグニスの目が赤から黃、黃から赤に変わっていく。
ペンダントを著ける前──から炎を生み出していたときと同じだ。
つまり、アグニスは今、強力な『火の魔力』を発しているということになる。
その魔力が、すべて『健康増進ペンダント』に注がれてるんだ。
アグニスは、普段の數倍の活力と安定と強固さと、と生命力を手にれてる。
活力と生命力は、ライゼンガ將軍のきを封じるほどのパワーを。
安定と強固さは、將軍がいくら力をれても揺らがないほどの強靱(きょうじん)さを。
は、しなやかな筋力を。
それら全部をフル活用してるアグニスは、とんでもない力を発揮してる。
「炎は、誰かを傷つけることしかできなかったです。でも、トールさまにいただいた……この力なら、大切な人を守ることもできるので──!」
『火屬の魔力により:活力+400%を得ました』
『余剰分(よじょうぶん)の火の魔力を、他の屬の魔力に変換します』
『火の魔力を、土の魔力に変換しました。土屬の効果:安定+400%を得ました』
『土の魔力を、金の魔力に変換しました。金屬の効果:強固+400%を得ました』
『金の魔力を、水の魔力に変換しました。水屬の効果:+400%を得ました』
『水の魔力を、木の魔力に変換しました。木屬の効果:生命力+400%を得ました』
『健康増進ペンダント』は発を続けている。
ライゼンガ將軍はもう、きひとつできなくなってる。
「すごい。これが勇者世界のアイテムの力か」
「いえ、すごいのはトールさまだと思います……」
でも、もっとすごいのはアグニスだ。
彼はライゼンガ將軍の両腕をつかんで、そのきを封じて──
「……アグニスは……お父さまをいつも、心配させてきました。ごめんなさい……」
「い、いや。親が最の娘を心配するのは當然──」
「だけど、アグニスの話も……聞いてしい……です。トールさまはアグニスにとって、とても大切な人なので……」
アグニスは父を見つめながら、つぶやいてる。
「トール・リーガスさまはアグニスにとって『原初(げんしょ)の炎の名にかけて』お仕えしたい人、なので!」
「アグニス、そ、その言葉は……おおおおおおっ!?」
「だから、お父さま。トールさまに謝(あやま)って。話を聞いて!!」
アグニスは、ライゼンガ將軍の巨を持ち上げていく。
2メートル以上ある巨を、軽々と。
自分の真上──頭上まで。
「あのさ。メイベル」
「はい。トールさま」
「異世界から來た勇者の伝説で、ドラゴンを持ち上げた人の話があるんだけど、知ってる?」
「存じております。ドラゴンの腹の下に潛り込んで、その巨を持ち上げたと」
「いくらなんでも話を盛りすぎたと思ってたけど、事実なのかもな」
「そうですね。今度、魔王城の記録を調べてみますね」
「お願いするよ。メイベル」
俺とメイベルは親子ゲンカを見守っていた。
とにかく將軍に落ち著いてもらわないと、話もできないから。
アグニスは額に汗を浮かべて、ライゼンガ將軍の巨を持ち上げている。
両腕も押さえ込まれたライゼンガ將軍は、まったくきが取れない狀態だ。
「な、なんとかしてくれ。サラマンダーたち!」
パニック狀態の將軍は、配下のサラマンダーに呼びかける。
その聲に応えて、サラマンダーたちが湯沸(ゆわ)かし場から飛んでくる。
だけど──
『ぐるる!』『ぐるっる!』『ぐっるるー!』
ぺちぺち、ぺちぺち。
サラマンダーたちは、羽と尾で、ライゼンガの手足を叩くだけ。
「お、お前たちまで!? わしが悪いと言うのか……そうなのか……」
ライゼンガ將軍は、泣きそうな顔になってる。
魔王領でも名高い火炎將軍が、娘のアグニスにきを封じられて、持ち上げられて、眷屬(けんぞく)のサラマンダーにもそっぽを向かれちゃったんだもんな……。
さすがに、気の毒になってきた。
「話を聞いてくれますか。ライゼンガ將軍」
俺は將軍を見上げながら、訊(たず)ねた。
「將軍の許可なくアグニスさんにマジックアイテムを作ったことが気にったのかもしれません。でも、話くらいは聞いてください。將軍」
「……お父さま!」
「お願いいたします。ライゼンガさま」
『『『ぐるるーっ!!』』』
俺とアグニスとメイベル、サラマンダーたちは、ライゼンガ將軍に訴(うった)えかける。
そして──
「わしが悪かった……すまぬ」
將軍のから、力が抜けた。
「聞く。話を聞かせてもらう。トール・リーガスどのにも、ちゃんと詫(わ)びる! 火炎將軍ライゼンガの名にかけて約束する!」
「ありがとうございます。將軍」
「だ、だから、放してくれ、アグニスよ……」
涙聲で、ライゼンガ將軍は言った。
「トール・リーガスどのとメイベルどのはいい。だが、ここには配下のサラマンダーもいるのだ。火炎將軍ともあろうものが……こんな姿をさらしていては、示しがつかぬではないか…………あぁ」
こうして、ライゼンガ將軍は降參して──
とりあえず俺たちは、落ち著いて話をすることにしたのだった。
第23話は、明日の午後6時ごろに更新する予定です。
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星の見守り人
如月 星(きさらぎ せい)はごく普通の宇宙好きな天文探査官だった。 彼は銀河連邦の公務員で有り、科學や宇宙が好きだったので、宇宙探査船に乗って、宇宙探査局の命令に従い、のんびりと宇宙探査をしていた。 辺境の宇宙を しかし彼の少々変わった才能と、ある非常に特殊な遺伝的體質のために、彼は極めて特殊な計畫「メトセラ計畫」に関わる事となった。 そのために彼は萬能宇宙基地とも言える宇宙巡洋艦を與えられて、部下のアンドロイドたちと共に、宇宙の探査にでる事となった。 そしてある時、オリオン座のα星ベテルギウスの超新星爆発の調査に出かけた時、彼のみならず、人類全體の歴史と運命を背負う事になってしまった・・・ これは科學や探検が好きな一人の人間が、宇宙探検をしながら、しかしのんびりと暮らしたいという矛盾した欲求を望んでいたら、気が遠くなるような遠回りをして、ようやくその願望を葉える話である!
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