《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第27話「魔の程距離をばす」
「というわけで、次はこれを作ってみようと思う」
お茶會の翌日、俺は『通販カタログ』を見ながら、メイベルと話をしていた。
開いたページには、黒い筒が寫ってる。
表面はつやつやしていて、先端には明な板がついてる。
起すると、赤いが燈るようになっているらしい。
「これはどういうものなのですか? トールさま」
「『レーザーポインター』って書いてあるよ」
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『レーザーポインター』(レーザー照準(サイト)としても使えます!)
この『レーザーポインター』で、あなたの指示を確実に伝えましょう!
『レーザーポインター』のを使えば、どんなにごちゃごちゃした場所でも、あなたの意図がはっきりと伝わります!
人を指導する立場の方には、特におすすめです!
この商品を使えば、的確に「めあて」を伝えることができるでしょう!
この商品から発する赤いは、おどろくほど遠くまで屆き、見せたい場所をくっきりと浮かび上がらせてくれます。
距離は、通常商品の約5倍!
くっきりは10倍増し!
騒がしい場所や、聲が屆かない場所でも、指し示した目標ははっきりと見えます。
あなたの指示は間違いなく伝わり、まわりはすぐに靜かになるでしょう。
なお、當社の『レーザーポインター』は、クロスボウやエアガンにつけることで、『レーザー照準(サイト)』としても使用可能です!
命中率は10倍アップ。程距離は5倍にびるでしょう!
(競技用です。決して人には向けないでください)
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「……すごいものがあるのですね」
メイベルは俺の説明を聞いて、目を輝かせてる。
俺もおどろいてる。
『えあがん』はわからないけど、『クロスボウ』はこっちの世界にもあるからね。
要は、飛び道に使うと命中率や飛距離が上がるってことだ。
「でも、トールさま『指導する立場の人にはおすすめ。的確に「めあて」を伝えることができる』というのはどういう意味なのでしょうか?」
「兵士の隊長が、倒すべき敵を的確に伝えられるという意味だと思うよ」
「『あなたの指示は間違いなく伝わり、まわりはすぐに靜かになるでしょう』というのは……」
「び聲をあげて向かって來る敵が、すぐに倒されて沈黙するという意味だね」
「『人には決して向けないでください』というのは……」
「魔獣討伐(まじゅうとうばつ)専用ってことだろうね」
「『競技用』というのは……」
「勇者にとっては、魔獣討伐は競技みたいなものなんだろうね。あの人たち、魔獣討伐のスコアとレベルアップの速さを競い合っていたから」
「わかりやすいですね」
「まったくだ」
俺とメイベルはうなずいた。
「魔獣討伐専用だから、魔族や亜人相手に使われた記録がないんだろうな。勇者が魔獣を倒して、レベルを上げるためだけに使ってたんだろう」
「勇者が強力な魔獣をあっという間に倒した伝説は、普通にありますからね」
「しかも無傷でね」
「程距離5倍なら、魔獣なんか近づけませんよね……」
だよなぁ。近づく前に倒されちゃうだろうし。
巨大な怪鳥が、遠距離から勇者の魔に翼を貫かれた記録とかもあるもんな。
「でも、今回の魔獣退治にはぴったりだ。人間相手に使えないなら、誤(ごしゃ)の心配もないからね」
「帝國の人が現地に來るという話もありますからね……」
「ま、それはいいや」
別に帝國と関わりたいわけじゃないからね。
俺は魔王ルキエのために、安全に魔討伐ができるアイテムを作るだけだ。
「それじゃはじめるよ。メイベル。素材を用意してくれるかな」
「はい! トールさま」
そう言ってメイベルは一禮。
俺が『簡易倉庫』の中に用意しておいた素材を差し出してくれる。
を出すんだから、當然『の魔石』が必要になる。
これは照明用のものを宰相(さいしょう)さんに分けてもらった。
前に話した『魔石使い放題プラン』の一部だ。
問題は、を直進させる方法だけど……。
これは『闇屬』を使おう。
と闇は相反する屬だから、のまわりを闇で包めば、を一方向にだけ飛ばせるようになるかもしれない。
やってみよう。失敗したら、作り直せばいいや。
「発『創造錬金(オーバー・アルケミー)』!」
俺はスキルを起した。
『通販カタログ』に載っているような『レーザーポインター』をイメージする。
黒い、金屬製の筒。
中には、の魔石。そのまわりを闇屬と、闇の魔石で包み込むイメージだ。
水のった袋に小さなを空けて、まわりから押しつぶす、ってじかな。
の魔石の出力が大きくないと駄目だから、俺自の魔力も注して、っと。
「メイベル。金屬の素材を」
「は、はいっ!」
メイベルが用意しておいた金屬の塊を、テーブルの上に置いた。
俺は空中に浮かび上がらせた『レーザーポインター』のイメージ図を、テーブルの上に移させる。
金屬塊(きんぞくかい)が変形して、筒(つつ)へと変わっていく。
そこにの魔石を埋め込んで、金屬すべてに『闇屬』を付加。
さらに闇の魔石も組み込む。『闇屬』の『と相反(あいはん)する』という特徴を強化して、っと。
さらに『風屬』も付加しておこう。
『風屬』には『循環する』『遠くに運ぶ』という意味もあるからね。
『レーザーポインター』のを、さらに遠くまで運んでくれるはずだ。
「……これでいいかな」
『通販カタログ』に載ってるのより、かなり大きくなっちゃったけど。
まぁ、これはしょうがない。
俺は勇者の世界には、まだ追いつけてないんだから。
「それじゃ実行! 『創造錬金師(オーバー・アルケミー)』!!」
ころん。
テーブルの上に、円筒形の『レーザーポインター』が生まれた。
長さは60センチくらい。直徑は10センチ弱。
かなり大きい。クロスボウにつけるのは無理かな。
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『レーザーポインター (レーザー照準(サイト)にも使えます)』
(屬:・闇闇・風風)(レア度:★★★★)
の魔力により、源を作り出す。
強い闇の魔力により、そのをぎゅーっと潰してばして、無理矢理直進させる。
風の魔力によって、が當たった場所まで、魔力の流れを作り出す。
の魔石と、闇の魔石が必要です。
魔石は消耗品のため、定期的に換が必要(3ヶ月に一度、新品と換してください)。
理破壊耐:★★★ (魔法の武でないと破壊できない)
対人安全裝置つき:人間や魔族、亜人相手には使えません。
耐用年數:15年。
1年間のユーザーサポートつき。
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「それじゃ実験してみよう。城の中に魔の訓練場ってあったっけ?」
「ございます。すぐにご案いたしますね」
「ありがとう。頼むよ。メイベル」
そんなわけで、俺たちは魔の訓練場に向かったのだった。
「──だから、魔獣と戦うときは、前衛ができるだけ近づくべき。敵に囲まれるまえに、一気に、せんめつする」
「──それでは後衛の魔部隊が危険です! 敵が急に接近してきた場合、魔の発が間に合いません!」
「──『魔獣(まじゅう)ガルガロッサ』は、たくさんの配下を、連れてる。そいつらが集まってくる前に、倒した方が、いい」
「──ミノタウロスたちはそれでよいでしょう。ですが、我らエルフは防力が弱く、側面から攻撃をけた場合──」
「──そうならないように、偵察(ていさつ)を、出す」
「──我らは敵に近づきすぎることを危険視しているのです!!」
ここは魔王城の一角にある、兵士たちの訓練場。
背の低い壁(かべ)と柵(さく)で囲まれた場所で、地面は土がむきだしになっている。
隅の方に、石で作られた標的が並んでいる。
魔の訓練場はあそこかな。
「すいません。ちょっと魔の実験をしたいんですけど──」
「──だから、すみやかに敵を倒すことが、被害を減らす一番の近道で──」
「──それについていく魔師のことも考えてください!!」
訓練場のり口近くで、ミノタウロスの戦士と、エルフの魔師が口論してる。
それぞれの後ろには戦士と、魔師っぽいローブを著た人たちが集まってる。
ということは、代表者同士の打ち合わせだろうか。
「戦士部隊の中隊長さんと、魔師部隊の中隊長さんですね」
「もしかして、魔獣討伐の打ち合わせ?」
「はい。どうやって戦うか、作戦を考えてらっしゃるようです」
話を聞くと、戦闘中の陣形について相談しているようだった。
今回討伐する魔獣は『ガルガロッサ』という大型種で、配下の魔獣を大量に従えているらしい。
放っておくと、大型種が配下をどんどん呼び寄せるそうだ。
ミノタウロスをはじめとする前衛部隊は、突撃して一気に魔獣を殲滅(せんめつ)したい。
魔部隊は敵に囲まれないように、できるだけ離れて戦いたい。
でも、前衛部隊が突っ込んでしまうと、魔部隊も前進しなければいけない。
離れすぎると、魔が當たらなくなるからだ。
だからこうやって意見を出し合ってる、ということか。
「……すごいな」
思わず俺はつぶやいてた。
「帝國では、上の人間が決めた作戦に、下は無條件で従うやり方を取ってたからね。こんなふうに、現場のひとが意見を出し合うのはすごいと思うよ」
「そうなんですか。魔王領では、いつもの景ですけど……」
メイベルは不思議そうに首をかしげてから、
「それじゃ、魔訓練場の使用許可を取ってきますね」
──手の空いてるエルフさんに話をしに行ってくれた。
それから俺たちは、魔の訓練場の方に移したのだった。
「この線から標的までが、一般的な魔の程距離ですね」
メイベルは地面に書かれた白い線を指さした。
彼の後ろには一定間隔で、魔の発位置を示す線がある。
標的に近づいたり離れたりして、攻撃魔の命中率を上げる訓練をするらしい。
「ここは程距離ぎりぎりですね……。ここからだと、標的に當てるのがせいいっぱいだと思います」
「標的は、あそこにある石の板だよね?」
「そうです。中央の丸に近いところに當てられるように訓練するんです」
「よっしゃ。じゃあ『レーザーポインター』で命中率が上がるかどうか、やってみよう」
俺はポケットにれた『超小型簡易倉庫』 (自分用に作り直した)から、『レーザーポインター』を取り出した。
やっぱり、ちょっと大きいな。
肩に擔ぐと安定するかな。よし。これでいい。魔力を注いで──っと。
──ポゥ。
よし、起した。
「トールさま! 標的のところに、大きな赤い點が現れましたよ?」
「あれが、『レーザーポインター』の効果だ。あれを目標に魔を撃つんだ……と、思う」
「……なるほど」
メイベルは興味深そうに、標的を見つめている。
魔訓練場の標的のところに、大きな赤い點が浮かび上がっている。
闇屬の効果か、赤い點のまわりに黒いふちどりがついてる。すごく見やすい。
さらに『レーザーポインター』から目標までは、まっすぐ、赤い線が出現してる。
これを使って狙いを定めるわけか。わかりやすいな。
「これで実験の準備はできたけど。魔を撃(う)っちゃっていいのかな?」
まわりには誰もいないから大丈夫だと思うんだけど。
でも、一応、許可を取った方が──
「──つまり、われわれの後ろから、魔で魔獣を攻撃できれば──」
「──そんなことが可能なわけがないでしょう!!」
──うん。みんないそがしそうだ。邪魔したら悪いな。
施設を使う許可はさっき取ったから、いいかな。
実験を始めよう。
「メイベル。氷系の魔は使える?」
「はい。トールさまのおかげで、水の魔力循環がよくなりましたので、大抵のものは大丈夫です」
「じゃあ、氷の攻撃魔を撃ってみて」
「はい。それでは『アイシクル・アロー』!!」
メイベルは魔を発した。
赤い點の中心に、氷の矢が命中した。
「すごいな。メイベル」
「……あれれ?」
「どしたの?」
「撃つとき、狙いがそれた気がするんですけど……當たりましたね」
「當たったならいいじゃないか。次はもうちょっと、距離をばしてみよう」
俺たちは標的までの距離が1.5倍のところまで移した。
メイベルは魔を発した。
命中した。
俺たちは標的までの距離が2倍になるところまで移した。
メイベルは魔を発した。
命中した。
俺たちは夢中になって、魔の実験を続けた。
訓練場のり口では、まだ打ち合わせが続いてる。
ここからじゃ聞こえないけど、なにを話しているんだろうな……。
──────────────────
「──どうしてわかってくれないの、ですか」
「──わからないのはそちらでしょう!? 魔師には、安全な距離が必要なのです!」
「──われわれが魔獣と戦っている間に、魔師は離れて──」
「──魔師には程距離があるから、それは不可能だと──」
「──ん? 誰かが魔の実験をしていますな」
「──標的からずいぶん離れていますね。あんな距離で當たるはずが……」
「──おや」
「──あれ?」
「──あれれれれれれ?」
「──ええええええええっ!?」
「「………………」」
──────────────────
俺たちはさらに距離をばして、魔を放って──
あ。ここまでが限界か。
訓練場の端まで來ちゃった。これ以上はさがるのは無理だ。
確認できたのは、程距離3.5倍まで。
メイベルの魔は、すべて標的に命中してる。実験は功したんだけど──
「おかしいです、トールさま!!」
「どしたのメイベル」
「氷の矢の限界距離を超えています。どうして命中するのですか!? しかも、まったく同じ場所に……寸分のずれもなく……」
「しょうがないじゃないか。勇者の世界のアイテムなんだから」
「……そうなのですけど。エルフとして納得いかないのです……」
それはわかる。
でもまぁ、やっちゃったものはしょうがないよね。標的を確認してみよう。
俺たちは手をつないで、標的のところまで移した。
近くに來ると、石の標的のところに、氷が張り付いているのがわかる。メイベルが放った『アイシクルアロー』だ。でも、氷がついているのは、『レーザーポインター』のが當たっていた部分だけ。その他の場所には、まったくついていない。
メイベルが放った氷の矢は、寸分違わずまったく同じ場所に當たってたことになる。
つまりこれは──
「『レーザーポインター』が生み出した魔力の流れに、魔が引っ張られたのかな?」
「魔力の流れ、ですか?」
「この『レーザーポインター』は目標まで、の魔力と闇の魔力を飛ばしてるよね? つまり、『レーザーポインター』から目標までの間には、魔力のラインができてるんだ」
「……あ」
俺の言いたいことに気づいたのか、メイベルが目を見開いた。
「つまり『レーザーポインター』のにれるように魔を発すると──」
「魔力の流れに乗って、まっすぐ目標に到達する、ってことだね」
「すさまじい能力ですね……」
「これなら魔獣とも安全に戦えると思うよ」
この『レーザーポインター』は、そもそも魔獣専用だからね。
勇者の世界ではこれを使って、魔獣を効率的に倒していたんだろうな。
「おそるべきは、勇者の世界のアイテムだよな……」
的確に「めあて」を伝えることができて。
指導者の指示で、騒がしい魔獣はすべて靜かにさせられて。
人には決して向けてはいけない、魔獣討伐(まじゅうとうばつ)用の専用アイテム。
魔獣討伐専用ということは、勇者は魔王との戦いで、これを使っていなかったということになる。
それでも魔王に勝てたということは──やっぱりあいつらは桁違(けたちが)いの存在なんだよな……。やっぱり怖いな。勇者って。
「じゃあ、これは魔王陛下(まおうへいか)のところに持っていこう。宰相ケルヴさんにも話を通して、使ってもらえるかどうか聞いてみようよ」
「そうですね。では、まいりましょう。トールさま」
「その前に、訓練場の後片付けを──」
あれ?
いつの間にか、訓練場が靜かになってる。
ミノタウロスさんたちとエルフさんたちは──無言で、こっちを見てるな。
びっくりさせちゃったか。まぁ、しょうがないよな。
「訓練場を使わせていただいて、ありがとうございました。これから後片付けを──」
ふるふるふるふるっ!
一斉に首を橫に振る、ミノタウロスさんとエルフさん。
え? いいの?
「いいんですか?」
こくこくこくこくっ!
今度は一斉にうなずく、ミノタウロスさんとエルフさん。
いいのか。じゃあ、お言葉に甘えよう。
魔王ルキエも宰相ケルヴさんも忙しそうだからね。早めにアポを取って、『レーザーポインター』のことを伝えないと。
「お邪魔しました。それじゃ」
「失禮しますね。みなさま」
俺とメイベルはお辭儀をして、それから訓練場を離れたのだった。
──トールとメイベルが立ち去ったあとで──
「……われわれは、なんの話をしていたのでしたっけ」
「……お忘れですか? 前衛が魔獣に突撃して、その後、後衛が魔で支援するという話です」
「……そうでしたね。忘れてました」
「……わかります。私たちも、今の景を見たショックで忘れかけていました」
「問題はなんでしたか? 魔部隊中隊長のエルフさん」
「魔の程についてでしたね。前衛部隊中隊長のミノタウロスさん」
「「…………」」
ミノタウロスたちとエルフたちは、顔を見合わせた。
「さきほど、魔を使っていたのは、メイドのめぃべるさまですよね?」
「は、はい。以前は魔が使えず、エルフの村の、心ない者たちにつまはじきにされていたようですが」
「魔、使えるじゃないですか」
「ですねぇ。程距離、すごいですねぇ」
「どうなっている、ですか?」
「あの、人間の錬金師、トールさまが使っていたアイテムのおかげだと思います」
「魔王陛下直屬の、とぉる・りぃがすさまですね」
「でも、魔の程距離がびるアイテムなんか、聞いたことないんですが……」
「とぉるさまならあり得ます」
「ありえるんですか」
「衛兵をやってるミノタウロスの仲間が言っていました。とぉる・りぃがすさまは、すごい力を持った錬金師だと」
「と、とにかく、さっきのアイテムがあれば『魔獣ガルガロッサ』討伐が楽になりますね」
「われわれの話し合っていた問題ってなんでしたっけ」
「魔の、程距離の問題ですね……」
「問題、なくなっちゃいましたね……」
「どうしたらいいんでしょう……」
しばらく沈黙する、ミノタウロスたちとエルフたち。
それから彼らは、一斉に立ち上がり、歩き出す。
トールとメイベルは、魔王陛下か、宰相ケルヴのところに行って、アイテムの使用許可を取ると言っていた。
だったら、口添えをしなければ。
陛下に謁見(えっけん)するには時間がかかる。宰相ケルヴなら、話ができるかもしれない。
そう考えた彼らは、宰相の執務室に向かって歩き出した。
十數分後。
「ま、待ちたまえ。なんの話かわからないのだが!? なに? トールどのとメイベル? ふたりは魔王陛下のところにいると思うが……え? アイテムの使用許可。いや、待って。本當に待って。まだ話を聞いていないから。落ち著いて、ちょ、え? あの……トール・リーガスどのー! ちょっとここに來て説明してください──っ!!」
宰相ケルヴは、兵士と魔師たちから「トールどののアイテムの使用許可」について、熱のこもった話を聞かされることになるのだった。
第28話は、明日の午後6時ごろに更新する予定です。
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