《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第43話「攻撃を防ぐアイテムを探す」

食事が終わったあと、俺は用意された部屋に向かった。

場所は2階の隅にある大部屋だ。

ここがこれから、俺の住居と作業場になる。

「將軍はずいぶんと広い部屋を用意してくれたんだな」

部屋の広さは、一般的な寢室の2倍くらい。

そこに大きなベッドがひとつと、テーブルや書棚が置かれている。

窓側の家をすべてどかしてあるのは、作業をしやすいようにだろう。

そこには俺が魔王城から持って來た『簡易倉庫』が置いてある。

『簡易倉庫』の中には錬金に必要なものが全部ってる。

今日から作業を始めることだってできるはずだ。

「でも……まずは『』に対抗するためのアイテムを探さないと」

俺は『超小型簡易倉庫』から『通販カタログ』を取り出した。

この中に『』の攻撃を防ぐためのアイテムがあればいいんだけど。

そんなことを考えていたら、ノックの音がした。

「トールさま。ってもよろしいですか」

「メイベル? いいよ。どうぞ」

「失禮します」

ドアが開いて、メイド服のメイベルがって來る。

手にはお茶のカップと、果が載ったトレーがある。

夜食を持ってきてくれたんだ。

「旅先でお疲れではないかと思いまして、ハチミツりのお茶と、甘い果をもらってきました」

「ありがとう、メイベル」

「もう作業は始められたのですか?」

「これからだよ。今日は、の攻撃を防ぐためのアイテムを探そうと思ってる」

「無理はなさらないでくださいね。まだ、將軍の領地にきて1日目なのですから」

メイベルは俺の前にティーカップを置いて、

「陛下も心配されていましたよ? トールさまのことだから、夜通しで研究を続けてしまわれるんじゃないかって」

「ルキエさまが?」

「はい。ですから、私にお目付役を命じてゆかれました」

えっへん、というじでを張るメイベル。

「私は陛下より直々に──トールさまに無理はさせないように。徹夜(てつや)しようとしたら叱るように、と命じられております。ですので、健康管理はお任せください」

「……俺、信用されてないのかな」

「陛下も、トールさまを大切に思われているのです」

「無理はしないよ。今日だって、きりのいいところで止めるつもりだったし」

「きりのいいところですか?」

「うん。アイテムが出來上がったら──」

「え?」

メイベルが首をかしげた。

笑顔だけど、目は笑ってなかった。

「──出來上がったらどんな気分になるかなぁと想像しながら、作りたいアイテムを探そうと思ってた。で、作りたいものが見つかったら止めようかと」

俺は慌てて言い直した。

メイベルは納得したのか、靜かにうなずいて、

「そうだったんですか」

「そうだったんだよ」

「…………」

「…………」

「こほん」

メイベルはじーっと俺を見てから、咳払(せきばら)い。

「トールさま」

「はい」

「魔王城に帰ったとき、トールさまが衰弱(すいじゃく)されてしまっていたら、陛下が悲しまれると思いますよ。トールさまは、私たちにとって大切なお方なのです。どうか、それを自覚なさってください」

「……うん。わかった」

メイベルやルキエを心配させるわけにもいかないか。

考えて見ると、ふたりが時間を決めて『お茶會』をやってたのは、俺に規則正しい生活を送らせるためだったのかもしれない。さすがだ。

「それじゃ今日は、作りたいアイテムを探すだけにしておくよ」

「はい」

「メイベルも一緒に『通販カタログ』を見てくれるかな。俺がカタログの文章を読み上げるから、なにか気づいたことがあったら教えてしいんだ」

「承知いたしました」

そう言って、メイベルは俺の隣の椅子に座った。

ふたりで並んでお茶を飲み、それから『通販カタログ』のページをめくっていく。

「トールさま。食事中にお話をうかがったとき、ふとじたのですが」

「うん」

「もしかしてトールさまは、この『通販カタログ』にの攻撃を防ぐアイテムがあると、確信されていらっしゃいませんか?」

「……すごいなメイベル」

俺はうなずいた。

「その通りだよ。俺はこの『通販カタログ』には、の攻撃を防ぐためのアイテムがあると思ってる」

「理由をうかがってもいいですか?」

「大昔に異世界から來た勇者が、の攻撃魔や剣技を使いまくってたから」

帝國にいたころ、本で読んだことがある。

異世界から來た勇者には、の魔力を使う者がやたらと多かった──と。

だから彼らが使った『』の攻撃について、たくさんの記録が殘っている。

無數のの弾を飛ばす魔や、の波を飛ばす剣技などだ。

もちろん聖剣による『の刃』も、普通に使っていた。

というか『フォトン・ブレード』って名前をつけたのも彼らだ。

勇者は技名をんだり、書き殘すのが好きだったらしい。

帝國の書に『フォトン・ブレード』や『Photon Blade』といった名前が、いろいろな言葉で殘されてるのも、そのせいだ。

「勇者の半數以上は、の技を使ってたらしいよ」

俺は説明を続ける。

メイベルは真面目な顔で、うなずきながら、

「はい。魔王領にも記録が殘っています。勇者が使っていた『フォトン・アロー』や『アンリミテッド・フォトンブラスト』などですね。彼らはの魔力を好んでいたようです」

「派手だからね。あと、魔王が闇屬だから、対抗する意味もあったんだろうけど」

「太古にはそういう技や魔が飛びっていたんですよね」

「その時代に生まれてたら、俺は普通に死んでるだろうなぁ」

「そのときは、私も同じ時代に生まれて、トールさまをお守りします」

メイベルは真剣な顔で、言った。

「勇者からお守りして、初代の魔王さまの元までお連れします。だから、トールさまは死んだりしません。絶対です」

「ありがと。メイベル。ごめん……話が逸(そ)れたね」

「い、いえ。私こそ、むきになってすいません……」

メイベルは恥ずかしそうに目を伏せた。

話に夢中になりすぎて、俺たちはいつの間にか手を繋いでる。

まぁ、それはそれ。話を続けよう。

「重要なのは、異世界から召喚された勇者の半數以上が、の技を使ってたことだ」

俺は話を戻した。

「つまり異世界人は普通にの魔力を扱えたってことだ。そうなると、彼らがいた世界の人たちも、の技を使っていたと考えるのが自然だよね」

「……そうですね」

「たぶん、勇者の世界にはの技がポンポン飛びっていたんじゃないかな」

「勇者は超絶の力を持つ存在ですからね」

「あいさつ代わりにの技や、魔を使ってたんじゃないかな」

「『おはようございますフォトン・ブレード』『おやすみなさい。アルティメット・ヴィヴィッドライト』というじでしょうか」

「でなければ勇者が、強力なの技を使いまくってたことの説明がつかないからね」

「勇者の世界とは……おそるべき場所なのですね」

「……だよね」

メイベルの手が、かすかに震えてた。

俺も同じだ。

この世界に住む俺たちにとって、勇者の力は計り知れないものだ。

たぶん、この『通販カタログ』のアイテムだって、彼らの力の一部でしかないんだろうな。

「とにかく、勇者は當たり前のようにの技を使っていた。となると、その世界には、の攻撃を防ぐ手段もあるはずなんだ」

「わかりました」

メイベルが、ぽん、と手を叩いた。

「勇者の世界にはの技を防ぐ方法が、當たり前に存在していた。だから、それに慣れていた異世界勇者たちは、この世界でもの攻撃や魔を遠慮(えんりょ)なく使っていた、ということですね」

「そういうこと。魔王領にも、勇者の技の記録は殘ってるだろ?」

「はい。特に、初代魔王さまの結界を破壊した究極奧義『アルティメット・ヴィヴィッドライト』のことは、今でも語り継がれています」

「あれかー」

究極のの魔『アルティメット・ヴィヴィッドライト』。

それは大量の『の魔力』を凝して放つ、の最強魔だ。

かつての最強勇者はその魔で、魔王の防結界を破壊したと言われている。

『アルティメット・ヴィヴィッドライト』のことは、帝國貴族なら誰でも知ってる。

というか、子どもの頃から教わる。

俺も名前の書き取りをさせられてたもんな。『Ultimate Vivid-light』──って。

貴族なら勇者の究極奧義の名前くらい、勇者の言葉で書けるようにすべきだという方針らしいけれど……覚えたところで使い道なんかないよね……。

「まぁ、異世界のカタログでも、あれを防ぐアイテムはないよな……」

『通販カタログ』のページをめくりながら、俺は言った。

「だからまず、に対抗できそうなものを探してみようよ」

「わかりました」

「俺がカタログの文章を読み上げるよ。メイベルは『の魔力』に関わりがありそうな単語が出てきたらチェックして。一番、関連する単語が多かったアイテムを作ってみよう」

「どんな単語をチェックすればよろしいですか?」

「『』……特に『強い』かな。あとは『防ぐ』という単語。あとは……勇者が使っていたの魔や技に関わる言葉が出てきたら要注意だ」

「『フォトン・ブレード』や『アルティメット・ヴィヴィッドライト』ですね」

「うん。それと、勇者は剣技や魔の名前を省略したりしてた」

「そうですね。頭文字だけの場合もありました」

「面倒かもしれないけど、そこも注意しておいて」

「承知いたしました!」

それから、俺とメイベルは『通販カタログ』を読み始めた。

アイテムの解説文を読み上げながら、ひとつひとつチェックしていく。

聲に出しながらだから、時間がかかる。

今日は數ページ読んだら終わりかな……と思ったけど、そんなことはなかった。

キーワードに引っかかるアイテムが、すぐに見つかったからだ。

「こんなにすぐ見つかるとは……」

「勇者の世界では対策のアイテムが、當たり前に存在していたのですね……」

俺とメイベルは顔を見合わせた。

見つけたアイテムは、ふたつ。

両方ともの魔『アルティメット・ヴィヴィッドライト』に関わるものだ。

「『アルティメット・ヴィヴィッドライト』の、勇者世界での正しい書き方は『Ultimate Vivid-light』だよね」

「このカタログでは、その頭文字が使われていたわけですね……」

「そうだな。『強い』『防ぐ』──そして『アルティメット・ヴィヴィッドライト』の頭文字──『U』と『V』。このふたつアイテムには、そのすべてが含まれてる」

俺たちは、同じページに掲載されたアイテムを、じっと見つめていた。

そこには、こんなことが書かれていたのだった。

────────────

に負けない素へ!

當社の商品は、ついに太を克服(こくふく)しました!

強いはブロックしましょう。

危険なUVをカットできる、魅(みわく)のアイテムをご紹介します。

の力を、甘く見てはいけません。

が當たるたびに、のダメージは蓄積(ちくせき)していくものです。

しかし、ご安心ください。

おそるべきUVに対するがここにあります!

この新製品で、白い・健康なを維持しましょう!

UVカットパラソルは、危険なUVを90パーセント、カットしてくれます。

UVカットローションは、低刺激なので小さなお子様にも安心です。

なのにUVカット率はパラソルと同じ! 真夏のようなの中でも、外遊びをお楽しみいただけます。

パラソルは外側が白、側が黒の2タイプ。

白はを反し、黒はを吸収する質があります。

強いの中でも自由に活できる解放を、お楽しみください!

────────────

「メイベル」

「はい、トールさま」

の魔力の源(こんげん)って、太だったよね?」

自分の聲が震えているのがわかった。

『太に負けない素』──それは鎧(よろい)もローブも無しで、の魔力を防ぐという意味に等しい。

勇者の世界の人間は、(はだか)での魔を防げるとでもいうのだろうか……?

「トールさまのおっしゃる通りです。太こそが……の魔力の源だと言われています」

メイベルの聲も震えていた。

気持ちはわかる。

勇者の『の力』に敗北した魔王領の人だからこそ、この商品の威力(いりょく)もわかるんだろう。

「この世界ができて、はじめて太が世界を照らしたときに、晝と夜ができました。そのときに、太は大いなるの魔力を、この世界に與えたのです」

「そして、今も魔力の源(みなもと)として輝き続けている……」

「魔王領のの魔力が弱いのも、日照時間がないからです」

「そのの魔力の源(みなもと)に、勇者の世界の人たちはすでに勝利してるってことか」

だから異世界から來た勇者は、の技を使いこなしていたんだろう。

おそらく勇者の世界では、の魔がポンポン飛びっているに違いない。

それを素け止めて──平然と立っている。それが異世界の人間なのか……。

おそるべき……というか、よくそんな連中を召喚(しょうかん)したよな、太古の人たちって。怖い知らずにもほどがあるだろ……。

「そして、このカタログにあるのが、の魔力を防ぐローションとパラソルか」

カタログには、2つの商品が掲載されている。

ひとつはは傘の形をした『UVカットパラソル』。

もうひとつはに塗るタイプの『UVカットローション』だ。

パラソルはかざすだけで、の魔力を防いでくれるらしい。

ローションはに塗って使うようだ。

そうすることで、小さな子どもであっても、の魔が飛びう中で遊べるようになる──と、書いてある。

「メイベル……この『UV(ユーブイ)』だけど」

「はい。トールさまの予想通りだと思います」

「やっぱりメイベルも『UV』が、勇者が使う最強の『アルティメット・ヴィヴィッドライト』のことだと思う?」

「あの魔の頭文字以外に考えられません」

「『アルティメット・ヴィヴィッドライト』。つまり『Ultimate Vivid-light』の頭文字で『UV』か」

「究極の鮮烈なる《アルティメット・ヴィヴィッドライト》。あの魔こそが『危険なUV』に違いありません」

メイベルは、はっきりと言い切った。

そして、俺も同意見だ。

勇者は、自分たちの技を文字として書き殘していった。

その報は、今の時代にも語り継がれている。

さらに、彼らは通稱(つうしょう)や略稱(りゃくしょう)を好んで使っていた。

『ガーキャン割り込み無詠唱』『魔力溜めキャンUV』なんてのがそれだ。

もちろん、俺やメイベルが言ってることは、すべてが推測だ。

『通販カタログ』にある『UV』が『アルティメット・ヴィヴィッドライト』のことだという証拠はない。

魔王の結界を破った究極魔が、パラソルやローションで防げるとは思えないからだ。だけど──

「作ってみる価値はあるよね」

「はい。トールさま」

「とりあえず素材を用意して、必要な屬を考えて……って、今日は無理か……」

もう、夜の遅い時間だ。

今から將軍やアグニスに『素材をください』なんて言えないよな。

「……時間をかけた方がいいものが作れるか」

とりあえず、自分に言い聞かせるみたいに、言ってみた。

「明日にしよう。お疲れさま、メイベル」

「はい。お疲れさまでした。トールさま」

メイベルはティーセットとトレーを持って立ち上がった。

「それでは、著替えをお持ちしますね」

「ありがと。メイベル」

「それと……今日は汗をかかれましたので、お休みになる前にを拭かれた方がいいと思います。準備いたしましょうか?」

「……確かに」

今日は々と移したせいで、汗をかいてる。

晩ご飯も熱いものだったから、そのときも。

人の家に來てるんだから、だしなみは整えておいた方がいいな。

「お願いしてもいいかな。メイベル」

「はい。お願いされました(・・・・・・・・)」

そうして、メイベルは部屋を出て行った。

しばらくして、お湯のった桶(おけ)と布を持って戻って來る。

を拭いてくれると言ったけど、殘念ながら、それは斷った。

『UVカットパラソル』と『UVカットローション』のどっちを先に作るか、集中して考えたかったからだ。

強さでいえば『UVカットローション』の方が上だ。

パラソルを持つと片手がふさがってしまう。

ローションはに塗るから、への防をしながら、剣と盾を持つことができる。

汎用はローションの方が上だ。

そんなことを考えながら、背中を拭こうとしたら──気づいた。

「背中だと手が屆かない場所がある……ローションの塗り殘しがあったら、そこにダメージを喰らう……のか?」

ローションだと、使う前に誰かの手を借りる必要がある。

塗り殘した部分に魔を喰らったら、間違いなくダメージを喰らう。

こうして手をばしてみると……うん、やっぱり、肩甲骨(けんこうこつ)の上あたりは手が屆きにくい。パーティで活する場合にはいいけれど、単獨(ソロ)でく場合は、ローションの塗り殘しが起こりやすいんだ。

こうして布を當ててみると、屆かない場所って結構あるな。

となるとパラソルの方が安定が高い。つまり──

「トールさま。お湯を回収にまいりました」

「メイベル。ちょうどよかった。って」

「失禮いたします。トールさま」

ドアを開けて、メイベルがって來る。

さすがメイベル、いいタイミングだ。

「今気づいたんだけど、やっぱり最初に作るべきは『UVカットローション』より『UVカットパラソル』の方だと思うんだ。ローションを塗れば両手が空くというメリットがあるけど。塗り殘しの危険があるからね」

「……は、はい」

「だから、明日になったら將軍とアグニスにお願いして、パラソルのための素材を準備してもらおうと思う。メイベルも協力してくれるかな」

「もちろんです。それはいいのですが……」

「……? どしたのメイベル」

「お湯をお持ちしてからずいぶんと経つのですが、トールさまは……ど、どうしてまだ上半でいらっしゃるのですか……?」

メイベルは真っ赤になって目を伏せてる。

……しまった。

を拭いてる途中で考えに沈んでしまって、手が止まってた。

しかも、お湯も冷めちゃってる。

「トールさま」

「……ごめん」

「いえ、お気になさらないでください。新しいお湯をもらってきますね」

「ごめんね。お願いするよ」

「はい。お任せください」

メイベルは真剣な表でうなずいた。

「それと、トールさまの背中は私が拭きますから」

「え?」

「私は陛下から、トールさまの健康管理をするように言われております。そのために、陛下から、専用のアイテムを授かっておりますので」

「専用のアイテム?」

「み……『水の魔織布(ましょくふ)』で作った、濡れても平気な服です。必要なときに著るようにと、陛下から仰せつかっております……」

手回しがいいな。ルキエ。

『水の魔織布』は、きやすさ重視の服だ。

水に濡れても大丈夫だから、水泳用に使えるんじゃないかって思ったんだけど。

なるほど、ルキエとメイベルは、こういう使い方も考えていたのか……。

「陛下からのお達しです。トールさまの健康管理のために、ここまでは許しをいただいたのです」

メイベルはそう言って、俺に向かってお辭儀をした。

「トールさまに風邪を引かせるわけにはまいりません。せめて汗を拭くくらいはさせてください。お願いします」

そうしてメイベルは──メイド服の襟元(えりもと)をゆるめて、下に著てる『水の魔織布』の服を見せた。

準備は完璧だった。

「そ、それに先ほど、私は申し上げました。『お休みになる前にを拭かれた方がいいと思います。準備いたしましょうか?』と。トールさまは『お願いする』とおっしゃいました」

「う、うん」

「だ、だから私は……こうして『水の魔織布』の服を著て來たのです……」

耳の先っぽまで真っ赤にして、メイベルは言った。

「私がトールさまの健康管理をすることを……お許しいただけますか」

降參だった。

結局、俺はメイベルに (もちろん上半だけ)を拭いてもらい──

今度からちゃんと、には気をつけることを約束して、眠って──

翌日、將軍とアグニスに『UVカットパラソル』のことと、製作に必要な素材について、話をしたのだった。

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