《剣聖の馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】》外伝 第二十四話 り上がりとわずかな軋み
フィーンのことを人だって周囲に宣言して、瞬く間に一年が流れた。
関係は孤児院時代からずっと変わっていない。
ずっと一緒の部屋で寢起きして、そばにいてくれて、相棒として冒険者稼業を日々こなしてくれている。
ソフィーから男の関係の話を何度もされているけど、あたしにはいまいちよく分からない話だったし、フィーンも何も言ってこないからそのままうやむやになっていた。
そんなあいまいな人関係のまま、あたしたちは貴族から依頼される高難度の魔討伐依頼を次々に功させ、王都の冒険者ギルド歴代最年の一七歳での金等級昇格を決めていた。
「ついに金等級まで來たね。白金等級まではまだまだ遠いけど、あたしたちならなれないわけじゃないよ」
「あ、うん。そうだね。アルフィーネの剣があれば、きっとなれるさ。僕はもっと練習しないと。ちょっと外で剣振ってくるよ」
「あ、うん。じゃあ、先に寢とくね」
「うん、そうして。おやすみ、アルフィーネ」
フィーンはそれだけ言うと、ニコライが最初に打ってくれた剣を取り、部屋を一人で出ていった。
何日もかかる討伐依頼を終えて、久しぶりに王都の定宿に帰ってきたけれど、フィーンの表は冴えないままだった。
昨日のこと気にしてるのかな……。
でも、あの攻撃はいつものフィーンなら、余裕で避けられたはずだもん。
なんで真面目にやらないのかって、言いたくなっちゃうよ。
最近、また一段とあたしとフィーンの剣の腕の差がつき始めている。
今までは、何とかあたしのきについてこようとしていたフィーンだったけど、腕の差が開くにつれて練習にがらなくなってきていた。
そのことをあたしが指摘すると、フィーンが俯いて黙ってしまうため、しだけ関係がギクシャクする。
でも、フィーンは剣士としてハートフォード王國屈指の素質を持っているから、あたしとしては練習を妥協してしくない。
実際、あたしの全力の剣をけられるのは、今のところフィーンしか存在していない。
高名な剣士や騎士と言われる人たちでも、あたしの剣を止めることはできず、地面に膝を突いている。
だから、フィーンはけして弱くない。
もっと、もっと強くなれるはずなんだけど……。
頑張ってよ、フィーン。
月明かりに照らされた中庭で、剣を振り始めたフィーンの姿を窓から眺めると、あたしは深いため息を吐いた。
翌日、依頼を達したため、報酬をもらいに王都のギルドに顔を出すと、ギルドマスターの執務室に呼び出された。
「剣士アルフィーネ、剣士フィーン。二名を王都の冒険者ギルドの金等級冒険者に任ずる」
いかめしい顔をしたギルドマスターが、立ち上がると手にしていた金に輝く徽章を見せた。
金等級からは別格の扱いをされるって話だったけど、銀等級までは窓口擔當者がくれた徽章を、ギルドマスターが直接渡してくれるとはね。
銀等級から貴族や商人からの直接指名依頼をけられるけど、金等級以上でしかけられないが多く存在し、多くの依頼が高額なものになっているってフィーンが言ってた。
金等級となったため、これからはさらにお金を稼げるようになるはず。
その分、依頼の難度はあがるだろうけど、あたしとフィーンならどんな高難度の依頼でも達することは可能なはずだ。
「この徽章はなくさないように。紛失した場合はすぐに冒険者ギルドに申し出るようにしてくれ。あと、他の冒険者ギルドを訪れる際も、必ず見える場所に付けておくように。承知したら、この紙へ署名を」
徽章を付けてくれたギルドマスターが、テーブルの上にある書類をこちらへ差し出した。
フィーンがすぐに差し出された書類の中を確認していく。
こちらを向いたフィーンが問題ないとの頷きを返してくれた。
「承知しました。署名をさせてもらいます」
「僕も問題ありません」
署名するとギルドマスターが、あたしとフィーンの服の襟に金等級の徽章を付けてくれる。
「これで金等級冒険者として正式に依頼をけられる。君たちみたいな若い冒険者がこの徽章を付けること自、かなり異例なことだ。が、しかし、積み上げた実績は先輩冒険者たちに勝るとも劣らないものであるので、臆することなくこれからも依頼を達していってくれたまえ」
トントン拍子にランクを駆け上がったことで、あたしとフィーンに対する年長冒険者たちからの風當たりは強い。
フィーンは持ち前の人當たりの良さがあって、そこら辺は上手く躱しているようだけど、あたしはそういった人付き合いが苦手なので、ちょこちょこトラブルになる。
別にあたしから喧嘩を売ってるわけじゃないけど、向こうが勝手に突っかかってくるため、剣を抜いて斬りつけてきたら、必ず反撃して行不能にするようにしている。
私闘は認められないが、命を守る自衛の行は認められているため、ギルドマスターも苦い顔はするもの、あたしが罰せられたことは未だかつて一度もない。
「特に剣士アルフィーネ、君は言や行で冒険者間のいざこざが多い。金等級になったからには、慎みを持ち、後に続く冒険者たちの模範となれるようになってくれ。頼むぞ」
「……あたしは――」
反論のため、口を開こうとしたら、フィーンがあたしの服の袖を引いた。
「大丈夫だと思います。本人も金等級冒険者として自覚を持った行をすると言っていましたので」
「そうか、剣士フィーンがそういうなら、これ以上言うことはない」
ギルドマスターは、フィーンの言葉に納得したようで、いかめしい表を緩めた。
なんか、トラブルがあたしのせいみたいにされて納得いかない……。
突っかかってくる方が悪いんだし、あたしはを守ってるだけなんだけど。
ギルドマスターへの反論を、フィーンに封じられ、あたしは顔をしかめた。
「そんな顔をするな。剣士アルフィーネ。私としても最大限に擁護をしてるのだぞ。君らは王都の冒険者ギルドの次世代を擔う人材だと思っているからな。さて、任命式はこれくらいにして、金等級に昇格した君らにさっそくけてしい依頼があるのだ。限られた冒険者しかけられない依頼は山のように溜まっているのでな」
ギルドマスターは、そんなあたしの顔を見て、苦笑いをすると、執務室のソファを勧めてきた。
「條件次第。あと雑魚狩りや、稼げないのはいらない。やるのは、金等級でしかできない依頼だけ」
「アルフィーネ、もうし言葉遣いを」
「無理」
「どうやら、剣士アルフィーネの機嫌を損ねたようだな。だが、依頼書を見れば多は機嫌を直してくれるはずだと思う」
フィーンとともにソファに腰を下ろしたあたしは、とんでもない依頼を振られないよう釘を刺しておいた。
「條件面は剣士フィーンと話し合うので問題ないはずだ。抜群の魔討伐実績を積み上げてきた君らには、狩ってしい魔がたくさんいる。強力な魔は実力者しか狩れないからな」
機の上の書類を手に持ち、反対のソファに腰を下ろしたギルドマスターが、応接用に置かれたテーブルの上に依頼書を広げた。
達時の報酬が、一桁違うものばかり……って、信じられない。
金等級以上の冒険者が別格って、こういう意味だったのか。
一つの依頼でこれだけ稼げるなら、裝備だけじゃなくて、住むところも頑張れば王都で買えるかも。
それに院長先生たちへの仕送りも増やせるし。
「値段相応に大変そうな依頼が多いですね」
フィーンも驚いてるみたいだけど、しっかりと容まで読んで味してるみたい。
任せておけば、そう変な依頼も取らないだろうし、あたしの嫌いな依頼は弾いてくれるはずだしね。
鉄等級の時から、依頼の選定はずっとフィーンに任せているため、あたしはやるかやらないかを言えばいいだけだった。
「どれか、やってくれるかね? これらの依頼は全てラドクリフ家からの急ぎの依頼なのだよ。希者を募っているが、魔が強力すぎて皆斷ってくるのだよ」
「たしかに、僕たちが戦ったことのない魔の討伐依頼ばかりですね。報のないもあるし、かなり強いとされる個と言われるものもいる。それに死骸を持ち帰るとか、捕獲してくると割り増しって特殊な依頼ですね」
「ああ、特殊な依頼だ。けれど、ラドクリフ家の嫡男ジャイル様の家臣から持ち込まれた依頼なので、王都の冒険者ギルドとしてもなるべく遂行しておきたい案件なのだよ」
死骸を持ち帰ったり、魔を捕獲なんて依頼の仕方、珍しいわね。
剝製にしたりとか、飼ったりしたりするつもりなのかしら?
大貴族のおぼっちゃんの考えることは、いまいちよく分からないわ。
依頼書とにらめっこしていたフィーンの手にある一枚の紙に視線が向かう。
魔竜ゲイブリグスの討伐か! あの『災禍』って呼ばれてる魔竜を退治する依頼があるなんてね。
王都の近郊にある高山に住み著いていた竜種が、長年蓄積した魔素で魔化した魔竜ゲイブリグスは、王都の民から恐れられている。
大襲來終息後、魔竜化したゲイブリグスにより、近隣の農村で家畜を襲うだけではなく、人や街も襲い、毎年多くの人が被害に遭っている存在だった。
何度か王國軍も討伐隊を編したらしいけど、全て返り討ちにあい、ゲイブリグスが山から下りてくると、城門を閉ざし、家の中に籠って立ち去るのを待つだけになっている。
王都に來たばかりの時に、飛來したゲイブリグスを見たが、漆黒の鱗や羽をはばたかせ王都の上空をわが顔で飛び回り、人やを見つけては自らの餌として山に連れ去るのを目撃した。
「魔竜ゲイブリグスか……」
「ダメ、そんなのを相手にしたら、僕たちの命がないから。これは絶対にけないよ」
フィーンがあたしの思考を読んで、先に釘を刺してきた。
最強の生と言われる竜種、しかも魔化して狂暴化した魔竜と戦ってみたいという気持ちが強い。
自分の剣技が最強と言われる生にどこまで通用するかも試してみかった。
「いつか」
「ダメ、いつかもけない」
アタシに逆らわないフィーンが、珍しく斷固とした口調で言い切った。
むぅ、今のあたしたちなら、魔竜でも戦えると思うんだけどなぁ。
とりあえず、他の依頼でお金貯めて、ニコライに竜の鱗を切れる剣を打ってもらうのが先決か。
武が整えばフィーンだって許してくれるよね。
斷られたことにし腹が立ったが、フィーンを説得する材料を見つけたので、今は我慢することにした。
「とりあえず、この二つ依頼で討伐対象となっている魔を、他の方が討伐した際の報告書とか閲覧できますか?」
「ああ、閲覧許可を出そう」
「では、そちらを閲覧し、対処できそうなら注させてもらいます」
「相変わらず剣士フィーンは、下調べに余念がないな」
「下手打って死ぬのは僕らなので……。できることは、最大限しておくだけのことです」
「抜群の討伐実績を出せてるのは、剣士アルフィーネの剣の腕だと言うやつが多いが、私は剣士フィーンの慎重な報集めのおかげだとおもっているぞ。だから、君らを一緒に金等級にあげたのだ」
「ありがとうございます。そう言って頂けて栄ですよ」
ギルドマスターもフィーンに対する、他の冒険者からの風當たりを気にしてるみたい。
フィーンの実力を知らず、あたしのおかげで実力もないのに、金等級まで昇ったとか言うやつも多いし。
たしかにあたしの方が腕は上だけど、フィーンの実力はけしてそこらの金等級冒険者に劣るものじゃない。
あたしの引きこすトラブルの大元は、ほとんどの場合、フィーンへの中傷に抗議した時だった。
「よし、じゃあ、すぐに報告書を閲覧させてもらい、注するかお返事しますので、今しばらくお待ちください」
「では、これを下の事務室に持って行きたまえ、すぐに職員が出してくれるだろう。注可能ならそのまま職員と打ち合わせにってくれ」
「ありがとうございます。アルフィーネ、行こう」
フィーンがギルドマスターから紙片をけ取ると、あたしの手を引き、ギルドマスターの執務室から階下の事務室に移した。
その後、依頼を注することになったが、討伐依頼はフィーンの事前の下調べのおかげで捕獲に大功し、追加の報酬をもらえ、大きな金額が手にることになった。
以降、ラドクリフ家からもたらされる奇妙な魔の捕獲依頼を中心に、依頼を注し、金等級でもドンドンと実績を積み上げることになっていく。
本日も更新読んでいただきありがとうございます。
剣の実力差から生じた僅かな二人の間の軋みが、んな部分でバランスを崩し始めていくところでしたが、アルフィーネがフィーンを獨占しようと、剣だけに縛り付けてなければ、二人はまた違う関係を築き、違うお話が生まれてたかもしれません。
あとラドクリフ家の出してた奇妙な依頼の正は、魔素抗を探すための世界のあらゆる生を集めて実験してたヴィーゴたちが出してた依頼です。
そして、アルフィーネが剣聖として認められることとなる魔竜ゲイブリグス討伐も、その中に含められておりました。
外伝も魔竜ゲイブリグス戦へいたる道へっていきます。ジャイルとの関わり、剣聖への推薦、前試合、貴族りしてからの生活等々、本編開始前の前日譚が埋まっていきます。
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8 99最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。
最強の魔王ソフィが支配するアレルバレルの地、彼はこの地で數千年に渡り統治を続けてきたが、 圧政だと言い張る勇者マリスたちが立ち上がり、魔王城に攻め込んでくる。 殘すは魔王ソフィのみとなり、勇者たちは勝利を確信するが、魔王ソフィに全く歯が立たず 片手で勇者たちはやられてしまう。 しかし、そんな中勇者パーティの一人、賢者リルトマーカが取り出した味方全員の魔力を吸い取り 一度だけ奇跡を起こすと言われる【根源の玉】を使われて、魔王ソフィは異世界へ飛ばされてしまう。 最強の魔王は新たな世界に降り立ち、冒険者ギルドに所屬する。 そして、最強の魔王はこの新たな世界でかつて諦めた願いを再び抱き始める。 その願いとは、ソフィ自身に敗北を與えられる程の強さを持つ至高の存在と出會い、 そして全力で戦い可能であればその至高の相手に自らを破り去って欲しいという願いである。 人間を愛する優しき魔王は、その強さ故に孤獨を感じる。 彼の願望である至高の存在に、果たして巡り合うことが出來るのだろうか。 ノベルバ様にて、掲載させて頂いた日。(2022.1.11) 下記のサイト様でも同時掲載させていただいております。 小説家になろう→ https://ncode.syosetu.com/n4450fx/ カクヨム→ https://kakuyomu.jp/works/1177354054896551796 アルファポリス→ https://www.alphapolis.co.jp/novel/60773526/537366203 ノベルアッププラス→ https://novelup.plus/story/998963655
8 160じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。
「お前は勇者に相応しくない」 勇者として異世界に召喚された俺は、即行で処刑されることになった。 理由は、俺が「死霊術師/ネクロマンサー」だから…… 冗談じゃない!この能力を使って、誰にも負けない第三勢力を作ってやる!! ==================== 主人公『桜下』は十四歳。突如として異世界に召喚されてしまった、ごく普通の少年だ。いや、”だった”。 彼が目を覚ました時、そこには見知らぬ國、見知らぬ人、見知らぬ大地が広がっていた。 人々は、彼をこう呼んだ。”勇者様”と。 狀況を受け入れられない彼をよそに、人々はにわかに騒ぎ始める。 「こやつは、ネクロマンサーだ!」 次の瞬間、彼の肩書は”勇者”から”罪人”へと書き換わった。 牢獄にぶち込まれ、死を待つだけの存在となった桜下。 何もかもが彼を蚊帳の外に放置したまま、刻一刻と死が迫る。絶望する桜下。 そんな彼に、聲が掛けられる。「このまま死を待つおつもりか?」……だが牢獄には、彼以外は誰もいないはずだった。 そこに立っていたのは、一體の骸骨。かつて桜下と同じように死を遂げた、過去の勇者の成れの果てだった。 「そなたが望むのならば、手を貸そう」 桜下は悩んだ末に、骨だけとなった手を取った。 そして桜下は、決意する。復讐?否。報復?否、否。 勇者として戦いに身を投じる気も、魔王に寢返って人類を殺戮して回る気も、彼には無かった。 若干十四歳の少年には、復讐の蜜の味も、血を見て興奮する性癖も分からないのだ。 故に彼が望むのは、ただ一つ。 「俺はこの世界で、自由に生きてやる!」 ==================== そして彼は出會うことになる。 呪いの森をさ迷い続ける、ゾンビの少女に。 自らの葬儀で涙を流す、幽霊のシスターに。 主なき城を守り続ける、首なし騎士に。 そして彼は知ることになる。 この世界の文化と人々の暮らし、獨自の生態系と環境を。 この世界において、『勇者』がどのような役割を持つのかを。 『勇者』とは何か?そして、『魔王』とはどんな存在なのか?……その、答えを。 これは、十四歳の少年が、誰にも負けない第三勢力を作るまでの物語。 ==================== ※毎週月~土曜日の、0時更新です。 ※時々挿絵がつきます(筆者ツイッターで見ていただく形になります)。 ※アンデッドが登場する都合、死亡などの殘酷な描寫を含みます。ご了承ください。
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